***孝一郎と愛美の章①***
孝一郎と愛美は1歳違い。存在はそれとなく知っていたがただの近所の子程度の存在だった。
最初に声をかけたのは愛美の方だった。中間テストの帰り道「あの、孝一郎先輩」後ろから声をかけられた孝一郎は「きみはたしか愛美ちゃん久しぶりだね、制服似合っているよ」と返した。
「前から思っていたんですけど、孝一郎先輩って家はこちらの方なんですか?」「うん、そこの分かれ道で右に上がって行ったところ、きみは?」「私は左に上がって行った先のすぐの家です」
そんな他愛もない会話の中からそれぞれが思い分かったことがある。「もしかしてその家って奥で渡り廊下がつながっているところじゃないんですか?」
二人はこの地に来て10数年、ずっと隣に住んでいながらそれぞれの親の言いつけで近寄ることもなく過ごしていたがずっと知らなかった「隣人」だったのである。この日を境に、学校の帰り道やいい仲居活動のある日などで急に接近した。このうちにお互い衝撃の事実を知る。それが「父親が同じ」であること。おかれた境遇とかが似ていたのでそれとなく聞いたことがきっかけである。異母兄妹だったのである。二人はそれを知ったことは周りの大人たちに悟られないようにこの秘密を共有することにした。そこで話が終わればよかった。
7月の期末テストの前2週間、愛美が学校に来ない日が続いた。
二人が出会ってからも夜は全く別の家。何をやっているかは話さないままだった。孝一郎は心配だったが同じクラスのほかの子に聞くと体調を崩してしまったとのこと。期末考査には来ていたが、話を聞こうとしても避けられるばかり。ただやはり「可愛い妹」のこと。テストが終わった後の日曜日、お互い「友達と少し遠いプールに遊びに行く」と口裏を合わせ遠出をすることにした。
プールはこの町でも最大規模の公園の中にある。二人はプールには入らず梅雨の晴れ間の公園の木陰にあるベンチに腰かけた。
「私のこと心配してくれてありがとね」「ううん、体調は戻ったけど…」。その一言の後涙が彼女のほほを下ってゆくのを孝一郎は見逃さなかった。「何かあったの?」「今から話すこと、孝一郎君だから話すね」と前置きすると、涙がこぼれないようにするためか、ずっと上を向いたまま話し始めた。
・・・あのね、私体が大きくなりだしてからずっとお父さんに体の関係を強要されていたの。もう1年以上になるの。だいたい月に1回くらい。5月になると女の子の日が来なくなったの。おかしいと思ったらお父さんの関係者という病院に連れていかれて、何か吸入器みたいなのあてられて意識がなくなったの。気が付いたらベッドの上だったの。おなかの下の方がもぞもぞとしていたの。そうしたら看護師さんが「手術は無事終わったからね、あと3日ここで大人しくしていてね」と何のことか全く見当のつかないことを言われた。トイレに行ってナースステーションの前を通ると、他の入院患者さんのアラームが鳴って誰もいなくなったの。その時私の名前のファイルがあったんだけど、そのファイルの上に「産婦人科」って書かれていたの。ここは内科の病棟のはずなのにと思っていたけど、ただ私の大事なところはまだ痺れているし。退院の時はお父さんの秘書の人が来たんだけど、その時病院の先生に…「堕胎手術の際に器具が当たった関係で今後子供を産む機能がなくなったかもしれません、そのおつもりで」と言われたの。何のことかわからなくて、家に帰ったらお父さんが来て「子供ができないなりに死んだお前のママの代わりはしてもらうぞ」と言って帰って行った。もう私何が何だかわからなくて…もう私生きていたくない・・・
話を聞き終わると、孝一郎の体は震えていた。要は、父親が娘を「性のはけ口」としていたことと悟った。自分自身も父の同僚政治家の「性のはけ口」にされている。自分の親でもある父親に対して猛烈な怒りの感情が止められなくなった。
「愛美、俺に考えがある。愛美の負った傷を何倍何十倍いや僕の負ってきたことも含めて何万倍にして復讐してやる。」
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