その夜の拓也は自宅に帰り着いて、自分が疲れ切っていることに初めて気がついた。
全裸を人に見られ続ける緊張感は思った以上に身体に力が入るものだったし、ポーズをとったらそのまま動けない時間というのは想像以上に疲労を伴うものだった。アドレナリンが大量に分泌していたのだろうか、集中するあまりその最中はまったく疲れを感じなかったのだ。
いや、やはりあの信じられない行為が疲労の一番の原因なのだろう。
ポーズを変えるたびに麻子の中から離れはしたけれど、すぐに彼女の温もりの中へ潜り込むことが3時間以上も続いたのだ。
複数の生徒たちに見詰められながら息を潜め、腰を動かさないままに耐えに耐えることになるなんて想像すらしなかった。
同世代しか知らない女性だったけれど、あの懐の深い麻子の中は帰路の最中に歩道を歩く拓也が思い出すだけで、股間が熱くなりそうになる。
短く刈り揃えられた縮れた恥毛の中を分け入り、どこかで所詮はおばさんという先入観はあっさりと覆された。
今思えばプロのモデルを続けている彼女は、あのスタイルを維持するのに節制をしているに違いないのだ。それだけではない、適度な肉付きの良さはあるもののしなやかな筋肉を纏っていると感じることから、適度に身体を鍛えているに違いないのだ。彼女はアスリートではなく、筆写体としての肉体を美しく見せるための努力だと感じる。
あれをセックスと言えるかどうかは別として、次もまた堪えなければならないという思いと、また麻子の中に入りたいという欲求が拓也の中でせめぎ合うのだった………。
何事もなかったかのようにあの場を涼しい顔で跡にしたけれど、正直に言って危なかった。
自分をコントロールするのに神経を使い、自分の中にある彼の魅力的なペニスの味に抗わなければならなかった。あのエラの張った亀頭、あの硬さと自分の中が窮屈に感じるほどのサイズ感。我を保つのに実は必死で、彼の若さを除けばほぼ麻子の理想だったのだ。必死堪え続ける彼と繋がっていたら、無性に抱き締めて包み込みたい気持ちを自制するのは辛かった。願わくばあんな人前なんかじゃなくて2人だけの空間で、抱き合いたい……そんな気持ちにさせられるなんて、初対面のあの若い彼に……プロ失格ね、麻子はひとり苦笑をした。
自分をもっとコントロールしなければと戒めの気持ちを抱いたのは、帰宅の道中のタクシーの座席で、未だ鎮火せずに燻り続けている子宮口に疼きを感じているからだった………。
日を開けて2日後、麻子と拓也は再び顔を合わせることになった。麻子は身体の隅々まで泡で洗い流し、秘分は専用のソープで彼に不快に思われないように洗い流してきた。昨夜はアルコールも飲まず、今日という日に体調を合わせて来た。40歳にまでなって何を浮足立っているのかと自分でも思うけれど、そんなことは表に出さないだけの仮面で武装することは容易である。
拓也といえばやはり入念に身体を洗い流し、昨夜は無様に射精しないようにと自慰行為をして余裕を持って来た。2日前に彼女中に射精してしまったことに麻子は怒っているのではないかと危惧していたけれど、涼し気な彼女らしい振る舞いを見て、杞憂だったことを知る。まだまだ慣れないけれど着ているものを脱ぎ始めた麻子を見て、拓也もガウンに急いて着替えた。空調が効いて寒くもないけれど暖かいという程でもない控室の空気に肌が触れる。拓也のペニスはいささか縮こまったけれど、ガウンを身に着ける前に下着の跡を消すマーサージをする麻子を見て、下半身に血流が流れ込むのを感じた。急いでガウンで前を隠さなければならなかった理由は、見間違いではなければ麻子の乳首が勃っているように見えたからだ。
温度差による生理現象なのか、別の理由なのかは確かめようがなかったけれど…………。
呼びに来た美紀によって2人は、生徒たちにの前に立った。2日目の拓也はただ緊張をしていたけれど、麻子は戦々恐々を抱いていた。その理由は講師の藤木美紀である。彼女とは長い付き合いになったけれど、今まで初日からいきなり挿入されることを求められたことはなかったのだ。彼女が熱く芸術を求める性格なのは理解しているけれど、あれは果たしてその範囲で考えてのことだったのだろうかと、麻子の中で疑念が澱のように沈んで残っている。とにかく彼女が何を要求してくるのか分からない以上、覚悟しておかなければならない。過激な彼女の芸術性に共感して感銘を受けたのだ、アブノーマルなことまで受け入れてきたプロである以上、弱い部分を見せたくはない。
彼女の芸術に羞恥心や嫌悪感を抱くのなら、初めから彼女のオファーは受けてはいないのだ。
これは自分とどうやって折り合いをつけるか、それこそ己との戦いなのだから…………。
それじぁ貴方はこうして、貴女は…………。
美紀の常軌を逸した指示に、拓也は一瞬理解が追いつかなかった。仁王立ちをする拓也の前に膝を着いた麻子の頭を両手で抱え、麻子は拓也の太腿に手を添えてベニスを至近距離で見詰め続けるという指示なのだ。控え目に肯定的なことを言うならば、ふたりとも感情を表に出さず無表情でいることだろうか。美紀に言わせるなら愛おしい存在を見詰める女と、その愛を受け止める静かな情熱と言うことらしい……。
美紀の指示は次々に重ねられ、麻子の顔はペニスの真横にあった。拓也の陰毛に片側の頬を押し付けて、力を失った生き物のようなペニスを手の平に乗せて見詰めている。それを食い入るように見詰めては視線をキャンパスに落とし、手を動かす生徒たち。言い知れぬ羞恥心で拓也の体温が上がっていくと共に、麻子の手の平から浮き上がっていくペニスが力を取り戻していく………。拓也は今すぐこの場から、逃げ出したかった。前回、美紀に言われていた言葉が頭の中で響き渡る。
勃起したら、そのまま維持してね………。
形や大きさが変わったら、デッサンにならないのよ………。
生徒の中には溜息をつく表情を作り、描き直す者も入ればそうなることを見越してその部分は曖昧に描いていた者もいるようだ。その女生徒はやっと実物を見ることができたかのように、勃起した大きさと形の輪郭を描いていく。彼女の指は頭を起こした龍のように反り返った陰茎を描き写し、原木から生えたキノコが成長して傘を広げたようなエラの張った亀頭を描いていく。陰茎に浮き出た血管までリアルに描き、緩やかなカープを見せて上を向く陰茎に陰影を与えて写真のような美しさだった。手の空いてしまった麻子には陰嚢を手の平に乗せる指示が与えられ、拓也の身体に変化が訪れようとしていた。
鈴口から綺麗な透明の雨粒のような粘液が現れ、尿道を伝って湧き出す感覚を覚えて拓也は動揺を隠せなかった。羞恥とバツの悪さに麻子に視線を向けると、彼女と目が合った。無表情だけれどその目には確かな意思が感じられ、信じられないことに麻子は先端に口をつけてカウパー汁を吸い取ったのだ。一瞬だったけれど尿道の入口から吸い取られる痺れと、唇の裏の粘膜に触れる甘い感触がペニスの根元まで伝わった。それが切っ掛けとなって次々に溢れ出る粘液にさすがに麻子が美紀に視線を投げかけると、拓也は我が耳を疑う美紀の指示を聞くこととなった。
光が反射して丁度いいから、塗り拡げてもいいわね…………。
彼女はそのまま言葉を区切って、締めくくる。
つまりは、そうしろとの指示なのだ。
麻子は努めて無表情を作ったまま拓也のペニスを握り、溢れ出る粘液を上下する手で陰茎まで塗り拡げていく………。思わず声が出てしまいそうになるのを堪え、麻子の指と柔らかい手の平の感触を歯を食いしばって堪えなければならなかった。
拓也のペニスは麻子が手を離しても粘液を吐き出し続け、ついに雫となって一筋の糸を伸ばしながら落下していった。屈辱と羞恥、好奇の色を滲ませる生徒たちの視線に晒されても悲しいくらい、拓也のペニスは勃起を維持し続けるのだった。
んっ、次はじゃあね、2人の立ち位置をそのまま変えてくれるかしら………?
美紀の指示に従って身体の位置をを入れ替えてみた2人は、羞恥心もそのまま入れ替わる。
拓也の目の前には燃えるような恥毛が広がり、その中央には縁が黒みがかった秘唇の閉じた秘分部が見えていた。
それじゃあ芸がないから右脚を彼の肩に乗せてくれる……?
そのまま立つのが辛いなら、彼の肩に手をついても構わないわ………。
拓也は目眩がしそうになったけれど、麻子は比べ物にならないくらいの心情だと想像ができた。
一瞬の戸惑いを見せた麻子だったけれど、彼女は果敢に美紀の指示通りに従った。生徒たちに向かって身体を横に向けた格好で、向こう側の脚を上げて彼の肩に乗せるものだから秘部が少しの間だけ露わになる。脚の長い麻子は悠々と肩を跨いで乗せることができたけれど、それでも拓也の肩の位置は少し高く、彼の肩に手を置かなければ立ち続けるのは難しい体勢になる。拓也は至近距離で見せつけられ、嫌でも気付かされていた。
片脚を上げたことで秘唇が歪んで開き、そこが明らかに濡れていることに………。
ほぼ無臭なそこから鮮やかなピンク色の粘膜が覗き見え、僅かに酸っぱいような異性を擽る香りが漂ってくる。無表情の仮面を顔に貼り付けた麻子でも、さすがにこれはやり過ぎだと内心は穏やかではいられなかった。髪の毛をアップにしていることから完全に露出している耳が真っ赤に色付いて、羞恥の炎で身体が焼かれているさまが講師と生徒たちに晒されてしまった。それでも麻子の顔はプロに徹して崩れることはなく、能面のように無表情を作っている。
麻子の体重が拓也の背中側へとかけられたかと思うと、後ろ側へと逃げるように移動する。体勢を維持する難しさだけではなく、女の羞恥心が影響しているのか体重移動が繰り返される。やがて疲れたように拓也に体重を預けた麻子のそこは、彼の口と密着してしまった。静止画のように動かない2人の歪な肉体美を、生徒たちはキャンパスに写し取っていく。拓也の鼻腔に侵入してくるのか麻子の香りに、いつしか唇が動いてしまうのを抑えられなくなっていた。黙っていても溢れ出てくる麻子の粘液を少しづつ吸い取り、喉の奥に流し込んでいく。舌先を静かに上下させて粘膜を味わい、やがて最上部の地雷に辿り着く。
蠢く拓也の舌先に拓也の肩に置かれた麻子の指に力が加わり、鼻で行われる呼吸が少しづつ粗くなっていく。
麻子のお尻の筋肉が収縮し、上体が僅かに揺れ動く。
麻子の無表情の仮面が今、崩れようとしていた。
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