16日目(金曜日)
ユキはぼんやりと目を覚ました。気づいたら知らない部屋で椅子に座り手足を縛られて動けないでいた。
ユキは状況がイマイチ飲み込めず、テンパる頭を落ち着かせて順に追って考えた。
その日は仕事を終えて直ぐに帰宅し、急いで着替えて相田との待ち合わせ場所に行った。
そして相田とディナーをした。そこまでは覚えていた。
だがその後の記憶がない。。。
「あれ?結構早く起きたね。」
ベッドでくつろいでいる影が体を起こしながら言った。相田だった。
「おい。」
ユキはまだ何が起きているのか理解出来ておらず、何も言えなかった。
「大丈夫大丈夫!ちゃんと説明するから。それに手荒な事はしないよ。」
ユキはここまでの一連の不可解な事は相田が意図してやったのだと理解した。その途端、戸惑いよりも怒りが込み上げてきた。
「テメェなんのつもりだ!!!早くほどけよ!!」
相田はまあまあとなだめながら、笑顔で答えた。
「ほどいたらユキさん話も聞かずに暴れるでしょ?だから拘束したまま話させてね?」
「っ!ふざけんな!!テメェ!警察に通報してやるからな!!!」
ユキは怒りの形相で吠えた。
相田は、まあ、しょうがないか、、、という感じでスマホを取り出し、怒り狂うユキに見せた。
スマホの内容は、ユキが上野のミスを挑発して土下座させた時のムービーだった。
ユキは一瞬怯んだが強気な姿勢は崩さなかった。
「は?脅し??だからなんだよ??別に見せたきゃ見せればいいだろ??」
相田はスマホをまた弄ると再び画面を見せた。
内容は日曜日にユキが片山に上野を嵌める話をしていた時のものだ。
続けて、相田はスマホをスワイプさせて再びユキに見せた。
片山を使って上野を虐めた時のものだった。
「おまえ、、、」
ユキはその後の言葉が出てこなかった。
ユキの悪行がバレた事に怯えたからではなく、
どこから盗撮していた?どこまで知ってる?なんで?
色んな疑問が溢れてきて、何から聞けばいいか分からなかったからだ。
「話、、聞く気になった?」
ユキは更に強い形相で相田を睨んだ。
しかし、言葉は発さなかった。相田は、それがユキが話を聞いてやる。という合図だと理解して説明しだした。
「事の発端はね。初めてディナーに行った時なんだ。あの時、3万5千円をユキさんにあげたよね?うん、僕は本当に善意だったんだ。ユキさんのこと好きだったしね、、、。」
相田は切なそうに話したが、気持ちを切り替えるように声を大きくして言った。
「ユキと別れたあと、、、
君の事を良く知る人物に呼び止められたんだ。
でね、その人は、ユキが僕から金をせびろうとしているって説明された。
最初、僕は信じられなかったんだけどね。」
「そして、その人からユキが今までに行ってきた悪行の数数の証拠を突き出されたよ。
、、、僕はショックだった。」
「その人はね、、これらの証拠を提出すれば刑事でも民事でも両方でユキを訴えられる。だけど、そんな生ぬるいやり方じゃ気持ちが収まらない。。彼はそう言ってた。」
「で、僕に復讐の手伝いを持ちかけてきたんだよ。」
「最初は断ろうと思ったよ。いくら証拠見せられても、信じられなくてさ。ユキの事を信じたくて。」
「でもね、、彼もまた本気だった。彼はこれ以上俺みたいな犠牲者を出したくない!って泣きながら訴えて来たんだ。」
「一応、彼の話に乗ることにした。でも、ユキさんに何かをする覚悟は出来てなかった。」
「だけど、君が上野先輩にした行為、片山君も巻き込んだ酷いいじめは、、、、。」
相田が怒りを抑えきれずに言った。
「僕も許せなかった。だから、今日実行に移す事に決めたんだ。」
「つまり、、、私に恨みがある奴がお前を使って私を嵌めようとしたわけだ?
何する気か知らないけど、やれるもんならやってみなよ?
絶対警察に通報してやるから。」
ユキは強気の態度を崩さなかった。むしろユキの図々しく、自己中心的な考えの中では、自己正当化しており、ユキにとって、悪者は相田と、その復讐者だった。
反省も罪悪感も何も無かった。
「実はね、、僕らも構わないんだ。別に警察に通報されてどうなろうとね?
それくらいの覚悟でやってるからさ。」
「ユキさんの賢い頭で考えてみなよ?君が今までして来た数々の悪行、、、それが世間に公表されて、周りにもバレて、、SNSを通じて世界中に知れ渡る。君は捕まるだけじゃなくて、多額の賠償金を一生払って過ごす事になるだろうね。」
ユキは睨みつけたが、正直同様していた。
会社を辞めて済む話レベルなら何も怖くなかった。
だが借金やユキというブランドが傷付く事はどうしても避けたかった。
「まさか、、おまえらが上野先輩のミスを意図的に作ったのか??」
ユキは自己防衛と話題を変えたくて必死だった。
相田は何も答えずにユキを凝視した。
「上野がミスしたのはおまえらが仕組んだんだろ!?そうすれば普段恨みをいだいてる私が上野のミスをネタに脅すだろうって考えて。そうだろ!!?おまえら最低だな!!そーやって人を使って嵌めて!!」
ユキは怒鳴り散らした。
相田は全部聞き終えて懐から数枚の用紙を取り出した。
「上野先輩がミスした受注ファイルを調べたんだ。
上野先輩が受注ファイルを完成させた時、実は数字も納期も全て合ってたんだよ。ほらここの数字。合ってるでしょ?」
ユキは心臓がヒヤリとしていた。
血の気が引いていくのを抑えるように、再度怒鳴った。
「ほらみろ!やっぱりな!!おまえらが改ざんしたんだろ!??最低だ、、」
「君だろ?」
相田はユキの怒鳴り声に被せて言った。その言葉に心臓を刺されたような感覚になり、ユキは言葉が出なかった。
「改ざんしたのは、、キミだよね。」
「この後、このファイルが修正された記録があるんだ。ユキは知らないみたいだけど、ファイルは編集されると、会社のどのパソコンが編集したか分かるようになってるんだよ。」
ユキの鼓動が早くなる。
「でね、どのパソコンが編集したのかを見たんだ。そしたらね、、キミのパソコンだったよ。」
「ちがう、、誰か他の奴が私のせいに、しようと、、」
「ここでは言わないけどね、、、他にも君が改ざんした証拠は揃ってるんだよ。」
「、、、。」
「僕達はね?君これらの悪行を、、例えキミが会社を辞めて次の所に就職しようと、例え海外に移住しても、、、」
「毎回その会社や住民に拡散する。」
「、、、。そんな事したら、、殺す。」
ユキは精一杯の強がりで相田を睨みつけた。
「でもね、、僕はやっぱりユキさんの事が好きだからさ、、、。チャンスをあげようと思うんだ。」
「、、、なによ。」
「僕とユキさんで勝負をしよう。ユキさんが勝てば全ての証拠は君に渡して僕らは何もしないと誓うよ。」
「で、アンタがかったら??」
ユキは再び勢いを取り戻し始めていった。
「うん、僕がかったら、この2連休は僕の言う事を聞いてもらう。絶対拒否をせずに聞いてもらうね。」
「どうせ私が勝てない様な無理難題なゲームにしようってんだろ!?卑怯者!!」
「まさか。そこは公正にやるよ。ゲームの内容はね、、、そうだなぁ、、1時間以内にこのベッドから僕を床に落としたらユキさんの勝ち。落とせなかったら僕の勝ち。。でどう?
あ、途中で無理だと思ったらギブアップしていいからね?笑」
相田は体は太り気味だが、ヒョロそうに見えた。
1時間あれば無理やり落とす事は出来る。
(相田は私が女だから舐めてるな?)
ユキは怒りを浮かべながら、答えた。
「いいよ。テメェマジで後悔させてやるからな?」
相田もニヤリと笑って答えた。
「おー怖い怖い。」
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