「どう、、、いうこと、、、」
「女が男の上司に恋人のことで相談する時は、下心があるということ、、、」
「何を、、、言ってるの、、、」
「彼氏とうまくいってなくて寂しいなんて言われたら、男だって誘われてると思っちゃうよね、、、違う?」
「そんなつもりじゃなかった、、、わたしはただ、、、」
「それだったら女性に相談したら良かったじゃない、、、いくらでもいるでしょう、そんな相手ぐらい、、、」
「それは、、、」
「それをわざわざ男の上司に、、、どうせ前から素敵だなとか、いいなと思ってたんでしょう?凪くんときっと結婚出来るから、、、その男と少しぐらい遊んでもと思っていたんじゃない?」
「違う、、、そんなこと、、、」
声にまるで力が無い。
そういうことだったのか、、、
それにしても美晴の追求は鋭い、、、
高校時代のようにというか、、、完全復活というか、パワーアップすら感じてしまう。
「だから確信犯と言ったの、、、それに南さん、、、あなた、まだその人と逢ってるでしょう?」
「どうしたらいいかって相談したら、、、凪がいなくなって寂しくて、、、そしたら、、、慰めてくれるって言われて、つい、、、」
「またシタの、、、最悪だね、、、凪くんにすまないって言いながら相手とセックスし続けてるなんて、、、もうその男と付き合っちゃえば、、、」
「だって、、、彼は結婚して子供もいるし、、、」
「はあ、、、本当に呆れる、、、あなた、そんなことしてたら、、、いつか周りに知られちゃうよ、、、」
「もう、、バレた、、、みんな噂してる、、、」
「それはそれは、、、針の筵で会社にも行けなくて、それで家にいるんだ、、、」
「だからもう、、、わたしには凪しかいないの、、、彼とは別れる、会社だって辞める、、、凪とやり直したい、、、」
呆れかえってものが言えない、、、
コイツのアタマの中はいったいどうなってるんだ、、、
俺はこんな女を好きになって一緒に暮らしていたのか?
「もう話してもムダね、、、あなたは自分が幸せになることしか考えていない、、、」
「そんなことない!」
「あなたのしてきたこと、良く考えてみて、、、寂しくなる度に気になる男とそんなことするの?どうしてそれで凪くんが幸せになれるの?」
「そんなこと本当は分かってるわ、、、最低で取り返しのつかないことをしていたことぐらい、、、」
涙が頬を伝っていた。
嗚咽を漏らしながら泣き始める。
二人は黙って見つめていた。
「凪、ごめんなさい、、、わたしまだ凪にすがろうとしてた、、、もうジャマしないから、、、わたし、出かけてるね、、、」
涙を拭い部屋を出ていく。
「大丈夫かな、、、アイツ、、、」
「凪くんは甘すぎるよ、、、あの人は凪くんが考えてるよりずっと強い人だよ、、、それに、したたかで、、、さあ、早く済ませましょう、、、」
荷物を積み込み二人は車に乗り込む。
鍵はドアの郵便受けに入れて置いた。
「美晴さん、今日は色々ありがとう、、、本当に助かりました、、、あとは自分でやりますから、送って行きますね、、、」
「嫌よ、、、最後まで手伝う、、、まだ帰らない、、、」
こうなったら美晴は梃子でも動かない、、、
それに、、、俺だって、、、まだ一緒にいたい、、、
「凪くん、一昨日のことだけど、、、」
美晴が彼氏と逢っていた日だ、、、
「あの日、、、わたしの両親が上京してきて、日頃からお世話になってる人と逢うから、一緒にと言われたの。ぜひ娘さんにも逢いたいと言われたからって、、、美味しいと評判の一流ホテルで食事をするから、オシャレをして来てくれって、、、」
そうして行ってみると、そこにはそこには上品そうなご夫婦とその息子さんがいた。
食事をしながら話しているうちに、美晴はこれはただの食事会ではなくてお見合いだということに気がついた。
美晴は前もって何も教えてくれなかった両親に腹を立てたが、それをその場でうったえることはさすがに出来なかった。
相手は大きな病院を経営する両親とそこに勤める医者である息子だった。
勝手に用意された見合い写真を見て息子が美晴を見初め、ぜひにと頼み込んできたらしい。
男は30前で外見もそれなりだったが、いかに自分が優秀で欠点の無い人間かということを自慢げに十々と話してきた。
しかも相手の両親もそれを諌めるどころか、一緒になって頷き後押しをしてくる始末。
そして二人きりでこの辺りを散歩して来てはと勧められ、従わざるを得ない雰囲気にされてしまった。
男は二人きりになると美晴の外見を臆面もなく褒め続け、その肢体にイヤらしい視線を注がせながら、しきりに以前の異性関係を聞き出そうとしてきた。
その質問には一切答えなかった。
ハッキリ言って何もかも美晴が受け付けたくないタイプそのものの男だった。
それにそれ以前から美晴の気持ちはかたまってい
た。
ホテルに戻り皆と合流すると男は自信満々にこれからも交際を続けて、行く行くはぜひ結婚したいとみんなに告げた。
しかし美晴はそれに対して全員の前でハッキリと宣言をした。
「お断りします。わたしにはもう心に決めた人がいます。その人以外の男性とは一生結婚するつもりはありません。それにその人とはもう一緒に暮らしています。申し訳ございませんが、この話はキッパリとお断りさせていただきます。」
美晴の言葉に相手方は怒って帰ってしまった。
美晴の両親は意外にも怒ることはなかった。
それよりも、どうしてそんな相手がいるのなら教えてくれなかったんだと責められたそうだ。
両親は美晴が元彼と別れてからフリーだと思っていたらしい。
それに対しては逆に美晴の方が怒った。
そんなこと聞かれもしないのに勝手に騙してお見合いをさせてと。
それに対しては両親もハッキリと謝ってくれたそうだ。
前もって美晴に言えば断ると分かっていたし、相手のことももっとしっかりとした男だと思っていたようだ。
あんな自慢タラタラで自信過剰のナルシストだとは両親を含めて思いもしなかった。
だから美晴は気にしなくてもいい。
それよりも美晴の選んだ人に逢ってみたい。
お前のことだから間違いないだろう、早いうちに一度連れて来なさいと言われたそうだ。
「そうだったんですか、、、、」
「本当のことだからね、、、でも二人で歩いてるところを凪くんが偶然見ていたなんて、、、凪くんはそんなふうに考えちゃうよね、、、」
そう、俺はてっきり、、、それに、、、
「それで俺を断るダシに使ったわけですか?」
「やっぱり、、、そう思っちゃうんだ、、、凪くんは分かってないよ、、、わたしは好きじゃない人と一緒に暮らしたりしない、、、」
それは友達としてでしょう?
その言葉を凪は飲み込んだ。
つづく
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