……嘘でしょ?、あんなにあからさまに………
麻里も湯煙りの向こうによく知る自分の友達が繰り広げる痴態に、衝撃を受け両手で口を覆っている。3メートルほど近づいた男たちが半円状になり、女の口から見え隠れする陰茎を凝視する。そんなワニたちを見回しながら相方の乳房を揉んで見せ、悦に浸るダンディがほくそ笑む……。
ふと離れた位置にいるカップルの様子が変わり、何やら怪しい動きを見せている。身体をぴったりと寄せて、自分たち周辺の湯面が不自然に揺らしている。湯の中で何をしているのだろう……。
不意に麻里のお友達が立ち上がり、男たちにそのボリューミーなお尻を見せつける。野太い彼らの歓声が上がるとダンディと立ち位置が代わり、縁に腰掛けた彼女が脚を広げる。そこに顔を埋めたダンディがわざと音を立ててクンニを開始、それを食い入るように見詰める野次馬たち……。
友達カップルとたまたま居合わせたカップルたちの様子を見ていた麻里が、触発されたように湯の中でペニスを握ってくる。拓也も応えて麻里のそこに手を伸ばし、すでにぬるりとした感触が指に伝わってくる。そんな麻里を胡座をかく自分の前に引き寄せると、麻里が弾かれたように頭を跳ね上げる。自分たちの身体の周辺の湯面またゆらゆらと動き出し、後ろから乳房を揉み解す。
何やらダンディたちの方角から怪しげな声が、こちらまで届いてくる。想像はつくけれど目を凝らすと湯煙りの向こうに、ダンディの尻が前後に動く様子が視界に入ってきた。彼は自分たちを見せつけるように体位を変え、相方を壁に向かって縁に手をつかせると、後ろから貫き始めた。
大胆になってゆく彼らに刺激を受けて、今やあのカップルたちも湯の中に身体を半分浸かったまま湯面を揺らしている。それに目ざとく気付いた男2人がカップルに近づき、ニ手に別れたうちの1人がこちらに向かってくる。それぞれ三方に散った男たちにはもう遠慮はなく、女の表情の変化を見逃しまいとじぃ~っと凝視。あくまで芸術を求めるヌードモデルの仕事は、慣れてしまえば抵抗はなくなった。けれど欲望を剥き出しにした男には嫌悪感と羞恥心が心を焦がされ、麻里は男から顔を背けなければいられない。
出てしまいそうな声を両手で口を塞ぎ、ついには顔を覆ってしまった。それでも拓也の腰の躍動は止まらず、湯浴み着をずらして露出した乳房を揉まれる様を男に提供されていく。
カオスだった………。
のぼせてしまったからなのか、それとも興奮のためか自分でもよく分からない。拓也と戻ったことは間違いないのだけれど、頭がぼぉ〜っとしていた麻里はどうやって部屋まで辿り着けたのか記憶が曖昧だった。気が付けば布団の中で浴衣を着けない全裸姿で、拓也の腕の中で目覚めていた。
あれは夢だったのではないか、そう思いたい。
けれどあの緊張感や天然石が敷き詰められた上を歩いた足の裏の感触、檜の香りやギラついた男の目が忘れられず、現実の出来事だと改めて麻里の胸を締め付けていた。
今日はどうしようかと、朝食を終えた2日目の朝から観光に出た。遊歩道が張り巡る湿地帯を歩き、ここでしか見られない植物が咲かせる花に心が和む。忙しい毎日を過ごす日常から切り離されゆったりと流れる時間、広く抜けるような青空と自然を堪能し、地元の小さなお店で郷土料理に舌鼓を打つ。
幸せな時間はどうして、早く過ぎ去るのだろう。
あっという間に午後になり、夕方にはまだ早いそんな中途半端な時間帯だった。温泉街にありがちな繁華街に足を踏み入れた2人は、飲み屋や昭和の香りが漂う劇場、小料理屋が立ち並ぶその一角に年季の入った小さな映画館を見つけた。
数週間前に麻里と熱い時間を過ごしたのも寂れた映画館だったけれど、少なくても古いだけで地元でも健全な映画館で知られている施設だった。
けれどいかにも時の流れから取り残されたような繁華街にあるこの映画館は、女性や子供が近づくような雰囲気はまったく感じられない。いわゆるピンク映画を放映する場所だと、経験のない世代の拓也にも察しがつく。麻里も如何わしい雰囲気から何やら女性特有の感が働き、気付いた。
顔を見合わせると僅かな嫌悪感と興味を覗かせる麻里の顔が、一緒なら入ってもいいと語っている。彼女もまたあの映画館での体験を忘れてはいないらしい。淫らな興奮が麻里のその顔を女にさせて、拓也の腕に力強く自分の腕を絡ませる。
2人は入口のチケット売り場で老婆に料金を支払うと、その怪しげな入口から暗がりの中へ足を踏み入れて行った。
※元投稿はこちら >>