「ありがとう、パパ」って言うと、突然ほっぺにChu!ってして元の向かいの席に戻る。
一瞬の事で俺が驚いてると「よくパパにChu!ってしてたんで。」と少し顔を赤らめて照れくさそうに言う。
そして、今度は仕事の話。この前の一件は確かにミスだったろうけど、上司が新人達も居たので見せしめの為に叱責してたんだろうから気にするなとか、俺がどんな具合に仕事を進めてロスを帳消しにしただとかを話したりしてた。
そこで、カァ が以前から気になってた事があるようで聞いてきた。
「ウチの社長って他はそうでも無いのに、パパには挨拶したりするじゃないですか。アレって、何かあるんですか?」
「あぁ、アイツ… アイツって言うと失礼だね。(笑) そこの社長は元々ウチの会社の後輩で、カァの会社で今やってる仕事は、社長がソッチへ引き抜かれる時に持たせてやった仕事なんだよ。(笑)」
「エッ!そうなんですか?」
「まぁ、まさか上手く広げて社長にまでなるなんて思ってなかったけどね。」
「パパは引き抜きとかなかったんですか?」
「いや、最初は俺に来た話だったんだけど、丁重にお断りさせて貰って、代わりにアイツを勧めたんだ。」
「エ~ッ、パパが社長の方が良かったなぁ。」
「それは無いな。」
「何でですか?」
「ま、俺は社長なんて器でもネェし、何だかんだと色々あってね。(笑)」
って風に、俺が今の会社で主務止まりでいる理由まで話す必要も無いだろうと、その場凌ぎで茶を濁した。
一頻り話しもして、お腹も満たせたし、酔いも良い感じになり一旦仕切り直そうかと店を出た。
外に出ると雨は止んでいたんだけど、カァ が隣にくっつき歳の差があり過ぎて恥ずかしかったが、腕を組んで来たので断る訳にもいかず一緒に歩いた。
次の店はどうする?と、若い子ならカラオケでも歌いたいかなと思ってスナックかBARなんてどうだろうと聞いてみた。
すると今時の子なのか、カラオケボックスが良いって言う。俺は逆にココ何年と行った事が無かったので付き合う事にした。
そして部屋に入ると飲み物やおつまみを注文してくれる。
(最近のはシステムが解って無くて、付いて行けないのがオヤジだなって思うよ実際。)
「カラオケならスナックとかでもあったのに。」って言うと、隣に座ってきて
「だって、二人きりじゃないと甘えられないんですもん。」と、腕を掴んで頭をもたげて来る。
(確かに他人の目があると、くっついたりは出来ないか。それにしてもそんなに父親に飢えてたのかね?)って考えたりする。
歌もそこそこにBGMが響く中、お喋りをする。
「俺は冗談のつもりでデートなんて言ったけど、何でこんなオヤジに付き合ってくれたの?」
「だって、あんな凄い損失をゼロにして貰ったんですもの。実を言うと御礼をさせて下さいって連絡入れた時、体で返せって言われたらそうする覚悟で居たんです。」
「何をバカな事を。そんな事したらパワハラだかセクハラだかで、コンプラに引っかかって俺がエラい目にあうよ。(笑)」
「でも、本当にパパになら抱かれてもって… 」と腕にしがみついて上目遣いに俺を見つめてくる。
「バカな事を言うんじゃ無いの。」と頭を抱き寄せ、ポンポンとしてあげる。すると胸元に顔を埋めて
「私、実はファザコンを拗らせちゃってるんです。だから、優しくて恰好いい貴方の事を本気で好きになっちゃってて… 」
「ダメだよ。オジサンを揶揄わ無いの。」
「揶揄ってません。ホントに、デートって言われた時は嬉しくって… 」と、いきなり唇を重ねて来た。
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