相手の様子がヘンだと感じた千夏は、咄嗟にスマホを使って会話を録音していた。
それが決め手となって男は逮捕されたとクルミが教えてくれた。
そして、どうやら他にも余罪があるようなことを、警察がほのめかしていたらしいことも。
ケガは見た目ほど重症ではないが、心の傷が心配だと言うクルミに、ユウトは黙って頷いた。
千夏のユウトに対する想いは、それとなく気付いてはいたが、これほどまでとは思っていなかった。
あの千夏をどうやってこんなに夢中にさせたのと尋ねられもした。
千夏が俺に夢中だなんて、、、
思ってもいない言葉にユウトの胸は熱くなった。
でも未だに信じきることが出来ない。
拒まれたと思い込んでいたことは間違いだったのか?
とにかく早く千夏に逢いたかった。
千夏の病室は個室だった。
中に入ると、横には母親らしきキレイな女性がいた。
それを想像させる美しい人だった。
挨拶を交わすとマジマジとユウトを見つめてきた。
「あなたがユウト君ですか、、、千夏、、、あなたの好み、わたしと一緒ね?」
「お母さん!」
千夏は声をあげた。
「あっ、イタ、、、」
痛みを覚えた千夏が顔をしかめる。
「ほらほら、そんな声を出すからですよ、、、」
頬を赤くした千夏はやはり痛々しかった。
右手と右足は固定され、ガラスで切れた顔にも絆創膏をしていた。
「千夏、、さん、、、」
その姿に思わず声が掠れてしまう。
「ユウト君、、、すごく怖かった、、、」
今にも泣き出しそうな表情を浮かべる。
本当にそうだと思う。
千夏の受けた仕打ちを考えるだけで、身を切られるより辛い。
殴られたことをクルミに聞かされたとき、怒りに震えたユウトはクルミに懸命になだめられた。
ヤツは絶対に報いを受けると、、、
「頑張ったね、、、俺なんか、、、何も出来なかった、、、本当にごめん、、、」
悔しくて、千夏が愛おしくて、その髪を優しく撫でる。
「ううん、ユウト君がいるから頑張れたんだよ、、、それに、わたしの方こそごめんなさ
い、、、あんな男をいい人だなんて、、、本当にわたし、バカだった、、、」
「もう大丈夫だから、、、俺が傍にいるから、、、」
「うん、、、約束だよ、、、」
痛々しい千夏はそれでも美しかった。
その嬉しそうな瞳に吸い込まれそうなほど。
「んっ、ゴホン、、、」
クルミがわざとらしく咳をする。
「熱いですね、お母さん、、、」
「本当ね、、、こんなに素直な千夏を見るの、いつ以来かしら?」
「そんなことないから、、、わたし、、、」
「はいはい、わたしたちは買い物に行ってくるから、、、ユウト君、後はお願いね、、、」
「はい、、、」
二人の顔が赤くなる。
「けが人なんだから、余り過激なことしたらダメなんだからね、、、」
クルミは二人を見てニヤニヤしている。
「クルミ!」
「はいはい、それダメ、、、また痛くなるね、、、
お邪魔虫は消えますから、、、どうぞ、ごゆっくり、、、」
二人は出て行った。
つづく
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