2日目
仕事終わり、相田はソワソワしながら待ち合わせの駅でユキを待った。
明日は休みなのでもしかしたらこの後、、、そんな期待を抱いていた。
待ち合わせに少し遅れてユキは合流した。
相田は移動中、色々話しかけるがユキは歩きスマホをしながら愛想返事を返すだけだった。
相田はユキの塩対応にもめげずに話しかける。
ユキはイライラを募らせながらも、それを隠した。
しかし、ユキにとっては本当に興味もなくつまらない話題だった。
ブサイクで興味のない男の話題にぶりっ子するという事はユキのプライドが許せない。
だからイライラは隠しつつも端的に相槌を打つことに務めた。
着いた料亭はファミレスとかフード店よりも0が1つ多い位の豪華な有名店だった。
出てきた料理にユキは怒りを忘れご機嫌になった。
移動中の無愛想なユキに不安を抱いていた相田は、喜ぶユキの姿に安心し、楽しい食事となった。
食事中は先程とは変わってユキがベラベラと話し始めた。主に愚痴だが、相田はユキが心を開いてくれたと勘違いし、また、ユキの事が好きだったので、話を親身に聞いた。
「上野先輩ってそんなに酷い人なんだねー。ユキさんは悪くないよ。」
「ありがとう。。でも、絶対に相田さんと2人で食事した事が上野先輩にバレたらまた嫌がらせされちゃうと思う。」
影を落とした言い方に、相田は理解して優しい笑顔で答えた。
「うんうん。それが心配だよね。大丈夫、会社の人には今日の事誰にも言わないから。安心して!」
「相田さん優しいね。。ありがとう。」
ユキは男は好きな女が最初塩対応でも、プレゼントやサプライズの時にご機嫌になれば全て許し、なんなら距離が近くなる事を今までの経験から理解していた。
つまり、相田は既にユキの術中にハマっていた。
そしてユキは相田が普段から温和で優しく気の弱い性格なのを把握していた。
食事を終えて相田が会計をし、ユキと一緒に店外へ出た。
夜遅い時間にも関わらず、外は人で溢れていた。
人が多い所が苦手とユキは、メイン通りを外れた人気のない道を選び駅に向かった。
この道を進み奥の十字路を左に行けばホテル街だ。
それを知っていた相田は淡い期待が現実になるかもしれないと心拍数が上がった。
しかし、ホテル街には行かずにそのまま駅に着いてしまった。相田は落胆を見せなかったが、ユキは心情を察した。そして、
「相田さん、今日はありがとうございました!」
飛びっきりの笑顔で清楚ぶって言った。
「仕事で落ち込んでけど、おかげでまた頑張ろうって思えました。、、また機会があれば相田さんとお食事行きたいです。」
「いやぁ、、僕は何もしてないよ。でも良かった。少しでも役に立てたかな、、。何かあったらなんでも言ってね」
相田は内心は嬉しく思いつつ謙虚に答えた。
「やっぱり相田さんは優しいね。。本当にありがとうございます。」
お礼を言った後に、ユキはほんの少しだけまた少しだけ影を落とした。
「どうしたの?」
相田はその機微を見逃さずに聞いた。本当はまだ一緒にいたいという相田の思いをユキは上手く利用した。
「、、、いえ。なんでもないです。」
ユキはさも気丈な笑顔を見せた。
「大丈夫だよ?何か心配事でもあるの?もし何か困ってる事があるなら、、」
相田は語気を強めてユキに言った。
「、、、実は相田さんと会う前の移動途中に、、色々あって。内容は言えないんですけど、、明日までにまとまったお金が必要になってしまって。」
相田は一瞬たじろいだ。お金の事とは露にも思わなかったから。
「気にしないでくださいね。正直厳しいですけど、、なんとかしますから。」
相田は(だからご飯の前、あんなに雰囲気が暗かったのか)と気づいた。
「いくら位必要なの?」
相田はとりあえずの気持ちで聞いてみた。
「本当は5万円支払いなんです。ギリギリあるのでなんとかなるんですけど、、その後の生活どうしようかと思ってただけなので。」
相田はもっとデカい額かと考えていたので、5万円に安心した。そして
「それは大金だよね。でも大丈夫!今手持ちは5万円ないけど、これ、、、。」
そう言って相田は財布から3万5千円を取り出し、ユキに渡した。
ユキはおもむろにお金を受け取り、ちょっと驚くような言った。
「相田さん、、、これ、、いいんですか?」
「うん!今日付き合ってくれたお礼だよ。本当は5万円渡してあげたいところなんだけど、、ごめんね。
あ!返さなくていいからね!その代わりまたご飯付き合ってよ!」
ユキはパァっと明るい笑顔になり、そして
「相田さん、ありがとう!!!本当に助かります!!」
とお礼を言った。
実は料亭での支払いも重なり、相田にとって3万5千円は痛い出費だった。それでもユキにお金をあげたのは、ユキの事を本気で好きだったから。ユキの話を信じていたから。そして、、次も会えるし、このまま付き合えるだろうという期待だった。
2人は別れての帰り道
(なにがまたご飯行ってね!だよ気持ち悪い。ブサイクの癖に良い男気どんなよな。)
ユキは相田の好意を心の中で罵倒した。
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