「ずっと応援ありがとな、、、」
気づいてくれてたんだ、、、
「うん、、、」
周りが見てる、、、ハズい、、、
「これ、貸してくれ、、、」
ダイキはわたしのタオルを取った。
グリグリと顔と首すじを拭く。
その気取りの無いところが、わたしは好き、、、
「ありがとう、、、汚してゴメン、、、」
「いいんだよ、全然、、、」
「コユキ、、見てろよ、、、」
「うん!」
ダイキ、勝つ気だ、、、ガンバレ!
小川さんが呆然とわたしを見てる。
タオルからダイキの汗の匂いがする、、、
大好きな匂い、、、
なんだか皆に注目されてる、、、
でも嬉しい、、、幸せ、、、
そのとき、反対の隣りから不意に声をかけらた。
「あれが鳴海の恋人か?えらくカッコいい男だな、、、」
いつの間にか朝倉先生が立っていた。
美術部の顧問教師。
50、バツイチ、身長はコユキとほとんどかわらない。
やや中年太りで頭髪も薄い。
顔は地味めで大きく、どこにでもいるオッサンという感じ、、、
いつもやる気がなさそうにぼーっとしてる。
美術以外にはまるで興味が無くてオタクっぽい、、、
気味が悪いと言う女子生徒もいるが、わたしはそれ程でもない、、、
ある意味、オトコを感じさせないところが許せるという程度だけど、、、
そんな先生がわざわざなんでこんな場所に、、、
気にはなったがゲームが再開されるとダイキの応援に集中した。
一進一退の攻防が続く。
一点リードされて最後のワンプレイ。
もう時間ない。
ダイキが徹底的にマークされる。
ワンショットで逆転だ。
ダイキは仕方なくパスをだし、中に切れ込んていく。
ガードが厳しい、、、
これでは無理とゾーンから離れる。
もうダメかと思ったとき、ダイキにパスが渡った。
離れた位置にいたためマークが遅れる。
「ダイキ、うて!」
他のメンバーが叫ぶ。
ダイキは更に一歩下がりながらショットを放った。
きれいな放物線を描きながらボールが飛んでいく。
入れ!
コユキは叫んでいた。
ボールはリングにぶつかり上に跳ね上がる。
ああっ、ダメか、、、
しかしボールは見事にリングに吸い込まれていった。
起死回生のスリーポイント。
ゲーム終了の笛が鳴る。
割れるような歓声、、、
勝利の雄叫びをあげるチームメイトたち、、、
けれどダイキは静かに佇んでいた。
歓びを爆発させた仲間たちがダイキに次から次へと抱きついてくる。
マリアや他の女子生徒まで、、、
ダイキは照れたように微笑んではいたが歓びを爆発させることはなかった。
そして自ら歓喜の輪から離れると、相手チームの元へと向かっていた。
肩を叩き合いお互いの健闘を讃え合う。
そんなふうに見えた。
いつの間にかコユキは泣いていた、、、
涙が頬を伝う。
ダイキって、スゴイよ、、、
こんな彼氏、どこにもいないよ、、、
それに比べたら、、、わたしなんか、、、
そんなわたしに気づいたダイキが飛んでくる。
「どうした?コユキ、、、」
心配そうに覗き込んでくる。
さっきまでとはうって変わってオロオロしてる、、、
わたしはこんなに愛されてる、、、
「さっきの女の子たちのことか?ゴメン、、、払い除けるわけにもいかなくて、、、」
わたしは思いきりダイキに抱きつきたかった。
でも、皆が見てる、、、
「違うよ、、、わたしはダイキが好きなだけ、、、おめでとうダイキ、、、ありがとう、、、」
「そっか、、、俺も好きだよ、コユキ、ありがとう、、、」
ダイキもコユキのアタマを撫でようとして思いとどまる。
ここではだめだ、、、
「後でな、、、」
「うん!」
ダイキがタオルで涙を拭ってくれる。
そのとき、マリアが射抜くような視線でコユキを見つめているのに気づいた。
なんだか怖い、、、
マリアがこんな目つきで人を見るなんて、、、
やっぱりマリアはダイキのことを、、、
つづく
※元投稿はこちら >>