「海人くん、今まで見たことが無いほど落ち込んでいたぞ、、、」
海人は両親のお気に入りだった。
礼儀正しくて、穏やかで、、、優しくて、背伸びをしない真っ直ぐな性格で、、、顔も頭も良いし運動神経も、、、
一人娘しかいない両親はまるで息子のように思っていたはずだ。
そんな彼と付き合うことになったとき、母は飛び跳ねるぐらいわたしと一緒に歓んでくれた。
「絶対に離しちゃだめよ、、、彼はきっとあなたを幸せにしてくれる、、、お母さんには分かるの、、、」
それなのに、、、わたしは、、、
「一体何があったの?千里、、、」
もう正直に話すしかない、、、
「わたしが浮気したの、、、」
「浮気って、、、何を?」
「あなたは黙っていて、、、千里、無理やりされたの?一度きりなんでしょう?」
父の顔色が変わる。
「無理やりじゃない、、、」
「えっ、、、それじゃ、、、」
「一度じゃない、、、何度も、、、わたし、、、」
「まさか、、、昨日、泊まったのも、、、」
「その人と、、、お泊りしてた、、、」
「どうして、そんなこと、、、相手は誰なの?」
「浜中くん、、、」
「浜中って、、、あの同じクラスの、、、体の大きい、バスケ部とかの?」
「そう、、、」
「どうして、、、その人が好きになったの?」
「違う、、、本当に好きなのは海人だけ、、、ずっと海人だけ、、、」
「それならどうして、、、その人に何か脅されていたの?」
「違う、、、その、、、何となく、、離れられなくて、、、」
「意味が分からないわ、正直に言いなさい、、、それじゃ解決出来ないでしょう、、、」
「カラダが、、、その人のセックスが忘れられなくて、、、わたし、酷いことしてた、、、」
「バカモノ!」
父が激怒した。
「お前はそんなことで海人くんを裏切っていたのか!」
「あなた!」
千里は泣いていた。
明里は優しく娘の背中を撫でた。
「海人くんじゃ、、、その、、、満足出来なかったということ?」
「違う、、、海人はいつも優しくしてくれて、、、わたしのこと大切に、、、いっぱい気持ちよくしてくれて、、、
満足してた、、、浜中くんは強引で荒々しくて、、、でも、、、それもよくて、、、いつか別れようと思ってたの、、、悪いことだと分かっていたし、、、海人だけにしないといけないって、、、でも海人に知られてしまって、、、わたしが悪いの、、、酷いことしてたから、、、でも海人が好き、、、別れたくない、、、」
大粒の涙が零れる、、、
「分かったわ、、、でも最初からもう一度話して、、、それからよく考えましょう、、、」
千里は全てを話した。
千里は翌日から学校を休んだ。
海人に逢ってもう一度謝りたかった。
でもそれは両親に止められた。
今、いくら謝っても余計に海人を傷つけるだけ。
期間を置いた方がいいと。
それに本当は怖かった。
海人に拒絶されるのが。
口もきいてくれないかも知れない、、、
それに、、、学校で噂でもひろまっていたら、、、
浮気オンナ、淫乱、ビッチ、、、
怖い、、、
今まで何かがあると必ず海人が守ってくれた。
だからいつもわたしは安心していられた、、、
それなのに、その彼を裏切ってしまった、、、
それに比べ剛志は、、、
空気が読めなくて、ガサツで、、、クラスメイトでも嫌っている人が多い、、、
いざというときはまるで頼りにならない、、、
あれから当然海人からの連絡は何もない。
メールも電話もブロックされてる。
友達からもなんの連絡もない、、、
どうして?怖い、、、クラスはどうなってるんだろう、、、
剛志からは何度も連絡が入ってきた。
全てスルーした。
そしてブロックした。
あの人とはもう逢いたくない。
一週間学校を休んだ。
そして決心した。
髪をバッサリと切る。
男子みたいに。
メガネをかけてメイクもしない。
他の男子が声をかけてきても学校の用事以外は話をしない。
もちろん浜中とは口もきかない。
わたしは生まれ変わる。
そして海人が赦してくれるのを待つ。
口先だけの謝罪だけじゃなく、これからの自分の行いでそれを示す。
何年かかったとしても、、、
両親にその決意を伝えると、二人は千里の決めたことを尊重する、自分の幸せを一番に考えなさいと言ってくれた。
涙が零れそうになった。
でもわたしはもう泣かない。
強くなるんだ、、、
海人のそばに戻れるまで二度と泣かない。
つづく
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