イブキは夕食も喉を通らなかった。
コウヘイのことがバレた?
この状況はそれを指し示しているとしか考えられない。
でも、、、どうして、、、
気付かれないように気を配ってきたはずだ。
だから決定的なことは絶対に知られてはいないはず、、、
もし知られたら、、、
カイリを失う、、、
いつもそばにいてくれた、、、陰日向に守ってくれる一番大切な人。
それだけじゃない。
いつも良くしてくれるカイリの両親。
そしてわたしのことを信じている自分の家族と周りの友人達も、、、
わたしの裏切り行為を知ったら、、、
自分がいかに愚かで危険な過ちを犯していたのか、、、
不安に押し潰されそうになる。
これ以上放っておけば余計に事態が悪くなるだけ、、、
とにかくなんとしてもカイリと話をしなくてては、、、
イブキはいても立ってもいられない気持ちでカイリを訪ねることにした。
避けられスマホにも応じてくれない以上、それしか方法はなかった。
歩いて2分の距離。
「あら、イブキちゃん、、、こんな時間にどうしたの?」
幼い頃から実の娘のように優しくしてくれるカイリの母カナコが迎え入れてくれる。
「あの、、、カイリに話があって、、、」
「そうだったの、、、ちょっと待っててね、、、」
入れ替わるようにしてカイリがやって来た。
表情は固い。
「何の用だ?」
「突然ゴメン、、、話をしたくて、、、」
少し考えた後、カイリは部屋に通してくれた。
久しぶりのカイリの部屋、、、
この部屋で初めてキスをした。
あのときはドキドキして、、、すごく幸せで、、、
それなのに、、、わたしは、、、
「話があるんだろう?」
どこか突き放すような口調だった。
「カイリ、、、どうしたの、、、最近ヘンだよ、、、」
「それは、、、誰のせいだ?」
「くっ、、、カイリは、、、何か誤解してる、、、」
「誤解はしてない、、、真実を知ってるだけだ、、、」
何を、、、知ってるの?
「わたし、、、もしカイリの気にくわないことをしているんだったら直すから、、、なんでもするから、、、冷たくしないで、、、お願い、、、」
「気にくわないだと?よくそんな白々しい事が言えるな?」
「えっ、、、」
カイリの冷ややかな目、、、
「お前、、、このあいだ、俺との約束をドタキャンして、何をしてた?」
「あれは、、、だから、、、家の用事で、、、」
「家の用事でどうして藤原と逢う?」
誰かに、、、見られた?
「逢ってない、、、それ、わたしじゃない、、、誰か知らないけど、それ見間違いだよ、、、」
必死に言い繕う。
「ふーん、、、けど見間違いじゃない、、、見たのは俺だから、、、家を出てからずっと見張ってた、、、」
「えっ、、、まさか、、、わたしのこと、、、つけてたの?」
「ああ、、、最近のイブキ、、、おかしかったからな、、、」
不味い、、、どこまで見れたの、、、
とにかく何とか誤魔化さないと、、、
「ごめんなさい、、、カイリに余計な心配をかけたくなかったから、、、ウソついてた、、、でも違うんだよ、、、コウヘイ、、君の相談に乗ってたの、、、バスケのことで、、、本当だよ、、、それだけ、、、」
「相談って、、、ラブホでか?」
イブキは動揺した。
「あれはコウヘイが、、、無理やり、、、」
「呼び捨てか、、、」
「あっ、、、」
「あれは無理やりじゃない、、、随分仲良さそうに手を繋いで、、、イブキから身を寄せて甘えてたじゃないか?」
蔑むような目だった。
最悪なところを見られてしまった、、、
何とか誤魔化さなければ、、、
「違うよ、、、見間違いだよ、、、本当にいきなり、、、無理やりだった、、、だから何もされてない、キスも拒んだし、、、すぐに逃げてホテルも出た、、、」
「メチャクチャだな、お前、、、適当なことばかり、、、」
「適当じゃない、、、信じられ無いかも知れないけど本当のことなんだよ!」
「しょうが無いな、、、じゃあ、これはなんだ?」
「えっ、、、なに?」
カイリはスマホを取り出した。
つづく
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