帰ったのは夜の10時を過ぎていた。
美晴はすでに帰宅していた。
「凪くん、おかえり、、、遅かったのね、、、」
微笑む美晴の顔が艶めいて見えた。
やっぱり、、、あの男と、、、美晴は満たされて、、、
悔しいけど、、、一段とキレイだ、、、
「すいません、、、遅くなって、、、」
「いいの、わたしだって出かけてたんだし、、、でも意外に早く帰れたんだよ、、、だから凪くんのこと待ってたんだ、、、」
ウソだ、、、そんなの、、、
「食事でもしてきたの?ああ、、もしかしてデートでもしてきた?」
「はい、、、」
「えっ、、、またまた、、、ウソだよね?」
「ウソじゃありません、、、」
「そ、そんな、、、冗談、、でしょう?」
「本当です、、、」
「どうして、、、そんな、、、」
自分だってシテたくせに、、、
どうしてそんなに動揺してるんだ、、、
面倒を見ていた弟が知らないうちに恋人をつくったような気持ちなんだろうか、、、
今にも泣き出しそうなその表情、、、
初めて見た、、、
胸が締め付けられる、、、この想いは、、、
だめだ、、、ミユとあんなにシタのに、、、
欲しいのはやっぱり美晴だ、、、
だから、、、これ以上は一緒に暮らせない、、、
「俺、明日部屋を決めて来ます、、、出て行きます、、、」
「そんな、、、いきなり、、、どうして、、、もっと話し合いましょう、、、ねっ、お願いだから、、、」
「やめましょう、話しても俺の気持ちは変わりません、、、それに俺、クタクタなんです、、、」
そう、、、心が、、、
それに今話をしたら美晴さんへの想いが溢れてしまう、、、
「そう、、、分かった、、、ごめんなさい、、、無理を言って、、、」
「おやすみなさい、、、美晴さん、、、」
「おやすみ、、、」
力のない、かすれるような声だった。
凪は部屋に入った。
この部屋で寝るのも最後だ。
いろんなことがあった、、、
美晴の仕草やその色気に負けて何度も自分を慰めた。
笑ったり怒ったり、、、美晴の全てが愛おしかった、、、
寂しくなるな、、、
南のときなど比べものにならない、、、
明日は部屋を決めてホテルに泊まろう、、、
なあに多少不便でも構わない、、、
今日は男の欲望に負けてしまったけれど、、、
焦らずゆっくりミユとの関係を育てていこう、、、
そのときノックの音がした。
「凪くん、、、もう寝た?わたし、、、やっぱり、こんなのイヤだよ、、、わたし、話したいことがあるの、、、」
話って、、、あの男のことだよな、、、
二人のことを認めて欲しいとか、、、
そんなの聞きたくもない、、、
凪は眠ったフリをした。
朝早く起きて荷物をまとめた。
そして部屋を出る。
美晴が朝食を作って待っていた。
目が赤い、、、
まさか、、、泣いていたのか?
そんなはずはない、、、
俺がいなくなれば、あの男と自由に逢える。
一緒に暮らすことだって、、、
心の中ではそう思っていたはずだ。
「おはよう、、、」
「おはようございます、、、」
「朝ご飯、食べるでしょう?」
「そんな、、、よかったのに、、、」
「だって、、、えっ、なに、、、その荷物、、、」
「出て行きます、、、今まで本当にお世話になりました、、、落ち着いたらあらためてお礼にくるつもりです、、、」
「そんな、、、もう帰ってこないの?」
「はい、、、今日中に部屋を決めて、できれば以前住んでいた部屋にある荷物を明日にでも運んでしまいたいんです、、、明日は平日だし、あいつのいない間に終わらせてしまうつもりです、、、長い間放ったらかしにしてたから一気に全部片づけようと思って、、、俺、美晴さんに甘え過ぎていました、、、本当にすいませんでした。」
「そんな、、、いくら彼女ができたからって、、、わたしがそんなに邪魔なの?」
「それは美晴さんの方でしょう?」
「えっ、なに、、何を言ってるの?」
また動揺してる、、、
別に隠さなくてもいいのに、、、
浮気じゃないんだから、、、
気にしなくてもいいのに、、、
俺なんか、、、
不意に涙が込み上げてくる。
絶対に美晴には見られたくない、、、
「今まで本当にありがとう、、、すごく嬉しかった、一生忘れません、、、さようなら、、、」
「イヤだよ凪くん、、、そんなこと言わないで、、、わたし、なんでもするから、、、」
凪は振り返ることなく部屋を出た。
だから美晴が泣いていることにも気づかなかった。
「凪くん、、、どうして、、、」
涙が溢れる。
追いかけたかった。
でも凪には恋人が、、、
二人を引き裂く権利なんかわたしにはない、、、
たった一日で、どうしてこんなになってしまったの?
何が起こったの、、、
昨日わたしが出かけなければ、、、
あっ、、、まさか、、、
わたしが、、、あの人といるところを凪が見てしまった、、、とか、、、
それは美晴さんの方でしょう
凪の言葉、、、そうだ、きっと、、、
違うよ凪、、、凪は間違えてる、、、
わたしは凪のそばにいれる、、、
もう凪の恋人とも関係ない、、、わたしの気持ちをぶつけるだけ、、、
もう二度と後悔はしたくない。
つづく
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