プロローグ6
賀正ユズル
大学の二年後輩だ。
彼の存在は大学でも有名だった。
高校時代からモデルをしていた。
170程の身長だったが女性とも思えるような可愛らしい顔立ちと、まるで子供のような天真爛漫な性格が評判になり、CMにも起用されていた。
女性陣に絶大な人気を誇り、今度は恋愛映画の主役にまで抜擢されたらしい。
そんなユズルに初めて声をかけられたのは大学四年の夏休みが過ぎた頃だった。
はっきり言ってナンパだった。
カレンは無視をした。
断られるとは微塵も思っていなかったユズルは興味深そうにカレンの後ろ姿を見送った。
カレンとハルはそれぞれ違う企業だが、すでに就職
も内定しほとんど大学には来ない。
受ける講義も数少なく、それ以外は用事のある時だけだ。
無視されたにも拘らずユズルはその後も大学で見かけるたびに声をかけてくるようになった。
互いに連れがいても平気で気軽に。
周りの女子大生達はキャアキャア言っていたけれどカレンは相手にしなかった。
そんなことが何度か続いたあと、カレンはガマンも限界に達して初めてまともに口をきいた。
「いい加減にして下さい、わたしには婚約者がいます、、、卒業したらすぐに結婚するんです。」
カレンが望んだことだった。
ハルは勤めて一年ぐらいして落ち着いた頃でもいいんじゃないかと言うのをカレンが押し切った。
ハルはとにかくモテる。
カレン以外には見向きもしないことは分かっているけれど、就職したら周りには今以上にハルに近づこうとする女性が増えるはずだ。
絶対に誰にもハルを渡したくない、、、
ハルのことは信じているけれど、少しでも早く籍を入れて安心したかった。
「知ってるよ、お似合いのカップルだって、、、大学一の美人と、それなりに優秀ないい男、、、有名だよ、、、」
ハルのことをバカにされた気がした。
無性に腹がたった。
「失礼な人ね、、、二度と声をかけないで、、、」
カレンはそのまま行こうとした。
「ごめんなさい、、、」
その声に思わず振り返るとユズルが悲しそうな顔をしてカレンを見ていた。
「そんなつもりじゃなかったんだ、、、俺って、、、ダメだな、、、」
再び声をかけようとしたが思いとどまり黙ってその場をあとにした。
わたしは何を言おうとしていたんだろう、、、
そう思いながら、、、
つづく
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