「え?」と不思議そうにカオルを見ると
「部長の煙草の匂いは良い匂い…」と私の腕にしがみついた。
「どうしたの!?」と私が離れようとするとカオルは指に力を入れ「ダメですか?」と私の袖を掴む。
「ダメとかじゃないけど、会社内だし…他の部署の出社してる人達もいるし…」と言うと「会社じゃなかったらいいですか?」と少し潤んだ目で私を見つめた。
しばらく時が止まった様に感じた…。
今すぐ抱きしめたくなる程の可愛い顔とカオルの香水の香りに私の中の何かが壊れ…
「会社じゃなければ…」口が勝手に動いた。
今までのカオルの印象とは真逆の行動に狐につままれた感じだった。
笑顔になったカオルは「今日仕事終わったら何か予定ありますか?」とまた袖を掴んだ。
「ん~…特に無いけど…」
「じゃぁ、私の家でご飯たべませんか?何か作りますよ」
カオルの無邪気な笑顔の前に「断る」選択肢はなかった。
夕方、仕事を終えパソコンの電源を落としながら、ふとカオルの方を見ると、こちらを向いて笑顔で座って私が終わるのを待っていた。
二人で会社を出て、私の車でカオルのアパート近くのスーパーへ向かう。
「部長、何が食べたいですかぁ?」と楽しそうに笑顔で聞くカオル。
「ん~…何かなぁ~」と悩んで「何が得意なの?」とカオルに聞くと…
「… フェラ…」
可愛い口から出たとは思えない露骨な言動に返す言葉を探していると
「聞こえちゃいました?心の声」と楽しそうに笑うカオル。
二人で笑いながらも私の中の「何かを期待する」気持ちが膨らんでいた。
スーパーで買い物を済ませ、カオルのアパートへ。
ドアを開けるとものすごく優しい香りが私を包んだ。
中に入り「散らかってますけど適当に座って待っててください」と言いながらカオルはリビングの隣の部屋へ入っていった。
私はソファーに座り、女の子らしい小物がたくさん並んだ部屋を眺めていた。
隣の部屋から戻ってきたカオル。
眼鏡を外し、普段は下ろしている髪を後ろで一つに束ね、肩が大きく露出したワンピースに着替えていた。
まるで別人の様だった。
キッチンに向かうカオルに「すごく綺麗だね…」と言うと振り向いてニコっと笑い冷蔵庫を開けた。
私に背を向けたまま調理をするカオル。
「部長は離婚されてるんですよね?」と突然聞いてきた。
「うん。今は独身。」
するとすぐさま「恋人は?」と。
「一応いる…。」と答えるとカオルの手が止まる。
「恋人がいるのに私の家に来るなんて悪い人ですね…」
そう言いながら少し振り向き、包丁をこちらに見せる。
ニヤリとしながら「冗談ですよぉ~」と笑うカオル。
地味で暗いイメージだったカオルがこんなにも綺麗で明るい子だったとは想像もつかなかった。
こんな子だったら彼氏の一人や二人いるのではないかと思い「恋人は?」と私が聞くと…
「いませんよ。恋人にしたい人ならそこに座ってますけど…」
「でもその人には恋人がいるみたいなので…」とまた包丁を持って振り向き笑う。
可愛い表情のカオルに「こんなに美人だったらモテるでしょ?」と聞くと…
「んん…モテないですよ。私の本性を知ったらみんな逃げちゃうんですよね…。」
「部長は…逃げないでくださいね…。」とニヤニヤしながら包丁を振るカオル。
何をやっても可愛く見えてしまう。
食事の支度が終わると
「部長、今日泊まっていきます?」とビールの缶を手に持ちこちらを見るカオル。
つづく
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