玉子焼き専用の調理器具の中で、最後の一巻を終えた厚焼き玉子が完成した。綺麗な形に整ったそれをお皿に移し、湯気が消えて熱が冷めるまで他のおかずを弁当箱に詰めていく。
アスバラガスの肉巻き、冷食の唐揚げは御愛嬌として彩りのためのプロッコリーを詰めて、最後に切り分けた玉子焼きを入れて蓋を閉める。
慌ただしく朝食を済ませた夫と息子たちが弁当箱を片手に玄関に走り、出勤、通学のために出ていく。戦争のような朝がひと区切りをつくと、手早く自身も朝食と後片付けを済ませ、身なりを整えて少し離れた所にあるバス停までの道のりを早足で向かった。
このところあの男性が現れないので、真由美はホッとしていた。いや、本音を言えば少しだけ残念な気持ちもある。けれど朝から悶々とさせられるのも考えものだから、これでいいのだと思い直す自分がいる。
あの日から真由美は鏡の前に立ち、自分の姿を意識して見るようになってしまっていた。子供を2人も産んだにしては体型は崩れてはおらず、だからといってグラマーな体付きでもない。立派な中年女性となったこの自分の、どこに痴漢をしたくなる要素があるのか分からなかった。
某人気刑事ドラマに出演する女性刑事役の女優に似ていると、以前に言われたことがある。自分では分からないが、スーツに身を包む彼女は細身の身体のプロポーションの良さが際立ち、落ち着いた古風な美人といった印象がある。そんな彼女に似ているのなら悪い気はしないが、胸だって大きいわけでもないし、何より中年の主婦なのだ。
そしてあと数年のうちに、閉経を迎える日が来るのだろう。なのにこんな中年女をまだ痴漢をしたくなる対象に見られることを、喜ぶべきことなのかどうなのか複雑な気持ちだった。
季節は移ろい秋の気配を感じられるようになっていた。通勤はバスで30分、電車でさらに10分という道のりの毎日。人の群れにまじり改札を抜けて到着した電車に乗り込む。それはなんら疑問を感じる必要もない、いつもと変わらない帰宅への時間だった。
腰のあたりに異変を感じたと思ったら、何者かの手が下半身の前へと這い回ってきた。電車で痴漢なんて学生時代のとき以来のことだったから、はじめは若い女性と間違われているのだと当然思ったのだ。だから真由美はあえて首を後ろに捻って相手の顔を見てやり、怯ませてやろうと思ったのだ。女も年齢を重ねれば、面の皮も熱くなるのだから。
ところが相手を怯ませるどころか怯むことになったのは、真由美のほうだった。その相手はバスの中で連日のように夢心地にされ、あの逞しい分身を挿入してきた男性だったのだ。
何故、どうして……。
やっと忘れかけていたというのに、蘇る劣情が強気だった気持ちを一気に動揺へと変えさせていった。
拒絶を示さなければ、そんな真由美の気持ちの炎も男の手が太腿の付け根へと這い進む感触に、抗うための手の意思を奪っていく。
スカートの前に並ぶ前ボタンの一つを外されて、侵入してきた彼の手がショーツの上から覆い被さる。三本の指の一つが敏感な箇所をまるで愛でるように、優しく優しく触れてくる。
それだけで抵抗をする意思を削がれ、人目に触れる顔は平静を装うただの女の顔を作るのだ。
そっと下着の生地を撫でる指先が秘唇を割るように沈められ、布団をめくるように包皮を擦る。雪の下で春を待ちわびるふきのとうのように、包皮の下の蕾が力を得たようにその身を大きく変化を見せはじめていく。
駅前のアスファルトの上で人間に踏み潰されないよう、逃げ惑う小さな虫の存在には誰も気づかないように、帰宅ラッシュでひしめき合う人の群れが集う電車内。人の目が届かない会社帰りの一人の女の下半身が巧みに蹂躙されていることなど、誰が気付くというのか……。
男の手がそこから離れ、指先がショーツの上側を浮かせて真由美の肌を撫でながら侵入する。緩い癖のある密林を潜り抜け、密を溜めた秘唇を割って指が天然のローションを絡め蕾に塗りたくる。
真由美の太腿が男の手首を締め上げ、わずかに顎が上に向く。彼はまるでゼリーを撫でるかのように繊細に蕾を撫で回し、真由美を生かさず殺さず生殺しの夢心地の世界へと導いていく。
その場に立っているだけでも辛くなった真由美は、後ろに立つ彼へと体重を任せて目を閉じる。
彼も脱力した真由美の身体を受け止め、熟女の女の部分を指で食していく。
熟女の経験値を物語るように指の腹の感触からは、恐らく1センチを超えるであろうクリトリスが破裂せんばかりに膨張を遂げていた。悩ましげに腰を揺らし、力の加減を誤れば崩れ落ちてしまいそうなほど感じている。
電車が減速をはじめると真由美が我を取り戻したように変化を見せ、最寄り駅であることを知った。短い夢の時間は場所をバスの中に移すことになるだろう。彼女と出会ったのはあのバスの中だったのだから。
夢から覚めたように駅構内を抜けて、バス停へと歩く。真由美は現実に戻ると急に恥ずかしくなり、自己嫌悪と戦う羽目になった。それでも彼は付いてきているだろうかと後ろを振り返ることもなく、バス停に並ぶ。
ほどなく到着したバスに乗り込むと、自分の背後に彼の存在を確かに感じとった。朝よりも夕方のこの時間は駅前の渋滞が激しく、乗車時間も長くなる。自分を嫌悪しながらも否応なく期待してしまう自分がいる。いけないことと分かっているのに……。
きたっ、と思った。
腰に触れてきた彼の指がスカートの前後をずらし、居並ぶボタンで閉める前側が後ろ側になっていた。そのボタンの一部を外す彼の指先の感触が擽ったくて、身体がぞくぞくする。それ以上に誰かの目に捉えられはしないかと、胃が締めつけられる緊張感が身体を固くさせる。
ごそごそとしていた彼がやっと落ち着いたのか、股の間に温もりのある何かを差し込んできた。
それは真由美の股を下から持ち上げんとするかのようにショーツの底に張り付き、正体は明白だった。
太腿の内側の肌から彼の血流を示す脈動が、如実に伝わってくる。自分の分泌液で濡れたクロッチ部分を僅かに前後にと揺らして擦り付けてくる。
右隣りに女性、左隣りにはサラリーマン男性が並ぶ中、真由美の背中に汗の雫が伝い落ちていく。
胃液が上がりそうな緊張感が真由美の身体を固くさせ、社会人としての倫理観が皮肉にも背徳感を引き寄せる。
いけないことほど魅力的なことが肌をひりひりとさせ、緊張感で喉がからからにさせる。もうこんな状態は耐えられない、彼にだけ分かるように拒絶を示そう……そう思ったときだった。
ショーツを脇にずらされたかと思うと、あの逞しい分身が入口にあてがわれたのだ。拒絶の意思を見せる暇もなくめり込んでくる苦痛。固く目を閉じて声を殺すしかなく、真由美は奥歯を噛み締めた。
吊り革を握り締めながら俯き、中を押し広げながら入ってくるペニスが子宮の入口まで到達した。
そのまま動かないでいてくれるのが有り難く、ゆっくりと息を吐き出す。
少し進んでは停車を繰り返すバスの揺れが両足を踏ん張らせ、膣の中のペニスを必要以上に意識させる。誰かが咳き込む音にドキリとさせられ、隣のサラリーマンが吊り革を掴む手を変えるだけでビクッとする。
車窓に反射する自分の顔は表情が強張り、彼の顔は無表情に見える。他の乗客は誰もが疲労を顔に浮かべ、誰も真由美たちに関心を寄せる者はいないように見えた。
不意に子宮へと弱い圧力が加わると、断続的な動きへとなっていく。快感を感じさせるものではないが、背徳感を感じさせるには十分だった。
恥ずかしさが体温を上昇させ、恐怖心が背徳感に抑制されて消えていく。彼の腰が僅か数センチの前後運動をするだけでとてつもない羞恥心を生みだし、人知れず繋がる性器の感触が扇情的にさせる。
乗客が見せる一挙手一投足が真由美を敏感に反応させ、分泌液で泡立つ結合部さえ意識させる。
じわりじわりと下から這い上がる快感が、いつしか車窓に反射する自分の表情を妖しく映し出していることに、真由美は気付いていた。
自分があんな表情をしているなんて……。
客観的に見る自分の顔があまりにいやらしくて、思わず真由美は目を背けてしまった。
それにしてもこれ、堪らないわ……。
高いレベルに達しない快感の中を漂う感覚に酔うこの状態は、まるでセックスの序盤であるかのような高揚感を感じさせる。もっと突かれたい、思い切り突いて欲しい……叶わないことと知りながらそんな欲求が次から次へと湧き上がってくる。
ときどき不意をついてドキリとさせられるようなピストンを数回打ち込まれ、思わず手で口を覆わなけれならない快感が押し寄せる。
思いのほか誰も気にする者がいないと分かると、彼は大胆に腰の振り幅を少しだけ大きくしてきた。そうはいっても2〜3センチの振り幅を親指の先から付け根までくらいの、せいぜいが5センチくらいのものかもしれない。
それでも微妙な動きに慣れた身体には効果的に伝わり、真由美の腰も動かしたくなるほどだった。
バスの揺れとは違う髪の毛の不自然な揺れが目立たないように、真由美は片耳に髪の毛を書き上げて誤魔化してみる。
この感じ、凄くいい………。
真由美の身体の揺れが最小限になるよう彼のに手で腰を支えられ、膣の奥を優しくノックされる甘さに酔いしれる。腰を掴まれる彼の手が汗ばんでいるいることに気づき、彼もまた快感に酔っているのだと知って嬉しくなる。
あたしの中はどうお?…そんなに気持ちいい……?
心の中でそう呟く真由美もまた彼と同じく快感に耐えなければならないレベルに達し、自然と顎が上がってしまう。
これ以上は駄目……ねぇ、我慢できなくなる……
20分以上も中に留まり続けるペニスに慣れてしまった身体は、快感を享受する許容量に確実に迫りくる何かに身体が準備をはじめる。
真由美のお尻と密着する彼の下半身がお尻の肉を押し潰し、根元まで埋没させることを繰り返す。
絶え間なく子宮頚部を刺激され続けた真由美は無意識に背中を反らせ、自然とお尻を彼に押し付ける形になっていく。
真由美は収縮する膣壁で彼のペニスを抱き込み、彼は硬度を保ちながら真由美を攻め続けていく。
経産婦特有の滑らかさを見せていた膣が驚異的に狭まり、彼のDNAを搾り取ろうとする。
眉尻を下げた真由美が顎を上げ、吊り革ん掴む手とは反対の手で胸元のブラウスを握り締める。
駄目……駄目………いっ………くっ………
一際膣の入口を締めた真由美は開けた口を閉じて俯き、2度、3度と短く身体を震わせていた。
彼もまた耐え切れずにこめかみから汗の雫を流しながら、真由美の子宮へと精液を放出するしかなかった。
2人は真由美が下車する停留所まで繋がり続け、彼は萎えぬまま留まり続けていた。この車内空間に精液の臭いが漂い出ることを防ぐためである。
許してくれるだろうか、中に出してしまったことを。同じ停留所で下車した真由美はこちらを振り返りもせず、歩き去っていく。
彼の脳裏には目を閉ながら唇を震わせる、そんな美しき熟女の真由美の顔が焼きついて、いつまでも離れなかった。
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