ユウトは2年に進級した。
クルミとの交際は続いていたが、千夏とは完全に距離を置いていた。
クルミもそうらしく、千夏の話は一切しなくなっていた。
そんな中、千夏が他の男と交際を始めた噂が流れてきた。
相手はアメリカからの留学生のマットという黒人だった。
クルミの3つ年上でガタイもよく、イケメンだ。
かなり優秀らしい、評判は悪かった。
日本人を見下していて、オンナ癖が悪く、取っかえ引っかえ彼女が入れ代わる。
中には二股、三股もあるらしい、、、
さすがにそれを知ったときは眉をひそめた。
よりにもよって、あんな男と、、、
けれども千夏が選んだのだ、間違いはないだろうとも思った。
あくまでも噂に過ぎない。
真実とは限らない。
ただユウトはユウトはマットに対して鼻持ちならない印象は拭いきれなかった。
千夏が金髪に髪を染めていたのも、遠くから見かけた。
正直、まるで似合わないと思った。
あの千夏が下品に見えた。
身も心もマットに捧げたというところか、、、
きっとオンナ慣れしたマットのセックスに夢中にでもなっているのだろう、、、
苦々しい思いを噛みしめながら、本人がそれでいいなら、それは千夏の自由だと考え直す。
もう完全にあの頃の千夏はどこにもいないこ
とを痛感しながら、その存在を忘れ去る決心をした。
そんな折、悲報が届いた。
マユが、、、あのマユが死んだ、、、
ユウトは通夜に出席するため実家へとんだ。
マユには何の落ち度も無かった。
典型的なもらい事故で、歩道を歩いていたマユは事故を起こした大型トラックに跳ねられた。
意識はあったがその日のうちに運ばれた病院のベッドで息を引き取った。
辛かった。
言葉に出来ないくらい、、、、
千夏と付き合うようになってからはカラダの関係は無くなっていたが、かけがえのない親友だった。
思いやりがあって、優しくて、すごく可愛くて、、、いつも俺を気遣ってくれていた。
それなのに、このところの俺はマユに何もしてやれなかった。
俺に気遣って遠くから見つめてくれていたマユをないがしろにしていた。
嬉しそうに俺の腕にまとわりついてきたマユ、、、
俺の腕の中でまっ赤な顔して恥ずかしそうに、初めてイッたよと呟いたマユ、、、
俺が辛いときには、黙ってそばにいてくれたマユ、、、
千夏と付き合い始めた俺を寂しそうに見つめ
ていたマユ、、、
マユとの思い出が次々と浮かんでくる。
俺はいつもアイツに助けて貰っていたんだな、、、
その存在の重さを感じながら焼香の列に並ぶ。
焼香を済ませ、マユの両親に黙礼をすると母親が傍にやってきた。
「ユウト君、わざわざありがとうね、、、」
「いいえ、、、この度は、本当に、、、こんなことしか出来なくて、すいません、、、」
涙を流す母親に優しく手を握られる。
「マユね、、、最後にユウト君の名前を呼んだの、、、ユウト君が来てくれてマユもきっと歓んでくれているわ、、、」
こみ上げる涙をこらえる。
マユの前では泣けない。
明日の告別式にくることを告げ、その場を離れる。
他の人の焼香の邪魔になる。
周りには顔見知りもあるはずたが、まったく目に入らない。
近くの公園のベンチに腰を下ろした。
薄暗い街灯の下。
よくこのベンチに座ってマユと話した。
俺の名を呼んでくれたなんて、、、
嬉しさはもちろんある、、、
でもそれはちっぽけなものに過ぎない。
悔いが残るし、すごく辛い、、、
自分がいかに役立たずなのかを痛感する。
「俺、最悪だよ、、、マユ、、、」
「ユウト?」
いきなり声をかけられた。
一瞬だがマユかと錯覚したが、そんなはずは無い、、,
久しぶりに見る同級生だった。
つづく
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