下町に面した駅前の再開発プロジェクトが進んでいた。
当然、駅前商店街の店主たちの反対が起こった。何代も前から続く土地と商いを奪われてたるものかと、憤慨する住人たちとの話し合いは数回に渡って行われた。
様変わりする街、商業ビル化することに恐れを成すのは当然なのだ。
空が遠くなるデメリットよりも、綺麗になりビルの1階はこれまで通りの商店街が存続する。
ビルの2階から5階は商業施設、そこから上はオフィス、棲み分けがきちんとなされることでようやく話が進んだのだった。
実は半世紀前にこのエリアを我が社が開発していた。
当時の社長は会長になり、そのころの資料が資料室に保管されていたことが役に立ったのだ。
今どき紙のままで……という思いもあるが、昔気質の会長の強い信念が息づく会社である。
さらなる資料が必要とあって、資料漁りをしなければならなくなった。
誰かがしなければならないが、部下たちはそれぞれ手持ちの仕事がある。
中断させてやらせることもできたが、仕事が圧迫されるとどこかで必ずミスが起こる。
それならばと冴子は自分が行くことにした。
1人ではさすがに効率が悪い。冴子は入社1年目の男性社員を連れていった。
彼はまだ戦力には程遠く、小さなことでも何かと貢献できればそれでいい。
資料室の灯りをつける。空調は整っているから湿度は問題ないが、どことなく埃っぽい。
気を取り直して、立て掛けてあった脚立を持ち出す。
広げて横の安全ストッパーを留めようとしたら、片方が壊れていた。
急遽資料が必要になった経緯から予定外の作業だったのだ。冴子はミニのタイトスカートで出社してしまったので、彼に上がってもらおうと考えていたのだ。
冴子 赤星さん、慎重に登れる?
新入社員:赤星 はい…僕の体重で大丈夫かな……
軋む脚立を片足づつ、ゆっくりと上がっていく。
最後の一段に足がかかったとき、唯一片方だけ機能していたストッパーが悲鳴をあげた。
冴子 ちょっとストップ……動かないでじっとしてて……………いいわ、慎重に降りてきて…
新入社員:赤星 役に立たなくて、すみません…
冴子 あなたのせいじゃないでしょ?……参ったわね……今から外に調達するにしてもねぇ………
あたしなら平気かな……ねぇ、赤星さん、下で抑えられる?
新入社員:赤星 えっ…大丈夫何ですか?
冴子 だから、あなたがしっかり抑えるの!
…………あのね………………見ないでね…
新入社員:赤星 えっ?……………あっ!…はいっ!
ひとつ溜息をついて、身軽な冴子がヒールを脱いで、脚立に足をかけた。
ズリっと脚を広げようとする脚立を、赤星が抑える。
一度彼を振り返り、大丈夫そうだと確認して冴子はまた一段を上がる。
俯いていた赤星が顔を上げると、目の前に官能的なお尻があって慌てて下を向いた。
キュッと引き締まって形良くボリュームのある2つの山が、交互に動く残像が残ってしまった。
どうにか上まで辿り着いた冴子。
箱ごと下に下ろせるほど軽くはないので 中身を少しづつ赤星に手渡していく。
顔を上げられない赤星は伸ばした手が空を彷徨い、やっと手に触れた物を掴むという効率の悪さだった。
痺れを切らした冴子が言う。
冴子 ねぇ、赤星さん…私の手くらいは見てくれる?
新入社員:赤星 えっ…それじゃ…いえ…あっ、はい…
彼が何を言おうとしていたのかは問わず、下半身を見るなともあえて言わない。
意識させることに、わざわざ触れたくはなかった。
冴子は下を見ずに、資料の入った茶封筒を持った腕を下げる。
タイミング良く受け取ってくれることから、ちゃんと見えていることが分かる。
冴子は彼が上司のスカートの中を見る勇気はないと、思いたかった。
赤星は自分のボスの言いつけを守り、作業を忠実にこなしていた。
頭の切れる怖い上司だと、先輩に聞かされていたからだ。
スタイルが良くて綺麗な人だが、40歳だと聞かされてびっくりした。
どう見ても親戚の35歳の従姉より、若くて綺麗なのだ。
つまんないことを考えていたら、本当に無意識に視線が横に動いてしまった。
開いた股の奥に、Tバックを履くお尻がそこにはあった。
言い訳を用意して急いで上司を見たが、気づいていないようで胸をなでおろす…ドキドキした。
お尻に埋もれる白いTバック………目に焼き付いてしまった。
もう何回、茶封筒を下ろしただろう。
そう思い始めた頃、上司が降りると言う。
やっと終わりだ、粗相がなくて良かった…
そう思った時だった。
ついに生きていたストッパーが外れるカチャンッ!という音とともに、脚立が自分に向かって開こうとしていた。
冴子 あっ!……きゃっ!!
赤星は渾身の力で踏ん張った。
冴子 抑えててよ!…ねぇ……抑えてて!
動揺する冴子が動き、更に開こうとする脚立。
赤星 動かないで!……そのまま…そのままです!
赤星は考えた。彼女が動けば脚立は崩壊する。
でもいつまでも耐えられはしないし、人を呼びに行けるわけもない……どうする……
咄嗟に赤星は冴子の股に頭を潜らせ、肩車をして持ち上げた。
首を挟むストッキングに包まれた柔肌の心地よさを、感じる余裕はない。
上司を下に下ろすにはしゃがみ込むか、カニ歩きで横に移動しなければならない。
それが冴子の体重が脚立に乗って自分の脚に食い込み、どうにもならないのだ。
どうするか……この状況でこれしか方法は思いつかなかった。
新入社員:赤星 あの、動けません……そのまま反転して僕を伝って降りて下さい…
冴子 えっ…怖い…何言ってるのよ!
新入社員:赤星 早く……足が折れる前に………
苦しげな彼の声で尋常ではないことが、冴子に伝わった。
恐怖を取り払えば羞恥、そして怒りだが、そんな場合ではない。
脚立から手を離して彼の頭を抱え、彼の頭を軸に少しづつ回る。
肩を回るときに片膝を下ろし、もう片膝を上げて乗せなければならない。
それができたら彼の頭を抱えて、しがみつくことしか冴子にはできない。
彼がいくらか状態を後に反らしてくれたから、彼の口に股間が密着して怒りが湧いた。
でもすぐに降りやすいように気を使ってくれたのだと分かる。
彼の肩から片方づつ膝を下ろし、抱きつく格好で床に足をつけることができた。
ジャケットのボタンは弾け飛んでスカートは腰の上まで捲り上がっていたが、どうでもよかった。
彼の両スネが、あらぬ方向に折れていた………。
会社の図らいて彼は個室に入院した。
冴子が会社に掛け合ったから。
彼は手術のために1ヶ月半を入院生活に費やし、遠方の田舎の親には心配をかけるからと、知らせなかった。
その間、冴子は密かに毎日病院に通った。
冴子 今日はどう?
新入社員:赤星 あの、こんなに毎日いらっしゃらなくても……もうじゅうぶんですから……
冴子 そうはいかないわよ……責任を感じてるわ
新入社員:赤星 あれは事故ですから、北見係長の責任じゃありませんよ
冴子 そうはいかないのよ…
新入社員:赤星 もう本当に、お忙しいのに……僕なんかの為にこんなご足労は……
冴子 それじゃ怪我を負わせた私の気が、済まないの……ねぇ、赤星くん……見たでしょ?
赤星はドキリとして、トボケた。
冴子 それに…どうだった?
必要最小限の言葉で、責められる。
見たでしょ?…の後の…どうだった?…は何を意味するのかは、あの場にいた2人だけが理解することだけにトボケようがない。
冴子 上司の下半身に………あたし、初めてよ………あんな恥ずかしいの……
公園での露出で見られようと、遠くから視姦されるのとはわけが違う。
時間が経ってから、猛烈に恥ずかしくなったのだ。
仕事の合間、合間に思い出すたび劣情を煽り立てる日々は、冴子にはある意味地獄だった。
冴子 あれは事故だとしてもやっぱり私にはね、責任があるの。
それに不可抗力だとしても、あんな恥ずかしい目に合わされたらね……あなたにも責任を取ってもらいます…
新入社員:赤星 理不尽だという気持ちと、さすがにあれはマズかったという気持ちはあった。
退院したら職探しか……赤星は覚悟した。
冴子 ねぇ、赤星くん………あなた、強いかしら?
妖艶な雰囲気を醸し出す上司を前に、今度はなんだろうと彼は生唾を飲み込んだ。
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