三回忌の法要を終え葵は一人凪子が眠るお墓へと向った。
もうこれが最後になるかも知れない。
凪子には本当に良くしてもらった。
食事も何度もご馳走になったし、どんな相談にもいつも優しく乗ってくれた。
そして陸のことも、、、凄く大切にしてた。
妹の真白が陸を裏切ったとき、、、いつもは優しい凪子が真白を容赦なく責め立てた。
あなたなんか陸のそばにいる権利が無いと断罪して、、、それ以来姉妹関係が悪くなってしまった。
キレイで優しくて、いつも正しかった凪子は葵の憧れでもあり目標だった。
それなのに、、、
わたしも陸を裏切った。
陸がいなくなって凪子と逢うことはなくなったけど、、、
わたしがしたこと、、、凪子は知っていたんだろうか?
知っていたら、、、わたしのことをどんなふうに思っていたんだろう?
お葬式のとき、わたしは迷わず出席した。
お通夜も告別式も、、、
凪子が大好きだったから、、、
そして、、、ひょっとしたら陸に逢えるかも知れない、、、
でも陸はこなかった。
なぜなのか?
考えるまでもない、、、
わたしと真白に逢いたくなかったから、、、
揃いも揃って陸を裏切ったオンナの揃い踏み。
いくら凪子のお葬式だとはいえ、そんな場所に海外
からわざわざ来るはずはない。
真白とはお葬式のとき挨拶を交わしただけで話はしなかった。
お互いに避け合っていた。
そして今日の三回忌、真白の姿は無かった。
逢いたいわけじゃない、、、
でも実の妹なのに、、、
どんな理由が有るにせよ凪子が可哀想だ。
しかし、、、偉そうに、、、わたしがそんなことを言えるの?
自己嫌悪が込み上げる。
みんな帰ってしまったし、お墓にはもう誰もいないはずだ。
ゆっくり凪子と話をしよう、、、
そして、、、これを最後に、、、
凪子のお墓が見えてくる。
そして、、、その前で両手を合わせている男性が、、、
背が凄く高い、、、
その横顔、、、
絶対に泣いたらダメ、、、
後ろから声をかける。
「陸、、、」
男が振り返る。
「日詰、、、」
黒い喪服に引き締まってはいるが逞しい胸板。
手脚がスラリと長くまるでモデルのようだ。
背があの頃よりも高く190ぐらいあるかも、、、
短めの黒髪をバックに流している。
面影の残っている整った顔立ちは男らしさを増し、柔らかな眼差しと笑顔がたまらないぐらいにセクシーだった。
わたし、きっとこの人に抱かれる、、、
そんな予感が走る、、、
何をバカなこと、、、
そんなはずあるわけないじゃない。
わたしなんか相手にするわけが無い。
「久しぶりだな、、、元気だったか?」
「うん、陸も元気そうだね、、、凄くカッコ良くなって、、、ビックリしちゃった、、、」
「そんなことないさ、、、背が高くなった、それだけだ、、、日詰は、、、変わらないな、、、」
「ちょっと、それってバカにしてる、、、まるで成長してないってこと?」
「違うよ、、、日詰はあの頃から凄くキレイで大人びてたから、、、ほら美人は年を取らないって言うだろう?」
そう言って喪服姿の葵を眺めてくる。
喪服に隠しきれない突き上げる胸とお尻に陸の男の視線を感じ取る。
やっぱり、、、わたし、、、この人と絶対にセックスする、、、
でもそれはダメ、、、
「随分口が達者になったのね、、、」
「そうでもない、、、みんなに正直過ぎると言われるよ、、、」
「フフッ、陸らしいね、、、でも陸、来てくれたんだね、、、凪子さん、きっと悦んでるよ、、、」
「どうかな、、、薄情者と怒ってるよ、きっと、、、」
「そんなことない、、、わたしのせいだから、、、わたしに逢いたくなかったんだよね、、、」
陸は葵の瞳を覗き込んだ。
そんな目で見ないで、、、
そんなに見られたら、、、わたし、、、勘違いしちゃうから、、、
「日詰は分かって無いな、、、」
「えっ、、、どういうこと?」
「いや、もういいんだ、、、それよりこれから二人で飲まないか?ワインだけど、、、」
「こんなところで?いや、そんな意味じゃなくて、、、怒られたりしない?」
「大丈夫だろう?それに誰もいないし、、、俺、酒が飲めるようになったら凪姉と飲む約束してたんだ、、、だけど俺の勝手でそれが出来なかった、、、だからどうしても果たしたい、、、」
「分かった、、、でもわたしなんかでいいの?邪魔じゃない?」
「いや、日詰がいた方が凪姉も喜ぶと思う、、、」
「陸がそう言うなら悦んで付き合うよ、、、」
「よし、決まりだな、、、」
ワインを紙コップに注ぐ。
「悪いな、こんなので、、、」
「ううん、、、じゃあ乾杯しようか?」
「うん、、、凪姉に乾杯」
「凪子さんに乾杯」
ぐっと飲み干す。
「これ、メチャクチャ美味しい、、、高いやつでしょう?」
「まあな、、、」
「そういえば凪子さん、ワイン好きだったよね、、、時々飲んでた、、、」
「そうだったな、、、」
陸との初めての夜も、、、
でもそれは誰にも言ってはならない。
凪子が死んだ今、今度は陸がそれを墓場まで持って行く。
つづく
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