5日目
休み明けの仕事はいつもの事ながら忙しかった。
忙しいせいなのか、ユキに対して上野は口うるさいだけで、嫌味はいつもよりも少なかった。
いつもの社内食堂でユキはサオリと話しながら昼食を取る。
「そういえばさぁ、、サオリは彼氏とかいるの?」
ユキが1番会話をしている同僚がサオリだが、ユキがいつも話してサオリは聞きに回るから、サオリの事はあまり知らなかった。
「え、あー、、彼氏は今はいないよー。」
サオリもまさかそんな質問されるとも思っていなかったので、驚いてしどろもどろに答えた。
「あー、怪しい。。アンタ本当は彼氏いるんじゃない?職場内??」
サオリの返答に疑いをもったユキはグイグイ聞いてくる。
「ほ、ホントにいないって!私、、、彼氏は出来たことないの。」
「えー!マジで!?じゃあ処女??」
ユキは驚いて聞いた。
声が大きかった。ユキは配慮をするという事を知らなかった。というか、別に誰に聞かれても良いと思って声の大きさなど気にしていなかった。
サオリは焦って辺りを見回して、「察して!」という気持ちも込めて声を小さく答えた。
「エッチした事はあるけど、、彼氏はできた事ないの。」
「へぇー、、」
ユキはニヤニヤしながら相槌を打った。
(サオリは地味なくせに意外とその場で勢いでやっちゃうヤリマンなのかも笑)
心の中でサオリを見下した。
サオリにはそれが分かっていたが、そこには訂正を入れるつもりは無かった。
「でもね、、、」
サオリはそのかわりに別の事を言おうとした。
「好きな人は、、、いるの。」
「ふーん?、、、、で、誰?」
ユキは誰が好きかなどあまり興味は無かったが、とりあえずで聞いた。
「うん、、時期が来たら話すね。。。」
(勿体ぶらずに今言えよ。時期って事は、昇給とか役職とこ関係してる奴とか??)
サオリは急に恥ずかしくなったようで、話題を変えた。
「そういえば、、相田さん、どうだったの?」
「どうだったの?って、、なにが?」
ユキは興味無さそうに答えた。
「ユキ、相田さんと食事行ったんでしょ??」
「あー、、。んー、、普通。てかね、やっぱり私ダメだわ。お金が絡んでても、奢りでも。
ブサイクと一緒に行動するのかなりストレスなんだよね。」
ユキの返答にサオリは他の人に聞かれてたらどうしよう。と周りを見渡した。
焦った咄嗟とはいえ、この話もここでするべきでは無かったと後悔した。
「まぁ、でもまた会うんだけどねー。」
「え?」
サオリは驚いた。
「なんかさー、あと1週間位で給料日じゃん?相田から給料でたらまたご飯行こうって誘われたんだよねー。」
サオリは困惑した。
「え?で、でもさっき一緒に行動するのは無理とか言ってなかったっけ??」
ユキは鼻で笑ってダルそうに答えた。
「うーん、迷ってんだけどさぁ、、。この前3万5千円貰ったんだけどさ。あの感じならもう少し引き出せそうなんだよねー。」
ユキが相田からお金を引き出す為にまた会う気でいる事にサオリはゾッとした。
「ねぇ、、お金貰っても、別にエッチする訳じゃないし、付き合う訳でもないんだよね?」
「あはは!笑。死んでもエッチなんかしねえし、付き合うわけねぇじゃん笑」
サオリは答えが分かっていても、恐る恐る聞いた。
「相田さん、、、可哀想じゃない?ただ貢がせるだけ貢がせて、、、。」
ユキは虫を見つけた時のような苦い顔で答えた。
「えー、どこが??全然可哀想じゃないし、むしろブサイクなのに私と楽しい時間過ごせるだけ感謝して欲しいんだけど。」
サオリはなんと答えるべきなのか戸惑い押し黙った。
「あ、もう時間じゃん!」
ユキはサオリの反応にはお構い無しに片付けはじめた。
仕事終わりに相田からユキに食事のお誘いのLINEが入っていた。
(しつこいなぁ。。。)
ユキはしつこいブサイクが嫌いだし、相田の催促のLINEにイラついた。
が、内容を見て一瞬だけ思考が止まった。
「何度もLINEごめんね!来週の金曜日、、日本ホテルの最上階にあるレストランの予約が取れたんだけどどうかな?」
「あ、お金は気にしないでね。
それと、、実は昨日、臨時収入が入ったんだけど、、僕は使う予定がないから、もしまだ金銭的にキツかったら譲るけどどうかなあ。」
「大した額じゃないけどね!」
どれくらいの額なんだ?少し話が上手い気がする。ユキは少し考えた。
考えた末に、変わらず既読無視に決めた。
(明日、相田に直接聞いて判断しよう。)
~数時間後~
「ユキさんからは返事ないです。相変わらず既読無視ですね。。。」
相田は自室のソファーでスマホを見ながら答えた。
「大丈夫。明日、ユキの方から話を聞きにノコノコやってきますよ。」
ベランダでタバコを吸う影が答えた。
そして、吸い終えたタバコを携帯灰皿に捨て、部屋の中に入ってきた。
「相田さん、、ユキが話しかけてきたら打ち合わせ通りにお願いしますね?」
声の主が柔らかな口調で相田に確認をした。
「んー、、大丈夫かなぁ、、僕演技とか苦手だから。」相田は自信なさげに笑って答えた。
「あいつは、、ユキは演技かどうか見抜けるタイプじゃないですよ。残念ながら貴方に興味があるわけじゃない。お金について聞きに来る訳ですから。演技よりも、理屈に合ってるかどうかを見てくるでしょうね。」
「そういうもんですかねー?僕にはさっぱり分かりませんが、、、。」
2人の会話は深夜まで及んだ。
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