平日のお昼どき、明里は海人と逢っていた。
千里が学校を休んで三日目になる。
食事以外は部屋に籠もって出てこない。
明里は海人と密かに連絡を取った。
そして、この日は午前中の用事で学校を休むという海人と逢う段取りをなんとかつけた。
今回の件は全て千里が悪い。
決して赦されることではない。
これがもし自分の息子のことだったら、こんなオンナは二度と近づけない。
しかし、、、母親として娘のために出来ることはしてやりたかった。
娘はすごく後悔している。
取り返しのつかないことをしてしまったけれど、心から反省しているから二度と過ちを犯すことはないと思う。
今でも海人のことを想い続けている。
自分も母親として出来ることなら何でも協力は惜しまない。
なんとかやり直すことは出来ないだろうか、、、
しかし結局、海人がそれを受け入れることは無かった。
やり直せたとしても、お互いに心のどこかにわだかまりは残ってしまうと思う。
千里はこれからずっと引け目を感じながら自分に接することになってしまう。
それでは千里は本当の幸せにはなれない。
この事を知らない男性と付き合った方が千里も心置きなく幸せになれると思う。
そうハッキリと言われてしまった。
まさにその通りだ。
正直、わたしも母親として心の奥にそんな考えがあった。
そして何より海人の千里に対する想いに踏ん切りがついていることを明里は感じ取っていた。
それもしょうが無いことだ、、、
あんな仕打ちをされたのだから、、、
カフェを出て、別れを告げて後ろ姿を見送る。
初めて会ったときよりもずっと逞しくなった。
明里はずっと男の子が欲しいと思っていた。
それが叶うことは無かったけれど、海人を見たとき、こんな息子が欲しかったと思ってしまった。
外見も性格もすべてが自分が想像の中で描いていた息子そのものだった。
ハッキリ言うと、好みのタイプそのものだった。
娘との交際が始まって、いずれ千里と結婚して本当の息子になる日がくる、、、そんなことを夢見ていたのに、、、
もうこうして逢うことも無いだろう、、、
切ない気持ちが込み上げ、胸が苦しいぐらいに締め付けられる。
明里は海人を追って駆け出した。
つづく
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