シズクが学校に来るようになった。
ナギサの思いを伝えるとシズクは涙を流した。
以前のように戻れるなんて自分でも考えてない。
でも少しだけでも側にいられるなら、それだけでいいとシズクは言った。
もう二度と人を裏切る事はしない、守ってくれた母のためにも生まれ変わって頑張ると渚に宣言した。
シズクはマネージャーも辞め勉強に集中した。
松田と関係を持つようになってから50位前後だった成績が急降下していた。
ヘタをすると進級が危ぶまれるぐらいに。
何とか取り戻さなければならない。
遊びなどする暇もないほど脇目も振らず勉強した。
ナギサと逢って話をするのも週に一度、二時間ほど。
しかし、それを励みとしてシズクは頑張った。
普段の態度もうわついたところも無くなり、落ち着いた物腰に変わっていった。
美子とはあれから一度も話もしていないがシズクには厳しく接しているのだろう。
初めは松田の件で色メガネで見ていた周りも、そんなシズクを見て考えを改めるようになってきていた。
その日は剣道の部活に、この春大学一年になったOG
の鳴海京奈が参加していた。
170の長身、全国大会にも出場経験がある京奈は大学でも剣道を続けている。
この日はナギサとも試合をしたが一本ずつ取って決着はつかなかった。
しかし京奈は他の試合は全勝、一本も取られなかった。
皆に慕われている京奈は周りを囲まれ愉しそうに話をしている。
一人道場の外で息抜きをしていると京奈がやってきた。
「ナギサ、、、腕をあげたな、、、」
「先輩こそ、、、内容では完全に負けていました、、、」
「うんうん、分かっていればいい、、、でもそんなこともないと思うぞ、、、」
剣道をしているだけあって言葉遣いに男ぽいところはあるが京奈は美人剣士として知られている。
派手ではないがスッキリと整った美しい顔立ち。
それにどことなく美子に似た雰囲気がある。
「今日、帰り一緒しないか?久しぶりに話したいんだけど、、、」
「二人でですか?」
「もちろん、そうだけど、、、」
「なんだか、、怖いな、、、」
「バカなことは言わないの、、、それから、これは皆には内緒だからな、、、」
約束させられたナギサは待ち合わせ場所のカフェに向った。
しっかりとメイクをした京奈は思わず息を呑むほど美しく大人びて見えた。
やはり美子に似てる、、、
それに剣道をしているだけあって姿勢もスタイルも抜群にいい。
向かい合って話を始める。
練習は厳しいが普段は優しく後輩想いの性格で誰からも好かれていた。
一年だけだったが、特にナギサは目をかけられ、たっ
ぷりとシゴかれた。
「ところでだけど、、、例の彼女とは別れたんだっ
て?」
「えっ、、、どうしてそれを、、、」
「着替え中に女子部員達が話してたんだ、、、ナギサがフリーになったって、、、狙われてるぞ、君は、、、」
「そんなの、あるわけないでしょう、、、」
「相変わらずだな、、、まあ、それがナギサのいいところでもあるけれど、、、」
本当に褒められているのか、、、この人は分からない、、、
「どうして別れたんだ?」
「そんなこと、どうでもいいでしょう?先輩こそ、彼氏とうまくいってるんですか?」
「アイツとは別れた、、、」
「えっ、、、」
「アイツ、、、浮気しやがった、、、」
聞いてないんですけど、、、
それにアイツと言われても、話だけでよく知らないんですけど、、、
「だから、言い訳してきたけど捨ててやった、、、」
つづく
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