~置き姫の決心~
次の日。
この日も私は会社を休みました。
課長の家へ行くために。
総務課の後輩に「忙しい時に何日も休んでしまったから、詫びの品を持って行く」と嘘を付き、課長の自宅住所と簡単な家庭環境を聞き出しました。
午後3時。
私は課長の自宅前に立っていました。
覚悟を決めインターホンを鳴らすと「はい…」と奥様の声。
「いつも課長にお世話になっております○○○○株式会社、○○課の中川と申します…」
そういうと不思議そうな声で…
「あの…主人はまだ会社ですが…どういったご用件でしょうか?」と。
「はい。実は奥様に聞いて頂きたい事と言いますか…ご相談がございまして…」
すると玄関のドアが開き奥様が出てきました。
中に通され、応接間に入ると少し不安そうな顔で「で、どういったお話でしょう?」と私を見つめました。
私は、今まで掲示板を通してしてきたこと全てを奥様に話しました。
奥様は目を丸くして私の話を聞いていました。
そして課長にされた事を全て話すと、奥様は目に涙を浮かべ「そんな…信じられません…」
と言い、何か私を疑う様な目をしました。
私はスマホを取り出し「これは昨日の動画です。」と奥様にスマホの画面を見せました。
「要らなくなったカバンに穴を開けてこのスマホで隠し撮りました…」と、昨夜のホテルでの一部始終の動画、掲示板、私の写真や動画、課長が送ったメールとライン、全て見せました。
奥様は泣き崩れ「本当にごめんなさいね…」と私に謝りました。
私は「悪いのは全て私です。申し訳ありません。」と頭を下げました。
それから一時間程が経った頃。
課長が帰宅し「ただいま…」と小さい声で呟きながら家の中に入ってきました。
応接間の前を通りかかる時、私を見た課長が凍り付きました。
「あなた…こっちに来て…」と奥様が課長を呼び、小刻みに震えながら無言で立ち尽くす課長。
奥様は「全部中川さんから聞きました。パソコンと携帯をここに出して!!」と、大きな声を出し、テーブルを叩きました。
ビクッとして、しばらく固まり、全てを悟った様な表情で課長は素直にパソコンと携帯を出し、私の画像が入ったファイルを開き、すべてを削除。
パソコンやスマホのゴミ箱まで確認し「もう無いでしょうね!?」と課長に確認する奥様。
「今後もし画像で脅す様な事があったら、中川さんは警察に行くと仰ってます!本当にないの!?」と声を荒げると、課長はパソコンが入っていたバッグのポケットに手を入れ、震える指でメモリスティックを差し出しました。
「これで本当に全部です。」と床に膝を付きました。
それを見て私も掲示板のアカウントを削除し、課長の家を後にしました。
翌朝、会社に行くと私と入れ替えで、今度は課長が休んでいました。
二か月後。
私は長年勤めた会社を退社。
住んでいたマンションを引き払い、実家がある隣の県へ引っ越しました。
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