翌日、千里と逢わないように早めに家を出た。
教室へ着くと暫くして千里が入って来た。
青白い顔をして真っ直ぐこちらへ来る。
「海人、おはよう、、、」
皆が見てる。
「ああ、、、おはよう、、、」一応、返事だけはしておく。
「どうして、、、電話に出てくれないの?」
「話したくないから、、、」
海人のつれない態度にショックを受けたのか、千里は自分の席に戻って行った。
千里は何を考えてるんだろう、、、
次の日になれば俺はいつも通りにと、簡単に考えてるのか?
電話も受けてもらえなかったのに、、、
どうせ海人はわたしに夢中なんだからと戻ってくると高をくくってるのか?
そして昼休み再び千里がやって来た。
「ヘヘッ、、、今日もお弁当作って来ちゃった、、、一緒に食べよ、、、」
こいつ、何をヘラヘラしてるんだ、、、
「浜中と食えよ、、、」
そう言って海人は自前の弁当を手に教室を出た。
「あ~あ、終わったな、、、」
「昨日のあれは酷かったからな、、、」
「そう、あれはやったら絶対にダメなやつ、、、」
千里の周りで皆が非難の声をあげる。
「皆やめろよ、、、千里ちゃん、大丈夫か?俺なら喜んで千里ちゃんのお弁当食べるよ、、、」
千里が上目遣いで剛志を見る。
「出たよ、呆れる、、、いつも空気読めない男、、、」
「えらそうに、、、昨日、尻尾を巻いて逃げ出したクセに、、、」
「なに!」
「なに凄んでるだよ、お前も悪いだろうが、、、そんなことも分からないのかよ?」
「うっ、、、それは、、、」
千里はいたたまれなくなって教室を出た。
海人を探そう、、、
もう一度謝ろう、、、
海人は優しいから赦してくれる、、、
お弁当二つを胸に大事に抱えて、、、
海人は一人、中庭のベンチでお弁当を食べていた。
あいつ、、、まだ心の底では悪いとは思っていない、、、口先で俺の機嫌を取ろうとしてるだけ、、、
恋人の海人にはそれが分かっていた。
「京野くん、、、一緒していいかな?」
水田がお弁当箱を持って立っていた。
「いいけど、、、」
「良かった、、、じゃあ、オジャマします、、、」
横に腰掛けお弁当を開く。
サンドイッチだった。
「美味しそうだな、、、お手製?」
「もちろん、、、ところでだけど、、、昨日は酷かったね?」
「そう、、、たよな、やっぱり、、、」
「あれはないよ、、、完全にアウト、、、にっこり見つめ合って無神経、、、」
「そう、、だよな、、、」
「あの二人、、、デキてるんじゃない?」
「まさか、、、それは無い、、、」
それは絶対に無い、、、
他の男なんて気持ち悪くて絶対にいやといつも言ってるし、、、
それに雫の件も、、、
千里に限って、、、それだけは信じる、、、
「そうだよね、、、あんな筋肉だけ男、、、単細胞だし、、、目つき悪いし、、、雰囲気よめないし、、、さすがにね、、、」
そこまで言うか、、、
でもやっぱ、アイツかなり嫌われてるな、、、
「ところで、わたしの食べない?」
「いいのか?」
「もちろん、、、はい、、、ア~ンして、、、」
「て、、、お前、からかってるのか?」
「違う、真面目、、、いいから、ちゃんとあとで説明する、、、訳があるの、とにかくア~ンで食べて、、、」
本当に訳ありそうに小声で水田が話す。
「分かった、、、うん、、、うまい、、、これ、、、」
ムシャムシャと一気に食べる。
「すごいな水田、、、最高にうまい、、、」
「たかがサンドイッチになに言ってるの?まあ、嬉しいけど、、、」
「ところで訳って?」
「さっき小野さんが見てたの、、、」
「えっ、千里が、、、どこから?」
「二階の窓から、、、もういないけど、、、」
「よく気づいたな?」
「絶対に来ると思ってたからね、、、」
「でも、どうして?」
「これで分かるでしょう、、、自分がどんなことをしたか、、、されたらどんな気持ちになるか、、、これでちゃんと反省すると思うよ、、、」
「水田、、、お前、本当にすごいな、、、」
千里の性格や気持ちなんて見通しか、、、
ひょっとして俺のことも、、、
「そんなことない、、、本当は別れて欲しいけど、、、」
「えっ、、、」
「冗談だよ、、、早く食べよ、、、それとも、もっとア~ンする?」
「いや、やめておく、、、」
「フフッ、、、残念、、、クラスのことは任せておいて、なんとかするから、、、」
水田は頭の硬いやつだと思ってたけど、、、
優しくて気のつくいいヤツだったんだな、、、
でも、、、味方のうちはいいけど、、、万が一敵に回したら、、、怖い相手だ、、、
気をつけないと、、、
ホームルームが終わった。
てっきり千里が話しかけてくると思っていたのに、いつの間にかいなくなっていた。
まさか浜中と逢っているのか?
そんなことも考えながら家に着くと母親が迎えてくれた。
「千里ちゃん、来てるわよ、、、」
部屋へ向かう、、、
まさか、、、キレてないよな?
つづく
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