「ふーん、お弁当、、、してたんだ、、、でもわたしの方が上ね、、、」
表情は穏やかだが、言葉にはトゲがある。
「ほらユウトの言う通り、髪を黒くしたんだよ、、、」
確かに黒髪には戻っている。
だがなぜかそれが似合っていない。
「俺は別に戻せとは言ってないぞ、、、」
「そうだったかしら、、、まあいいわ、、、とにかくユウト、行くわよ、、、」
「えっ?何のことだ?」
その時初めて千夏の後ろにクルミがいることに気づく。
どうしてクルミまで?
「とぼけないで、、、区役所に決まってるでしょう?ユウトの二十歳の誕生日だよ、、、」
えっ、、、まさか、、、
「婚姻届、、、約束だよ、、、クルミには立ち会って貰う、、、」
「何を言ってるんだ、、、俺達、別れているんだぞ、、、」
まるでどうかしてる、、、
「わたしは別れたつもりは無いわ、、、この日が来るのをずっと待ってた、、、」
「どうしてこんなこと言えるんですか?あんな事しておいて、、、」
マキが思わず口を挟む。
千夏は見下した目でマキを見た。
「あなたには関係無いことよ、黙っててちょうだい、、、」
「関係あります、わたしはユウトの恋人です、、、」
「そうだよ、千夏さんこそ戯言を言うのはやめてくれ、、、」
「それはわたしは確かに少しだけ間違いを犯したわ、、、でもそれはユウトがわたしを一人にして置いたせい、、、ユウトがそばにいてくれたらあんなことにはならなかった、、、」
「それは勝手過ぎるよ、千夏さん、、、」
「千夏と呼んでと言ったでしょう?ウダウダ言うのはやめて、結婚したら、このわたしを独り占め出来るんだよ、、、わたしは貞淑ないい妻になる、約束する、、、それだけじゃ無いわ、、、うちの病院も継げるんだよ、地位も名誉もお金も手に入るんだよ、、、」
千夏は俺のことを結局は何も分かっていなかった、、、
俺の欲しかったものはそんなモノじゃない、、、
もう虚しさしか無い、、、
「俺はそんなモノ、欲しいなんて思ったことは一度もない、、、」
そんな誘惑にホイホイと乗ってくるとでも思っていたのか、千夏は動揺を見せる。
「なによ、他に何があるというの?ああ、そうなんだ、分かったわ、、、クルミを愛人にしてもいいわ、、、クルミはね、、、ユウトのこと忘れられないんだって、、、他のオトコじゃ満足出来ないんだって、、、そのかわり、わたしをどんな時でも一番に扱うこと、それは絶対よ、、、」
馬鹿げていて話にならない、、、
本気だとしたら、何の反省もしていないし、人をモノのように扱っている。
それにクルミはなぜ黙っている?
まさかその気なのか?
それならクルミもどうかしてる。
「メチャクチャだよ、千夏さん、、、話にならない、、、」
「どうして?分かったわよ、そのアバズレ女も愛人にしていいわ、、、その代わり、わたしも好きにさせて貰う、、、」
マキへの侮辱に頭が熱くなる。
それにこのオンナ、まだ浮気をするつもりか?
もう限界だ、、、
つづく
※元投稿はこちら >>