この家に来て4日目。
父はもう新しき職場へと出掛けて行った。母といても家は退屈で、暑い中を僕は自転車で出て行きます。
走り初めますが、もう近所の辺りは探検済みで、今日はもう少しだけ遠出をしてみます。
10分くらい走ったでしょうか。僕は何にもない、田舎道へと入って行きますが、そこで自転車を止めました。
整備のされてない遊歩道が見えたのです。自転車を降り、テクテクと歩き出すと、そこに見えたのは寂れた小さな公園。
少しだけ遊具がありますが、子供たちの遊ぶ姿はありません。
(つまんない、帰ろう。)、そう思った時、人影が動くのが見えました。
夏なので草木が生い茂り、誰も居ない薄暗い公園は恐さを感じます。
ベンチから立ち上がったのは、40代くらいの女性だった。気がつかなかったが、そこに居たらしい。
『ああ、こんにちわ~。』、彼女は僕を見掛けると優しく挨拶をしてきました。
『こんにちわ~。』と返すと、彼女は歩き始め、僕の横を通り過ぎて行きます。
(エロいお姉さん!!)
分からなかった。コンビニの制服じゃなかったから、私服だったから、分からなかった。
誰も居なくなり、帰ろうとすると、急に吹き始める突然の突風。
僕は身体を屈めながら、その風が通り過ぎるのを待ちます。
それは一瞬のことで、風がやんだ僕はまだ揺れている大きな木を見上げていました。
(な、なんだろう…。知ってる、この大きな木。この木だけじゃない、この公園も、今の強風も知っている…。なんで?)
さ迷うように歩く僕は、いつの間にかおばさんの座っていたベンチまで来ていました。
それはとても古くて、いろんなところが割れ、ペンキなどほとんど残っていません。素地です。
子供の落書きも多くて、もう自由帳のようになっています。
そんなベンチに新しい、書いたばかりと思われる文字を見つけました。
『翔太、いつまでも待っています。』
普通の人なら、見過ごしてしまうでしょう。しかし、この僕にはそれは無理でした。
だって、僕は翔太だから…。
14年間も止まっていた時間が、いま動き始めていました。あの風は、それを告げていたのかも知れません。
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