季節はいくつも移り変わり、5年の月日が流れていた。麻子はヌードモデルを引退し、大学講師を続けながら小さなサロンの店主をしている。
拓也も大学を無事に卒業し、懸念していた借金は綺麗に返済することが出来ていた。普段は就職した一般企業に勤めながら、肌に馴染んだ夜の仕事には相変わらず通う日々に変わりはない。
麻子とはお互いに良い人が現れたら綺麗に身を引きましょうと話を決めていたけれど、理屈ではない所で離れられずにいる。肌を合わせればやっぱり満たされていく心地良さを再認識させられ、麻子といえば拓也の攻めに何度も絶頂に導かれ、拓也もまた呻きながら彼女の中に身を震わせながら果てるのだった。
唯も懸念していた借金を完済し、不動産会社に勤めながら夜のモデルの仕事に足繁く通い続けている。今ではすっかり裸を見せることに慣れてしまい、女性ホルモンの分泌が顕著なことから魅力的な身体へと変化を遂げて、心の底から感じる女の顔を見せて美紀を納得させている。
生徒たちは半分ほどのメンバーが入れ替わった。
麻子が引退してしまったことで、モデルへ転身した元女生徒が2人いる。彼女たちのひとりは情けない夫に代わり、その欲情を満たすためなら裸体を披露することを選んだ主婦である。もう一人は中間管理職に就く公務員の独身女性で、拓也の味を忘れられず服を脱ぐことに迷いはなかった。
2人は週に1度の快楽に女の業を燃やし、大人の女の艶めかしい美しさを見せつける。目くるめく甘い波に飲み込まれながら度重なるオーガズムに身を捩る夜を楽しみにしている。
滞りなく開かれていたデッサン教室ではあるけれど、ここ最近はモデルのひとりが仕事の関係で出られる日を減らしてしまったのだ。仕方なく穴埋めのために美紀が服を脱がねばならず、早急に代わりを増やす必要性に追われていたのだった。
美紀は知り合いのまた知り合いまでアンテナを張り巡らせて、ひとりの候補者が知らず知らずのうちに仕掛けられた罠に一歩、また一歩と足を近づけていた……。
ママさんバレーの面々がレシープの練習をする中で、若手メンバーのひとりである美山麻里がトスを上げる。それをジャンプしたアタッカーが打ち下ろした手で相手コート側に鋭いボールを打ち付ける。バチンッ……という激しい音が、体育館に響き渡った。
休憩時間に口へと水筒を傾ける麻里に、同僚のひとりのメンバーが近寄っていく。
ねぇ麻里さん……知り合いがモデルを探しているんだけど、あなた手脚も長いし身長もあるし、お小遣い稼ぎにやってみない………?
麻里 やだ、あたし30を過ぎてるんですよ?
あっ、ゴメン……モデルと言っても絵の方のモデルなのよ、ほら白い紙に描かれる方の……。
麻里 あぁ~そっち、えぇ~あたしが………?
聞けばポーズを決めて立っているだけの、簡単なモデルと聞いて少し心が揺れ動いた。
意外とギャラが良いので、話を聞いてみるだけでもいいかと思ったのだ。後日、場所を移して面接をしてくれた女性は、藤木美紀と名乗った。
彼女の所ではヌードのデッサンも行われているらしく、モデルによってはヌードになる人もいるらしい。衣類を着たままの人、下着姿になれる人、そしてヌードになれる人でギャラが格段に違うことを知らされた。とりわけ彼女の所では女性の美しさに焦点を当てられ、男性モデルとベアで行われるらしい。
男女ベアのモデルでのデッサンは、その世界ではあることだと聞いたことがある。ギャラの違いはそうだろうなぁ……と、麻里も納得できる。
一男一女の子供がいる麻里は子どもたちの将来の学費を少しでも貯めたいと、頭で計算を始める。
ヌードは出来ないとしても、下着姿までなら………夫には言えないけれど、勇気が出るかしら……。
週に3回、下着姿になればパートよりも楽に稼ぐことができそうだ。そう、週に3回………。
ギャラが支払われることは公にされていないと聞いてきな臭さを感じたけれど、裏を返せば税金を気にしなくてもいいということでもある。後で考えれば違和感を感じた時点で警戒をすべきだったのに、報酬額に魅せされて抜け出せなくなるなんてこの時は思わなかったのだ。
だって、ある意味で忘れられなくなるのだから。
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