まだ少し頭がボーっとしている。
私は席を立ち、コーヒーを手に持ち喫煙室へ。
煙草に火をつけ、煙を燻らせていると、喫煙室のドアが開きカオルが入ってきた。
(あれ…?)
おもむろにマスクを外し、こちらを見てニコっとしながら煙草に火をつけるカオル。
私は少し驚いた表情でカオルを見た。
「篠崎さん(カオル)、煙草吸うんだ?」
するとカオルは恥ずかしそうな表情を浮かべ
「はい。でも会社で吸うのは初めてです。」
カオルの意外な一面に少しドキッとした。
「意外だな~。ものすごく真面目なイメージだったから…」
カオルは笑いながら「真面目に見えました?」と、手に持っていたスマホをポケットにしまうと…
「これのせいかな…」
とメガネを外しました。
夢で見た綺麗な顔が現実に…。
寧ろ、夢より綺麗だった。
「これ伊達メガネですよ」とにこやかな表情で私を見た。
「え!?そうなの!?」と驚く私に
「私、全然真面目なんかじゃないですから…」と笑い…
「でもそう見えてたなら嬉しいです…」と言い、また静かにメガネをかけた。
「これセクハラとか言わないでね?メガネかけてない篠崎さんもの凄く綺麗だよ?」
思わず口に出る。
見たことの無い笑顔で「それセクハラですよ」と声を出して笑う。
「そう言ってもらえると嬉しいですけど、このメガネは自分への戒めなんです…」
そう言うとカオルは少し寂し気な表情に…。
カオルの中の影を感じた瞬間だった…。
「戒めかぁ…俺のメガネも遠くの美人が見えなくなって目の前の仕事しか見えなくなる戒めのメガネ」
と言い、胸のポケットからメガネを出すと…
「それ老眼鏡じゃないですかぁ!」と、また可愛い笑顔に戻った。
二人でしばらく喋り、二本目の煙草を消した。
喫煙室のドアを開けてあげるとカオルは私の前で立ち止まり…
「部長と沢山お話し出来て嬉しかったです」と笑った。
オフィスに戻り、仕事を進める。
時折、カオルの小さな後ろ姿を見て(自分への戒めって何だ?)と考え、またパソコンのモニターに目を戻す。
外は雷が鳴り、雨が降り出していた。
夕方。
仕事を終え、ふとカオルを見ると窓の外を見ていた。
つづく
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