あの日、美子は血相を変えてすぐに帰って行った。
そして翌日から松田は学校に来なくなった。
数日後には転校が告げられた。
両親と共に遠く離れた地方に引っ越したらしいと噂が流れた。
シズクも変わらず学校を休んだままだった。
間違い無く転校と引っ越しの件はシズクのことが絡んでいる、、、ナギサは確信していた。
そしてナギサは再び美子と逢うことになった。
休日の朝からナギサは美子の運転する車の助手席にいた。
待ち合わせ場所に車で現れたことに驚きはしたが、誰にも聞かれずに話をしたいということだなとナギサはすぐに察していた。
「あの日は急に帰ってごめんなさい、、、でもナギサ君のおかげですぐに手をうつことができたわ、、、」
「そう、、、なんですか?」
「あの動画もすぐに始末させたし、、、シズクだけじゃなかったの、、、他の女性のものも、、、あの男はどうしょうもないクズだった、、、大変なことになるところだった、、、」
あいつ、、、そこまで腐ったヤツだったのか、、、
「もう二度とシズクには近寄らないと両親共々、誓わせた、、、そして遠く離れたところへ行ってもらった、、、」
やはりな、、、
父親か、、、それとも美子の実家の力を使ったのか、、、
「シズクも検査させたわ、、、妊娠もしていないし、病気も大丈夫だった、、、」
さすがに母親だ。
娘を懸命に守り、気遣っている。
「全部、ナギサ君が本当のことを教えくれたからよ、、、ありがとう、、、」
「いいえ、、、俺は何も、、、」
そう、、、何もしていない、、、
「それに、、、本当のことを知らないのにやり直して欲しいなんて言ってごめんなさい、、、」
「そんなこと、いいんです、、、もう、、、シズクさんはどうしているんですか?」
「まだまだだけど、少しは落ち着いてきたわ、、、あの男の正体を知って、自分がいかに間違いを犯していたのかハッキリと分かったみたい、、、ナギサ君のことをずっと考えてるのは変わらないけど、食事も少しずつ取るようになったし、そろそろ学校にもと思っているの、、、」
「俺、、、前のようには戻れないけど、シズクさんが元気になれるように寄り添っていこうと思ってます、、、」
「それって、、、本当に?」
「もう好きになることはありません、、、でも放って置くことは出来ません、、、何も出来ないかも知れませんが支えになりたいんです、、、」
つづく
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