「助けて!お母さん!」
母が出かけたのは、この男のウソかも知れない。
それにやめにして戻ってくる可能性もある。
「アタマ悪いな、叔母さんは出かけたと言っただろう、、、」
「イヤ!来ないで!」
男が近づいてくる。
「うるさい!騒ぐな!」
バチン!
頬を張られた。
血の味が口の中に広がった。
ベッドの上に無理やり押し倒され、服を引き千切られる。
怖い、ユウト助けて、、、
こんな汚らわしい男に、、、
ユウト以外の男に絶対に汚されたく無い、、、
吐き気が込み上げる。
千夏はこらえず、思いきり吐いた。
「うわっ、、、お前、なんだよ、、、」
陸が怯んだのを見て、千夏はベッドを飛び降りた。
椅子を振りかぶり、思いきり窓に叩きつけた。
ガッシャーン!
ガラス窓を突き破り、椅子ごと外に落ちていく。
捕まえようとする男の腕を間一髪でくぐり抜け、躊躇なく二階から飛び降りる。
「ぐっ!」
右足と右手に激痛が走った。
体の所々もガラスで切れたようだ。
痛みをこらえて歩道まで移動した。
幸いなことに通りを歩いていた人たちが何事かと集まってきてくれた。
中年の女性が抱きかかえてくれた。
「どうしたの?大丈夫?」
「助けて下さい、、、男に襲われたんです、、、警察を呼んで下さい、、、お願いします、、、」
服は破れ、下着もちぎれ掛かっているのを見かねた女性がジャケットを羽織ってくれた。「分かった、今すぐ警察を呼ぶ、、、みんながいるから安心しなさい、、、」
女性の夫らしい男性が電話をしてくれた。
そのとき血相を変えて陸が玄関を出て逃げようとしていた。
「あの男です、、、犯人は、、、」
三人の男たちが飛びかかった。
あっという間に地べたに押し付けられる。
「クソ!離せ!俺は何もしてないぞ!」
「この女の敵が!黙れ!」
傍にいた若い女性が持っていたカバンで何度も男を叩きつけた。
パトカーのサイレンが聞こえてきたとき、余りの激痛に千夏は意識を失った。
翌日の学校は大騒ぎだった。
何しろ生徒会長が大怪我をしたと言うのだから。
話を聞いたユウトは生徒会室へと走った。
ほとんどのみんなが集まっていた。
クルミがユウトに声をかけてきた。
「ユウト君、大丈夫だからね、、、わたし、昨日、病院に行ってきたの、、、」
「何があったんですか?」
「従兄弟に襲われたの、、、それで逃げるために二階から飛び降りて、手と足を骨折して、、、でも大丈夫だったって、、、意味分かる?分かるよね、ユウト君、、、」
「はい、、、くそっ、あいつ、コロシてやる!」
激しい怒りが込み上げた。
ユウトの剣幕にみんなが静まり返る。
「ダメだよ、ユウト君、そんなことを口にしたら、、、わたしも同じ気持ちだよ、、でも絶対にダメ、、、」
「、、、すいません、、、」
「ユウト君、病院に行くよ、、、」
「でも、、、俺なんか、、、」
「何言ってるの?千夏が逢いたいって、、、ユウト君だけに逢いたいって、、、そう言ってるんだよ、、、」
どうして、俺なんかと、、、
でも、本当は俺だって千夏に逢いたい、、、
「分かりました、、、行かせて下さい、、、」
「よし、行くよ、、、大丈夫、先生にはうまく言っておくから、、、」
みんなが肩や背中を叩いてくれる。
後は任せたと言うように、、、
つづく
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