夫の帰りは10時を過ぎていた。
当然のように機嫌はよくない。
美子は夕食の準備をしていたが、もう済ませたと言われてしまう。
美子は和宏がソファに座ると、いきなり膝をつき謝罪を始めた。
「あなた、本当にごめんなさい、、、わたしが間違っていました、、、あなたに酷いことをして、奈々に対しても母親失格です、、、離婚されても仕方ないと思います、、、あなたの信頼を裏切ってしまったのだから、、、
でも彼とは今日、ハッキリと別れてきました、、、もう二度と過ちは繰り返しません、、、だから最後のお願いです、、、一度だけチャンスをください、、、生まれ変わって家族に尽くします、、、」
「また、あの男と逢ってきたのか?」
「はい、、、」
「セックスしたのか?」
「、、、しました、、、」
「別れたって、、、要するに振られたんだろう?」
「、、、はい、、、最初からカラダだけだったみたいです、、、」
和宏は呆れた顔をした。
「お前、、、ヤツが本気だと思っていたのか?」
「でも、、、一目惚れでずっと好きだったとか、、、二人きりでいたいから旅行したいとか、、、ごめんなさい、、、騙されてました、、、」
「バカだな、、、どうせ旅行代だって全部お前持ちだったんだろう?」
その通りだ、、、思わず俯いてしまう、、、
「、、、はい、、、」
「第一、お前のことが本気で好きなら、夫婦のベッドでセックスするはずが無いだろう、、、そんなことも分からないのか?」
「あっ、、、、、わたし、、バカだ、、、」
「本当にそうだな、、、それにまたヤツに抱かれたということは俺よりもアイツを選んだことになる、、、」
「それは、、、だってもうアナタに離婚されると思ったから、、、」
「そうだな、、、俺もそのつもりででいた、、、でも、、、もう一度だけチャンスをやることにした、、、」
「えっ、、、本当に、、、どうして?」
「奈々のためだ、、、今、お前と離婚したら奈々が傷つく、、、自分のせいと思うかも知れない、、、」
そうかも知れない、、、
自分と母親の浮気、、、
そして一番苦しんだのは夫の和宏だ、、、
「ごめんなさい、、、」
「奈々が就職するまでだ、、、奈々が独り立ちしたとき結論を出す、、、だから奈々の前では今まで通りにやっていく、、、」
「えっ、、、どういうこと?」
「奈々に心配かけないためだ、、、あの子は今、必死に立ち直ろうとしてる、、、」
娘に母親の浮気を知らせないことにホッとする、、、
夫は娘のことを考えてくれている、、、
それなのに、、、わたしは周りを気にして気遣いはしてるけど、、、自分のばかり、、、
夫にはそれもお見通しなのだろう。
「それから、、、今夜から寝室は別にする、、、俺は書斎で寝る、、、」
要するにわたしとはセックスしないということ、、、
「それは、、、分かりました、、、わたし、本気で生まれ変わります、、、二度と家族を裏切りません、、、」
「俺はお前を信じていない、、、今日も、アイツに抱かれてくるなんて、、、本当は今すぐ離婚したい、、、」
「本当にごめんなさい、、、わたしは愚かなオンナです、、、でも、、、それでもチャンスをくれたアナタを二度と裏切ったりしません、、、本当にありがとう、、、」
こらえていた涙がボロボロと溢れてくる。
和宏は黙って書斎へと向かった。
つづく
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