もうすぐ40というのにまるでそうは見えない。
大袈裟ではなく20代といっても間違いなく通るはずだ。
その名前のとおり美しく、良家の出身らしく、いつも上品な佇まいを崩さない。
もう、、、この人とも逢えないんだな、、、
そんな思いが頭をよぎる、、、
「ナギサ君、どうしたの?もう帰るの?」
「はい、、、」
迷ったけれど、、、
やっぱりハッキリと伝えるべきだ、、、
「もっとゆっくりして行けばいいのに、、、」
「美子さん、、、実は、、今日でシズクさんと別れることになりました、、、」
「えっ、、、そんな、、まさか、、、どうして?」
「それは、、、俺からは言えません、、、」
「そんなこと言わないで、、、お願い、教えてちょうだい、、、」
「彼女に聞いて下さい、、、」
美子はナギサの決意の固さを感じ取った。
「分かったわ、、、」
「今まで本当にお世話になりました、、、ありがとうございます、、、」
告げたい気持ちがずっとあった。
それは、、、今までどおり胸の奥にしまうしか無い。
「美子さん、さようなら、、、」
美子は応えることが出来なかった。
まっすぐに美子を見つめてくる視線にドキリと感じるものがある。
いったい二人に何があったの?
娘の初めてできた彼氏。
紹介された時から好感を持っていた。
160の美子も見上げる長身。
端正に整った親しみやすい甘いマスク、、、
穏やかで高校生とは思えない落ち着いた雰囲気の男の子。
きっと剣道をしているからかしらと思った。
そして顔を合わせるようになってナギサが優しく素直な性格だと知り益々好意を持つようになった。
男にありがちな俺が俺がというところやズルイところがまるで無いことも凄くいい。
この子だったら、、、
娘を大切にしてくれる、、、安心して任せられる、、、
そう思うようになっていった。
夫の聡一も気に入ったようだった。
珍しいことだ。
男はあれぐらいどっしりしている方がいい、、、ペラペラと喋る愛想のいい男は信用出来ないと、一人娘を溺愛する夫がナギサを認めていた。
夫は仕事で留守がちだったが、訪ねてきたナギサと娘、そして美子の三人で食事をすることもあった。
いつも楽しそうに話をするシズク、、、
それを優しく頷きながら聴き入る娘の恋人。
本当に好き合っているんだ、、、
自慢の美しくい娘とイケメンの彼氏、心から似合いのカップルだと思っていた。
そんな美子だったが、ある時から視線を感じるようになった。
ナギサの視線だった、、、
ふとナギサを見ると視線が合うことがあった。
初めは偶然だと思っていた、、、
それが何度も重なるうちに、、、
わたしのこと、、、見てる、、の?
まさかね、、、こんな40前のオバサン、、、
それに、、、嫌な気持ちはまるでしない、、、
不審に思いながらも、いつしかその視線に心地よさを感じるようになっていた。
挨拶を交わすように数秒間だけ見つめ合う、、、
それが愉しみになっていた。
夫はわたしをもうオンナとして見ていない、、、
家族として愛してはくれている。
セックスは完全にレス状態だ。
仕事で忙しいのは分かってる、、、
でもそれだけでは無いことも知っている、、、
彼はわたしをオンナとして見てくれているのだろうか?
まさかと思いながら期待している自分もいる。
そんなはずは無いと思いながら、そう思うだけなら何の罪もないと考えてしまう。
それでいい、、、
彼は、ナギサはわたしをオンナとして見つめてくれている。
こんなに美しい男の子が、、、
密かにトキメキを感じてしまう自分がいる。
そのナギサが去っていく。
後ろ姿が寂しそうに見える、、、
わたしも、、、寂しくなるわ、、、
美子は最後まで見送るとシズクの部屋へと向った。
つづく
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