8.真相?
数週間前から知らない薄暗い部屋に女の人がいる夢を見ること。
ある時、イライラしてその女をゆめのなかでレイプした事。
気持ちよくてそれから毎日夢の中でレイプした事。
レイプした後目が覚めると夢精していた事。
段々と体調が悪くなってきていたけど、夢と関係があるかもしれなくても、気にしないようにしていた事。
健康診断では栄養価だけ低かったこと。
そして、、昨日いつもと違う女の人を犯したこと。
一通りの経緯を説明した。藤さんの表情からは嫌悪感も何も分からなかった。
ぼくは続けて、不安に思っている事と考察した事を伝えた。
あの女か、もしくは別の何かが、同じ夢を見る中で僕の体を少しづつ乗っ取ってきている事。
そして、昨日の別の女は夢ではなくて現実で、僕は本当にレイプしてしまったのではないか?
つまり、僕のしている事は夢から現実になりつつあるのではないか?
体調不良もお化けか何かに乗っ取られて来ている為ではないか?
話終えると僕は改めて怖くなっていた。
「でもさ、夢が現実になるなんてそんな事あるの?」
藤さんは少し考えた後に、真顔で言った。
予想してない問にポカンとしてる僕に藤さんは続けて言った。
「だってさ、もしもその女の子を犯したのが現実だとして、どうやってその女の子の所に行って、帰ってきたの?
現実なら女の子も抵抗するしもっと驚くんじゃない?」
それは、、そうなんだけど、、。
藤さんは不思議な事を言うのにこういう所はやたら理屈な事を言うので、そこにも驚いた。
「あとさ、もしそのいつも見てる夢の女の方が佐藤くんの体を乗っ取るとして、なんで現実で女の子をおかすの??レズって事??」
藤さんの疑問はごもっともだけど、それ以外に何が考えられるのだろう?
藤さんも散々、不思議な、、非現実的な事ばかり言っていたのに、急に現実的な話をして来るので僕はギャップに戸惑った。
「ほかに、、何が考えられるの?もう、分からないよ」
素直に僕は言った。
藤さんは、不敵な笑みを見せて、
「あくまで仮説だけど。」
と前置きをして答えた。
「まず、その夢を見せてる主は、いつも出てくる女で間違いないと思う。」
「その主をレイプしたって言ってたけど、レイプさせるように誘導してたんだと思うの。佐藤くんは中出ししたんだよね?
現実では夢精という形で精子を出てたけど、夢の中では中出しで出てたのは、佐藤くんの生気なんだと思う。」
僕は驚いたし、それが顔に出たと思う。
「少しづつ、佐藤くんの生気を吸い取ってたんだよ。レイプ、、セックスで佐藤くんが射精する度に。そう考えると色々合点が合わない?」
僕は考えた。
確かに、レイプした日から体調不良が日を追うごとに強くなり始めていた。
それは、僕の生気を抜かれ始めたから。
生気を抜かれる事で、僕の栄養も抜かれているのなら、栄養失調な状態になっている事も納得はする。
少しづつ点と点が結ばれていく。
「でも、、だとしたら、、あの女に中出しをする度に生気を抜かれてるなら、なんで昨日は別の女の子が夢に出てきたの?
生気を抜くのが目的ならいつも通りあの女の夢でいいはずだし。」
「うん、そこだよね。結論から言うと、佐藤くんの精神を衰弱させるためだと思う。」
「順を追って話すね。」
「まず、佐藤くんの生気を抜く理由は、その主が力をつけるため。夢に出るくらいしか出来ない幽霊だもん、元々はそんな影響力も無いだと思う。」
「だけど、佐藤くんが生気を抜かれて段々と体調不良になっていく反面、主はどんどん生気を吸い取って力をつけて行った。」
「そして、充分に力をつけた主は最後の仕上げをしようと考えた。それが、佐藤くんの精神を壊すこと。」
「多分昨日見た女の子は、この世のどこかに実在するんだと思う。波長が近かったんだろうね。
その女の子の夢に入り込んで、佐藤くんはいつものようにレイプした。」
「けど、いつもは中出しすれば生気を吸われるのに、今回はそれは無い。夢が最初から最後までいつもと違うし、オマケに賢者タイム?だっけ?それのお陰もあって、佐藤くんはあたかも本当に悪い事をしたかのように思った。」
藤さんは「まあ、悪いことなんだけど」と付け加えた。
「それまでは主の夢に魅せられて考えが鈍っていたのに、佐藤くんはそこで一旦正気に戻った。だから、色々考えてしまい、恐怖とか不安とか罪悪感とか負の気持ちで精神がボロボロになった。」
「力をつけた主からしたら、精神が弱ってる人間は格好の餌食だからね。弱らせたらあとは食べるだけ。どういうことかわかる?」
僕は、絶句した。
「佐藤くんの体を乗っ取ろうとしたんじゃなくて、佐藤くんを殺そうとしてるんだよ。その女の主は。」
僕は言葉が出なかった。藤さんの説明の続きを待った。
「もし力があればすぐにでも殺そうとしたんじゃないかな?だけど、力が弱いからそんな手間のかかるやり方をしたんだと思うよ。」
「あ、でも理にかなってると思う。だって、その主をレイプっていう憎しみや恐怖、利己的な快楽という感情の方法を使ったんだから、尚更力は強くなると思うし。」
「てことで、ここまでで質問ある?」
一通り説明をした藤さんは深くため息をついた。
「、、、。昨日の女の子は、、夢って事でいいのかな。現実って事はなさそうなの?」
「うん。でも、その女の子も夢とはいえ自分の夢だから、佐藤くんにレイプされた夢を見てたと思うよ。」
「、、、そっか。」
不幸中の幸いだ。1番心配していた現実でレイプをした訳では無いということなら、、、。
僕は安心していた。それを見越した藤さんは付け加えた。
「安心するのはまだ早いよ。その主は恐ろしいくらい力をつけてる。もしかしたら、今日にも佐藤くんを殺しにくるかも」
「え、、でも、さっき藤さんが払ってくれたんじゃないの?」
「言ったでしょ?あれは応急処置だよ。」
僕はドキッとした。背筋が凍る。
「なりを潜めて入るけど、まだ佐藤くんの中に取り憑いてる。なりを潜めてるのに禍々しいよ邪気が。」
「そんな、、、」
ホッとしたのも束の間に、今度は新たな問題が起こる。力をつけた女、、、主は、いよいよ僕を殺しにくる。
「どうしたらいいの?」
藤さんは少し困った様に言う。
「私にはさっきのビンタが精一杯だよ。」
「そんな、、、」
僕は絶望した。
「ねぇ佐藤くん、その主に心当たりないの?」
僕は思い出したけど見当がつかなかった。それでも、過去、大学時代に心霊スポットをまわった事などを話した。
「んー、、、それだけだとちょっと分からないね。」
藤さんはだいぶ考えるように眉間にシワを寄せた。
何やら自問自答している様だった。
が、首を横に振って、口を開いた。
「あのね、私がよくお世話になってた師匠みたいな有名な霊能力者さんがいて、佐藤くんと合流する前に電話してみたの。」
「え、、そしたら?」
「今海外にいるらしくて、あと二週間は日本に帰ってこないみたいで、、、代わりに、近くの有能な神社の神主さんを紹介してもらったから、今から行かない?」
「えっと、、お祓いしてもらうってこと?」
「うん。でも、正直上手くいくかは分からないよ?」
「、、、。」
僕は少し考えた。いや、考える必要も無い。
「行くよ。そこ教えてくれる?」
僕がそういうと、藤さんは少し不安そうな反面、決意をさしたように答えた。
「うん。私も行く。」
※元投稿はこちら >>