男を探し出したクルミは徹底的にやり込めた。
新入生を無理やり酔わせてホテルに連れ込み、猥褻行為に及ぼうとしたとまくしたてた。
大学に訴えて退学にしてやると脅しつけた。
典型的なボンボンの医学生だった村井は震えあがった。
そうなったら自分は間違いなく終わる。
クルミはそんな村井に念書を書かせた。
金輪際千夏には関わらないこと。
もちろん口を利くことも一切許されない。
あの日ことは全て忘れ、絶対に他言はしない。
約束を破った場合は慰謝料及び大学、家族、マスコミに全てを公表するという書面にサインをさせた。
実家の病院を継ぐことになっている村井は素直に応じた。
村井は長男だが、すぐ下に自分よりも優秀な弟がいる。
こんなことが公になってしまったら自分は排除され、弟が跡取りになるのは必然だ。
元来、気の小さい村井は怯えきり、それから千夏の前に姿を現すことはなかった。
千夏はクルミに心から感謝した。
千夏はそれ以来、よそではアルコールを口にしないと心に誓った。
このことは二人だけの秘密と誓いあい、村井の念書も万が一もユウトの目に触れないようクルミがあずかることにした。
そんなこともあって千夏の要求を拒みきることが出来なかった。
別に脅された訳ではない。
しかし、クルミに対する感謝の気持ちと、そして引け目が拒むことを躊躇わせたのは事実
だ。
でもこんなことになるのなら、やはり受け入れのではなかった。
後悔の念ばかりが頭を占める。
わたしたち、、、本当にこのまま終わってしまうの?
そんな予感に千夏は恐れおののく。
そんなことは絶対にイヤだ、、、
そしてユウトだって心の奥ではわたしのことを愛してくれている。
それには確信がある。
でも不安は更に不安をよぶ。
ひょっとしたら、、、あの日ことを、封印されたあの出来事を、、、クルミはもうすでに、ユウトに告げているのかも知れない、、、
いや、クルミは絶対の秘密を約束してくれた。
けれども、ユウトを手に入れるためだったら、、、
疑心暗鬼に苛まれる。
不安で心が鎮まらない。
そんなこと、クルミにも、もちろんユウトにも問い質すことなど出来ない、、、
とにかく今はガマンを重ねて時が経つのを待つしかない。
今の自分はユウト恋しさの余り、なにを口走ってしまうか分からない。
ユウトは必ずいつか戻ってきてくれる。
わたし達は自分たちが考えているよりも、もっと深い部分で求め合っているはずだから、、、
不安に怯えながらも、千夏はそれを信じてユウトをいつまでも待つ決心をしていた。
つづく
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