翌日、思いもかけないニュースが飛び込んできた。
あの朝倉が昨夜、階段から転げ落ち、大ケガしたらしい。
手首と片足を骨折し、一ヶ月は入院するという話だった。
本人は足を踏み外したと言っているようだ。
コユキはホッとした。
これでしばらくは顔を合わせることも無い。
内心、いい気味だとも思っていた。
心配など欠片も湧いてこない。
コユキは自らの戒めのために人との係わりを極力さけ、時間があれば勉強に専念した。
ダイキに赦されたら、、、元に戻ることが出来れば、ゆくゆくはダイキと同じ大学に行きたい、、、
そんな希望をいだいて、、、
あるとき、小川ノリコに声をかけられた。
ノリコはコユキのひとつ前の席だった。
「鳴海さん、、、最近、一人で学校に来てるよね、、、何かあったの?」
ノリコは以前、ダイキに告白したことがある。
「たまたまだけど、、、用事があったから、、、」
そうごまかす、、、
この子、そんなところまで見てるるんだ、、、
まだダイキのこと、諦めてないのかも、、、
気をつけないと、、、
「ふーん、、、」
そう言うとノリコは興味を失ったように前に向き直った。
その二日後、ノリコの席に中の良い二人組がやって来て、小声で話を始めた。
勉強していたコユキは何か怪しげな雰囲気を感じ取り、聞き耳を立てていた。
「ねえ、、、どうだった?」
「それがさ、、、やっぱ、ダメだった、、、」
「そっか、、、今回はなんとなくイケそうな気がしたのにね、、、」
気付かれ無いとでも思ってるのか、チラチラとコユキを盗み見している。
もしかして、、、ノリコのヤツ、、、
またダイキにチョッカイ出してる?
「でも、わたし、絶対に諦め無い、、、夏休みずっと思ってたんだ、、、やっぱ先輩がダントツだって、、、あ~ん、もう、、、わたし、、、早く先輩に全部あげたい、、、」
「おおっ、、、すごいこと言ってるよ、、、」
「露骨〜」
やっぱりダイキのことだ、、、
でも良かった、、、断わられたみたい、、、
そう、ダイキは他のオンナになびいたりしない、、、
でも、、、今のわたしに他のオンナなんて言えるんだろうか、、、
そしてまた二日後、いつものメンバーでコソコソ話が始まった。
「どうだった?」
「ダメ、、、だった、、、」
うんうん、そうだろうね、、、
「そうか、、、残念だったね、、、」
「フフッ、、、そうでもない、、、」
「えっ、、、なになに?」
「わたし、頑張ったんだ、、、そしたら、、、友達ならおっけーだって!」
「ええっ、やったじゃん!」
えっ、、、友達、、、OK、、、どうして?
いや、友達なんて普通のことだ、、、
気にすることなんて無い、、、
でも、、、頑張ったって、、、なにしたの、、、
「それって、、、セフレ?」
「違うって、、、先輩がそんなことする訳ないじゃん、、、わたしね、正直に先輩がどんなに好きか話たんだ、、、そしたら、今まで本気だと思ってなかった、、、ゴメンて言ってくれた、、、そして友達になってくれるって、、、」
「良かったね、、、でもノリコ、それじゃ満足してないでしょう?」
「それはそうだよ、、、」
「その自慢の胸で一気に攻め落とすとか?」
「いやだ、、、露骨、、、」
「わたし、オッパイだけじゃないし、、、」
「そうだよね、、、ノリコには、落としのキスがあるもんね、、、」
「何よ、それ?」
「知らないの?あのね、、、ノリコが本気でキスした男は皆、ノリコに夢中になっちゃうんだよ、、、」
「えー、って、、、それ、本当?」
「まあね、、、とにかく、わたし、ガンバルし!」
「ノリコ、これからだね、、、」
「うん!」
全部聞こえてるんだけど、、、
でもね、、、ムリだと思うよ、、、
ノリコみたいな軽い子、ダイキの好みじゃないし、、、
わたしには分かってる、、、
二人が行ってしまったあと、ノリコが振り向いた。
意味ありげに微笑むとすぐに前に向き直った。
嫌な感じ、、、
わたし達がうまくいってないこと知ってるみたい、、、
ダイキに聞いたのかな、、、
ダイキはわたしのこと、、、どう思ってるんだろう、、、
まだ別れてないし、一応、彼女でいいんだよね、、、
中途半端な立ち位置がコユキを不安にする、、、
でも別れるよりはずっといい、、、
別れでもしたら、、、
ノリコだけじゃない、、、ミナミだって、他の女だって、、、ダイキを狙ってる、、、
でも信じるしかない、、、
自分はダイキを裏切ったくせに、、、
勝手な女だ、、、
悔やみきれない過ちを犯したわたしは罰を受け入れなければならない、、、
そしてわたしはダイキを待ち続ける、、、
つづく
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