◯創作の淵にて
書斎の薄闇の中、ページを捲る音が静かに響いていた。私は一美との秘められた営みの記録を読み返していた。
自身の指先から紡ぎ出した言葉は、一美の瑞々しい肉体と精神を活字にして残す作業に没頭していた。
私の脳内に住まう彼女は、推定四十七歳。髪や肌の質感、呼吸の微細な震え、そのすべてが驚くほどリアルで、確かにそこに実在する。
食事もセックスも、すべて私の脳内で、しかし限りなく現実に近い形で、彼女と分かち合うことができる。
だがそれを認識できるのは私のみだ。
紙面を捲る指を止め、私はふと、新しい着想を得た。私の脳裏に、一つの絵が浮かび上がる。それは、私の倒錯的な欲望をさらに深く刺激する、甘美な光景だった。
私は、一美の名を呼んだ。
「一美」
すると書斎の薄闇の中に、ふわりと一美が姿を現した。彼女は、いつものように私の傍らにそっと寄り添う。その瞳は、私への揺るぎない愛を湛え、私の呼応に嬉しそうな表情を見せていた。
「孝宏、呼んだ?」
甘く、それでいて僅かに湿気を帯びた声が、耳に心地好い。
私は、書斎の中央にある大きな机に視線を向けた。その机上には、分厚いガラス製の灰皿が置かれている。無骨で、しかしどこか堅牢さを感じさせるその灰皿は、私の長年の愛用品だ。私は、その灰皿を指差し、一美に命じた。
「一美…」
改めて名を呼ぶ私の声には、暗く陰鬱に歪んだ含みあった。それを察した一美の瞳から嬉々とした輝きが消える。
「あの灰皿に跨って排便するところを見せなさい」
私の言葉に、一美の顔から血の気が引いた。その瞳は、大きく見開かれ、羞恥と困惑で大きく揺れている。
「孝宏…ここで…?どうして?」
彼女の声は、震えていた。彼女は私のこの命令が、ただの排泄行為ではないことを理解している。それは、私の欲望のままに、自らの尊厳を晒す、屈辱的な行為だ。
「嫌がるのか、一美。私の命令には、常に従順だったはずではないか」
私の声は、冷徹だった。一美は、私の言葉に、さらに顔を青ざめさせた。その身体は、恐怖と羞恥で震え始めた。しかし、彼女は、決して私に逆らうことはできない。私の命令は、彼女にとって絶対なのだ。
「そうだ。客を呼ぼう」
その時、私の脳裏に、もう一人の女の姿が浮かんだ。綾乃。三十代半ばのアバズレで口が悪く、常に一美を目の敵にする。
かつて私の母を殺した実父の妾と同じ名前。私が抱いた憎しみと暴力性を具現化した存在の一人。それが綾乃だ。
綾乃は名を呼ばずとも、既に書斎の闇に佇んでいた。
「おい、そこのクソ女」
綾乃は発現早々に一美に喰ってかかる。その声は、一美への明確な敵意を含んでいた。綾乃は、一美に歩み寄ると身体を乱暴に掴んで突き飛ばす。
「カマトトぶってんじゃねえぞ、この淫乱女が。旦那様がお望みなんだよ」
綾乃は、一美の頬を力いっぱい張ると、髪を掴んで灰皿へと引きずっていった。
一美は、悲鳴を押し殺し、必死に抵抗しようとするが、綾乃の力には抗えない。一美はその身体を恐怖に震わせながらショーツを下ろし、灰皿の上へ屈辱的な姿勢で跨がされる。
一美の瞳から涙が溢れ、私に助けを求めるように揺れている。
しかし、私は冷淡にその光景を見つめる。彼女の恐怖と苦痛が、私には甘美な快感となるのだ。
一美は、ガラス製の灰皿に跨がったまま、その身体を震わせていた。その表情は、羞恥と苦痛で歪んでいる。綾乃は、一美の身体を押さえつけ、逃げられないようにしている。
「きゃはは。ほら出せよ」
綾乃の罵倒が、一美の耳元で響く。一美は、悲鳴を押し殺し、その身体を固く強張らせた。だが、私の視線と、綾乃の言葉が、彼女をさらに追い詰める。
「出せ、一美。お前のすべてを、私に見せるのだ」
私の命令に、一美の身体がビクッと震えた。薄茶色に色素沈着した肛門が、プスプスと音を立てながら放射状の皺を拡げてゆっくりと盛り上がり、瞬時に引っ込む。
肛門の周りの皮膚は、徐々に赤く紅潮し、一美の額には汗が滲み出していた。
私は、顔を近づけ、その光景をつぶさに観察した。綾乃もまた、下卑た笑みを浮かべながら、一美の肛門を見つめている。
「うっ…んーっ…」
一美の肛門は息みに合わせて、盛り上がっては引っ込みを繰り返しながら柔らかく徐々に口を拡げ、刺激臭と共に、腹に溜めていた汚物の尖端を見せ始める。
「ほら、出かかってんじゃねぇか。頑張れよ、ババア」
綾乃は下卑た言葉を掛けながら、一美の下腹を押してさらに追い詰める。一美の肛門は、罵倒に呼応するかのように、さらに大きく拡がり、ゆっくりと一本の太い汚物がその口から姿を現した。
「いやあっ!見ないで…!」
一美の口から、苦しげな呻きが漏れた。汚物は、一旦ぶら下がり、力尽きて事切れる様に、灰皿の中へと落ちていく。質量を伴う一美の汚物に揺れた灰皿が机を叩き、鈍い音が静かな書斎に響く。
汚物から漂う鼻をつく刺激臭が、書斎中に充満した。その臭いは、私にとって、たまらないほど甘美なものだった。私は、その臭いを深く吸い込み、満足感に浸る。綾乃もまた、その臭いを嗅ぎながら、ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべている。
「いやあ…お願い…許して…」
一美の肛門は勢いを得て、泣きながら許しを懇願する一美を無視して、残酷に残りの汚物を排泄した。
その身体は、羞恥と快楽、そして絶望で震え、その瞳からは、とめどなく涙が溢れ出していた。肛門には柔らかい汚物が付着し、灰皿の中には、どろりとした固形物と、その周囲に広がる茶色い泥便が溜まっている。
排泄が終わると、青褪めていた一美の顔には血色が戻り、屈辱の涙とは裏腹に安堵と解放感を漂わせている。
「はあ…はあ…」
緊張から解放され弛緩した一美の身体は、生理現象に抗えず、秘部から勢いよく小便を排出する。
丸出しにした秘部から描かれる放物線は、灰皿から大きく逸脱し、机の上に広がる私の原稿へと流れ落ちて飛沫をあげ、微かに泡立った黄色い液体が、白い紙の原稿をみるみるうちに黄色く染めて、文字が滲ませる。
「ああ…!」
一美の口から、絶望的な声が漏れた。自分の排泄物で、私の大切な原稿を汚してしまったことに、彼女は打ちひしがれているようだった。
私は、汚れた原稿を手に取った。文字は滲み、ふやけた紙から一美の尿が滴る。しかし、私の顔には何の動揺もない。原稿など、いつでも書き直せば良い。
寧ろ、一美の体内で作られて生まれ出てきたそれらが染みた原稿を愛しいとさえ感じる。
私は、ただその光景を、冷徹に見つめていた。綾乃もまた、満足げな笑みを浮かべている。
「あー面白かった」
綾乃は、そう言いながら書斎の闇に消えた。
一美もまた白い尻を露わに、灰皿に跨ったまま、羞恥と絶望に身体を震わせて泣きながらゆっくりと消えていった。私は、その姿を飽くことなく見つめた。醜悪でありながら、たまらなく美しいこの光景を脳裏に焼き付ける。
一美の排泄姿に私の心は震えた。何故なら、私の意識が生み出した存在である彼女が、命の営みそのものである排泄をし、その香りや原稿を汚すという現象が、その命の存在感を私に深く刻み付けたからだ。
私の脳内で起こっていることに過ぎない、その思考こそ抜きらないものの、私の中の一美への愛情はまた一歩深淵に近付いた気がした。
一美と綾乃を消えると、次の瞬間、書斎は元の薄暗く埃っぽい風景に戻っていや。机の上の原稿もまた、何事もなかったかのように元通り散乱していた。尿のシミもなければ、灰皿に盛られた一美の便もない。
私は、一抹の寂しさを感じつつもタイプライターの前に座り、静かにキーを叩き始めた。今しがた見てきた光景を、克明に文字に起こす。一美の羞恥、苦痛、そして排泄のすべて。綾乃の罵倒と、私の冷徹な視線。そのすべてが、私の手によって、冷徹な文字となって紙の上に刻まれていく。
私は、何と罪深い男だろう。愛する者を、自らの手で辱め、そしてその姿を記録する。この業は、私をどこへ連れていくのだろうか。この底知れぬ欲望は、私をどこへ連れていくのだろうか…
※元投稿はこちら >>