土曜日、ミナミの希望で二人はドライブを兼ね遠出をした。
ミナミは水色のノースリーブのワンピースを着ていた。
ところどころに花柄の刺繍が施され、上品で清楚な人妻の雰囲気を漂わせるいでたちだった。
ミディアムボブの黒髪が艶めいて若々しく20代にしか見えない。
そして何よりも本当に美しかった。
見とれたヤマトがそう告げるとミナミははにかみながらも嬉しさを隠しきれずにいるように見えた。
そして今、ミナミは助手席に座っている。
普段はさほど目立たないミナミの胸がシートベルトのせいでその存在を露わにしていた。
女性らしく肩幅もあまりなく華奢な身体つきなのに不釣り合いなほどの量感だ。
高さがハンパない、、、
高校時代もそれなりとは思っていたが、そんなものじゃない、、、
Fはあるんじゃないか、、、
ブラのせいか?
今のブラはいろんな機能がある。
DをFに見せることなどにべもない。
ミナミがモジモジして頰を赤らめている、、、
まずい、、、
チラ見を気づかれたのか?
俺は何を考えてるんだ、、、
いかん、いかんぞ、、、
相手はミナミなんだぞ、、、しかも人妻だ、、、
慌てて話題を振る。
「板橋、少し遠いけど、牧場に行かないか?」
「牧場って?」
「ソフトクリームとパフェがバツグンなんだ、、、それに食事もいける、、、」
「パフェ、、、いくいく、、、食べてみたい、、、」
女の子のようにはしゃぐミナミにヤマトは目を細める。
ドライブを楽しみ牧場の食事も最高だった。
デザートのパフェも。
ミナミは美味しいを連発していた。
「うーん、、、最高、、、」
満開の笑みを浮かべるミナミをまぶしそうに見つめてしまう。
いつまでも可愛い女だと思う、、、
本当に最高にいいオンナだ、、、
俺だったら本当にそばにいてくれるだけでいい、、、
和泉はバカなヤツだ。
ミナミの値打ちが分かっていない。
長い間、そばにい過ぎて返って見えなくなっているのだろうか?
それでも、、、ミナミはミナミなりに幸せなんだろう、、、
いいや、、、そうあって欲しい、、、
食事の後にはミナミの娘の話もした。
中学になったばかりで難しい年頃だがミナミには心を開いているらしい。
しかしその反動か父親の和泉とは折り合いがかなり悪い。
反抗することもたびたびだとミナミは苦笑していた。
「板橋の娘さんか、、、可愛くていい子なんだろうな、、、」
「すごくいい子よ、、、わたしなんかより、ずっとキレイになるわ、、、」
真剣に言うミナミはまさしく母親の顔をしていた。
楽しい時間はあっという間にに過ぎていく。
ミナミといるときはいつもそうだ。
二人は車に乗り込み帰り道につく。
「ねえ、覚えてる?」
「うん?」
「三年の時の放課後のこと?」
「ああ、、、覚えてるよ、、、」
きっとあのことだ、、、
その日、ヤマトが部活を終えて教室へ戻ると、珍しくミナミが一人席に座っていた。
「どうした、板橋?」
「えっ、、、うん、、、リクヤを待ってる、、、」
なぜかミナミは寂しそうに見えた。
「そうか、、、和泉も生徒会長で大変だな、、、」
「うん、、、川島くんは部活だったんでしょう?」
「そうだけど、、、お前、大丈夫か?」
「えっ、、、どうして?」
「なんか、、、元気ないからさ、、、」
「そんなことないよ、、、全然大丈夫、、、」
空元気に見えた。
本当はもっとそばにいて話を聞きたかったが、そうはいかない、、、
「じゃあ、俺帰るな、、、」
「うん、、、また明日ね、、、」
そのまま教室を出ようとした、、、
「ねえ、、、わたしって、、、いい彼女かな?」
肩が震えているように見えた。
ヤマトは思わずミナミの前に戻っていた。
「何を言ってるんだ、、、板橋は最高の彼女だ、、、和泉なんかにはもったいない、、、」
「川島、、くん、、、」
今にも涙がこぼれそうな瞳をしていた。
そして驚いた顔をしてヤマトを見つめた。
「俺、行くな、、、」
慌てて教室を出る。
危なかった、、、
あのままいたら間違いなくミナミを抱きしめていた、、、
それは絶対に赦されないことだ、、、
ミナミへの想いを断ち切れない自分を責めながらヤマトは歩いていた。
ふと生徒会室から一組の男女が出てくるのを目にした。
男は和泉、女は確か書記だったか、、、
二人はヤマトに気付くことなく親しげに話をしていた。
親しげを通り越しているようにいちゃついているようにも見える。
「もう、、、和泉会長、、、そんなこと、、、」
甘えた声で話しかけると和泉が耳元で何かを囁いている。
なんだよ、、、この二人、、、
まさか、、、
いやそんなはずはない、、、ヤマトはその場を立ち去った。
「わたし、、、あのとき、川島くんに抱きしめられると思ってた、、、」
やはりミナミは鋭い、、、
「俺にそんなこと、、、出来るはずがないだろう?」
「そうだね、、、ハルミがいたもんね、、、」
「もし、、、抱きしめたら、、、どうしてた?」
「ビンタしてた、、、思いっきり、、、」
「うん、それでいい、、、板橋は絶対に間違えないからな、、、よかったよ、抱きしめなくて、、、」
「そんなわけ、、、ないじゃない、、、」
ミナミが消えるような声で呟いた。
「えっ?」
聞き間違いだったのかも知れない、、、
ミナミは唇を噛み締め応えることはなかった。
沈黙が流れた。
つづく
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