八年の年月が流れた。
とある地方の総合病院。
過疎化が続くなか、医療の担い手になるべく、三年前に建設された、周囲の素朴な風景には馴染まない巨大病院。
人口は振るわない都市だが周りの市町村からも引っ切り無し患者が訪れ、賑わっている。
医者がまだまだ足りていない現状だが、やり甲斐のある現場という評判を聞きつけ、徐々にその数も増え始めている。
ユウトは二年前からこの病院に勤めていた。
アメリカの、そして国内の医局の誘いを断り、自ら望んで外科医として勤めていた。
ユウトは現場が好きだ。
やり甲斐を感じる。
出世など性に合わない。
ユウトは今の自分の現状に満足していた。
今日も仕事を終え、病院が医者のために用意したマンションへと向かう。
独身者専用だが2LDKのゆったりとした間取りで住心地も悪く無い。
優秀な人材を集めるために病院も考えている。
途中、看護師のアキナに声をかけられた。
今年24になる、派手目だが可愛らしい顔立ちの女性だ。
胸が人目を引くほど豊かでスタイルもいい。
「宍道先生、今お帰りですか?」
「うん、そうだよ、、、」
「先生、これから女子会なんですけど、、、良かったらどうですか?」
「俺が女子会って、、、まずいだろう、それは、、、」
「そんなことないですよ、、、きっとみんな歓びますから、、、」
「やめておくよ、、、オヤジがいても雰囲気壊すだけだし、、、じゃあね、、、」
「待って下さい、、、それなら二人きりで、、、」
「それはダメだよ、、、友だちとの約束は守らないと、、、」
「だって、、、わたし、先生と、、、」
聞こえないふりをして再び別れを告げ、その場を離れる。
彼女が想いをよせてくれている事は気づいている。
見た目は派手だが、思いやりがあって患者の受けもすこぶる良い。
誘われることも多いようだが、意外に身持ちは固いようだ。
それでいて、ユウトに対してはかなり積極的にアプローチしてくる。
本当に素敵女性だとは思う、、、
付き合う相手としては申し分もない、、、
ユウトだって男だ。
アキナのあのハツラツしたカラダを腕の中に抱きしめたいと思ったこともある。
ユウト好みのミッシリ実った乳房をタップリと愛撫して、あの可愛らしい唇から淫らな言葉を口走るほど責め立ててみたいと考えたこともあった。
しかし、それは出来ない、、、
ユウトの頭の中には決して離れることの無い女性がいる。
最近、なぜかとみに思い出してしまう。
あんなにいい娘を身代わりにすることなどしてはならない、、、
ユウトはひとり食事を済ませ、風呂に入り部屋でくつろいでいた。
突然来客を告げるチャイムなった。
「どなた?」
「すいません、、、わたし、今日、隣に越してきた者です、、、ご挨拶に伺いました、、、」
そういえば、明日から新しい医者が入ると言われたことを思い出す。
確か小児科の女性だったはずだ。
そうか、、、隣の部屋か、、、
ドアを開けた。
背の高めな女性だったが、いきなり深々と頭を下げきた。
「明日からお世話になります、、、宍道先生、よろしくお願いします、、、」
挨拶した女性がようやく顔をあげる。
「こちらこそ、お願い、、、えっ、、マキ、、、本宮さん?」
なんと新しい女医はマキだった、、、
「ごめんなさい、、、ビックリさせて、、、しかもおやすみのところを、、、」
久しぶりに見るマキはあいも変わらず美しかった。
伸ばした艷やかな黒髪をひとつに束ねて、首の横に垂らしている。
前髪は下ろしていて、程よいメイクが素材の良さを存分に引き出し、年を取ったことなど感じさせない。
控え目な美しさが更に加わり、これもまた程よい色気が滲み出していた。
そして、その胸、、、
以前と変わらない、、、
高さと量感を保っている。
サマーニットを誇らしげに突き上げているのも変わりがない、、、
マキの瞳がこころなしか潤んで見える。
何度も重ね合った唇から言葉が漏れる。
「突然すいませんでした、、、明日からよろしくお願いします、、、」
ジッと上目遣いに見つめてから、名残惜しそうに立ち去ろうとしたマキにユウトは声をかけた。
「待って、マ、、本宮さん、、、中で少し話していきませんか?」
「いいんですか?」
マキの瞳が輝く。
「ええ、もちろんです、、、その、、、このままだと、明日から、ちょっと、、、ギクシャクしそうで、、、それもへんかなって、、、」
「それもそうですね、、、でも本当にお邪魔してもいいんですか?」
「どうぞ、、、男の一人暮らしでダラシないですけど、、、イヤじゃなければ、、、」
「ううん、そんなことありません、、、わたし、、、ユウ、、、宍道先生の部屋、、、見てみたいです、、、」
ユウトはマキをリビングに案内した。
つづく
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