「なっ、、、俺たち、、、ほら、、、たまに逢って、思いきりエッチして、、、俺たち、躰の相性もすごくいいし、、、このままの関係で、、、」
逃げ腰になった男の惨めな言い逃れだった。
吐き気がこみ上げてきた。
わたしは大切な人を裏切り、捨てられて、こんな男に逃げ込もうとしていた。
黙って服を身に着け、一人部屋を出る。
唖然と見送るジュンヤに捨て台詞を残して。
「もうアンタなんかと二度と逢わない、、、それから言っておくけど、アンタのセックスより、彼の方が何倍も気持ちイイから、、、その弱っちいセックスで彼女とせいぜい励むといいわ、、、もう連絡してこないで!」
怒りに任せて下品な暴言を吐いてしまう。
しかしミスズの気持ちが晴れることは無い。
最初からこう言ってジュンヤをはねつければ良かった。
そうすれば幸せな日々が続いたはずなのに、、、
涙がこみ上げてくる。
小さなころ、ソウスケのお嫁さんになることを夢見ていた。
もう少しで、それが実現したかも知れないのに、、、
自分のしたことの浅はかさに今更のように気付かされ、嫌悪感がこみ上げる。
家に帰ったのは夜の11時を過ぎていた。
迎えてくれた母が心配そうに声をかけてくれた。
「ミスズ、こんな時間まで、何をしていたの?
電話にも出ないで、、、それにソウスケくんと何かあったの?あなたが心配で電話したら、ソウスケくん、、、何か、ヘンだったけど、、、」
ミスズは母を無視するようににして、部屋に駆け込んだ。
スマホの履歴には期待したソウスケの名はない、あるのは母だけだった。
もうソウスケに心配もされていない。
現実が再び重くのしかかる。
でも、、、心から謝れば、、、優しいソウスケは許してくれるかも知れない、、、
もうそうするしか道は無い、、、
ミスズは最後の望みを電話に託すことにした。
でもソウスケは出てくれるのだろうか?
無視されることだって考えられる。
だがすぐに電話は繋がった。
少しだけホッとする。
そして何とか許してもらおうと気を引き締める。
一度は諦め、他の男に乗り換えようとした自分のことなど、都合よく頭から消え去っていた。
「ソウスケ、、、ごめんなさい、、、」
「、、、、、」
「わたし、、、ソウスケに酷いことシテしまいました、、、すごく、、後悔してる、、、」
「、、、こんな時間まで、、、ヤツと逢っていたのか?」
「違う、、、あのあと、、すぐに別れて、、、ずっとソウスケのこと考えていて、、、わたしバカなことしちゃったから、、、ソウスケに悪くて、、、でもね、ヘンなことはシテ無いよ、、、キスだって絶対にダメって、断ったし、、、」
もうウソをついてでも何とか取り繕う、それしかアタマになかった。
それが墓穴を掘ることも知らないで、、、
「、、、母さんが見ていたんだ、、、あれから、二人があんな場所でキスをして、、、ホテルに入って行ったって、、、」
迂闊だった。
まさか見られていたなんて思いもしなかった。
捨てばちになってしまっていた自分にはそんなことを考える余裕は無かった。
「あんなことがあったのに、、、お前はあの男とセックスしたんだな、、、しかも、こんな時間まで、、、」
突き刺さる言葉だったが、ソウスケの口調には怒りが感じられなかった。
まるで他人ごとのようにミスズを追い詰めてくる。
それがかえってミスズを絶望の淵へと押しやっていた。
「本当にゴメンなさい、、、わたし、どうしたらいいのか訳が分からなくなって、彼に無理矢理ホテルに連れ込まれて、、、」
「ウソをつくなよ、、、お前から誘ったんだよな、、、、お前の話はさっきからウソだらけじゃないか、、、お前はいつから俺に平気でウソをつきまくってゴマかす女になったんだ?」
ショックだった。
その通りだった、、、
自分は大切な人をゴマかすことしか考えていなかった。
「許してソウスケ、、、全部、本当のことを、、、話すから、、、」
「もういいんだ、、、何も聞きたくない、、、もう終わりなんだ、、、」
「そんな、、こと言わないで、、、ソウスケが一番、、、一番好きなの、、、」
「一番か、、、お前は、その一番に隠れて、、、二番目と浮気していたんだな、、、本当は一番と二番は逆なんじゃないのか?それとも二人とセックスする度にその順番が入れ代わっていたんじゃないか?」
「違うよ、絶対に違う!」
「本当かな?とにかくもうお前を信じられ無い、、、もうお前を好きじゃない、、、友だちとも思わない、、、お前は、マユとどこが違うんだ?」
一番恐れていた言葉だった。
マユのことを偉そうに上から目線で批判していた自分が、まるで同じことをして都合よく
ウソをつき、全てをゴマかそうとした。
そして大切なものが全て崩れ去ってしまった。
「友だちにも、、、戻れないの?」
「そうだ、、、二度ともう話もしない、、、俺に気兼ねなく、あの元彼と仲良くしたらいい、、、これで最後だ、、、」
電話は切れていた。
わたしにはもう何も無い、、、
ソウスケと手をつないで無邪気に遊んでいた日々、、、
あの頃にはもう戻れない、、、
嗚咽が溢れてくる。
止めどない涙が流れていた。
つづく
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