翌日の仕事帰り、凪は里見美晴と二人で食事をした。
高校時代の一年先輩。
学校一の美人で皆に慕われていた。
いかにもお嬢様という外見なのに、さっぱりとした性格で何事も思ったことをハッキリと口にする。
それでいて心の中はあたたかくて、すごく思い遣りのある人だった。
凪はそんな美晴にすぐに恋に落ちた。
成績もトップだった美晴はずっと生徒会の役員をしていた。
少しでもそばにいたくて凪は生徒会に所属することにした。
でも叶わぬ恋だということは分かっていた。
自分とはつり合うはずもない学校中のアイドル、、、
陰から見つめ、出来る限り支えになろうと努力することしか自分にはなかった。
高校時代の話に花が咲いた。
益々女性として魅力を増した美晴に懐かしい思いが込み上げてくる。
二人は七年の隔たりを忘れたように打ち解けていった。
アルコールも進み、程よい酔いを感じながら美晴が興味深そうに尋ねてきた。
「このあいだ地元に戻ったとき、凪くんが同棲していて、結婚間近だと聞いていたけど、、、昨日、何か言っていたよね?」
聞かれていたんだ、、、
南とのことも知っていたんだ、、、
「別れたんです、、、俺達、、、」
「そうなの、、、よかったら、、、話を聞かせてくれない?」
「でも、、、美晴さんにそんな話、、、」
「ううん、聞きたいの、、、凪くん、辛そうだし、、、ひとりで抱えていると、余計に辛いこともあると思う、、、
嫌なら無理にとは言わないけど、、、わたし、凪くんのことは何でも知っていたい、、、」
美晴の真摯な瞳、、、
美晴はやっぱり優しい、、、
俺のことなんかを気遣ってくれる、、、
凪は語り始めた。
全てを話したとき、胸の内でつかえていたものがスッキリとした気がした。
「酷いね、、、その南って彼女、、、人の心をなんだと思っているの、、、赦せない、、、」
美晴にしては珍しいぐらい怒りを露わにしている。
これほどまでに怒っている美晴を見たことがない。
「二股かけておいて、、、しかもバレたら未練タラタラのわけの分らない言い訳をして、、、別れて良かったと思う、、、きっと同じこと繰り返すよ、そんなオンナ、、、」
相変わらず手厳しい、、、
でもそんな美晴が昔から俺にとっては心地よかった。
「俺に見る目がなかったんです、、、五年も付き合っていたのに、、、」
「そんなことない、、、騙すより騙される方がずっと、、、凪くんらしい、、、あっ、ゴメン、、、」
「いいんです、、、」
「あ~ん、もう、わたしったら、、、本当にゴメン、、、わたしは凪くんが変わってなくて嬉しかったの、、、それだけだからね、、、」
「分かってます、、、美晴さんもあの頃と変わってないから、、、」
「そう、、かな?」
「はい、、、でも、あの頃よりもっとキレイになったけど、、、」
「そう?お世辞言っても何も出ないよ、、、」
それでも美晴は嬉しそうに微笑んでくれた。
「分かってます、、、そんなところも変わってないし、、、」
「何よ、それ、、、ひょっとして、、バカにしてる?それにしても、、、凪くんもお世辞言うようになったんだね、、、」
「俺は、、、美晴さんには、、、お世辞なんて言いません、、、本当のことしか、、、昔からずっと、、、」
「うん、、、それは、、知ってるよ、、、」
なぜか美晴の顔が赤らんでいる。
「どうか、、しました?」
「何でもない、、、凪くん、飲も、、、」
その後は会話もまた弾んだ。
今勤めている会社や近況を話し、二人は連絡先を交換してその日は別れた。
つづく
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