⑤ 学園からの誘い
その後、以前の取材をもとにかつて公立高校の熱血教師であった学園長が女子の更生を目的としたフリースクール的な学園を営んでいるという記事を書いたが、まぁ穴埋め記事的な内容と扱いだったため反響は全くなかったわけだが、出来上がった雑誌を校長に届けるため、学校でなく街中に出てこられる時を見計らって直接手渡しすることになっていた。
約束の時間に喫茶店で会い本を手渡すと、いきなり校長から思いもよらぬ一言をいただいた。
「君、教員免許を持っているよね。それにいろんな言葉を使えるとも聞いたことがあるよ。実はいろいろと調べさせてもらっていたんだけど、性に対しての考え方もおおらかだよね。どうかな、うちの学園で講師を引き受けてくれないかな?実を言うと先日見学してもらった時にいた文系の講師がトラブってしまってね、その代わりを捜していたんだよ。年齢もまだ30になったばかりで独り者だと聞いているし、うちのスタッフの中では最も若くはなるけど一度うちの学園を見ているからどういうものかはわかってくれているとも思ったし。」
数年前に交際していた女性はいた。当時18歳の高校生で大学進学が決まっていたのだが、仕事で失敗していた父親の自死の巻き添えをくらい帰らぬ人となっており今に至っている。心に何か傷を負った生徒たちとの生活も良いかと考えた私は面接の次の日には受諾の返事を受け、街中での生活にピリオドを打ち隣県に向かう山越えの国道から廃村になった集落に続く道へと自らの車を走らせていった。
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