「自分で言うのも何なんですけど… 前の会社で結構持てはやされていて、調子に乗ってたんです…」
「入社早々に同期の人とお付き合いを始めたんですけど、その人の束縛が凄くて…」
「新入社員の歓迎会とかあるじゃないですか?」
「その時とか私の周りに沢山男の社員の人達が寄ってきていて、それを見ていた彼が「何で一々相手してんだよ!」とか「二次会なんて行かなくていいだろ!断れよ!」とか言って…」
「はじめは軽いヤキモチかな…って思ってて…」
「最初は言葉だけだったんですけど…」
「職場内とかでも私が男性にチヤホヤされるのを見てたら、そのうちDVとか始まって…」
「怖くて嫌だったんですけど、職場も同じだし逃げる事が出来なくて困ってたんです…」
「そんな時、同じ職場の男の先輩が私の顔の痣に気付いて心配してくれたんです。」
「LINEだと彼にバレてしまうので社内のパソコンのメールで話を聞いてくれて…。」
「実はその先輩、その会社の社長の息子さんで、社長に掛け合ってくれて彼を違う支社に転勤させてくれたんですよ。」
「そのおかげで彼と会社で顔を合わせないでよくなったので、思い切って別れたのですが…」
「で、その後その先輩とお付き合いすることになって…」
「でもその先輩、社長の息子でお金持ちでイケメンで社内に女性ファンが多くて…」
「バレると面倒そうだったから最初は皆に秘密にして二人でコソコソ会ったりしてたんですけど、別れた彼が私をストーカーしててバレたんです。」
「そしたらすぐに社内に噂が広まって…」
「別れた彼がバラしたんですけど…」
「そしたら、それまで仲良くしてくれていた同僚の女性社員から無視とかされるようになって…」
「女性社員には派閥があって、そのトップ言う事に皆従っちゃうから仕方ないんですけど…」
「それでも我慢してたんですけどねぇ… …」
悲しい表情のカオル。
私の顔を見て黙る。
「ん?」
「いいよ?続けて?」
するとカオルは「喉が渇きました」と笑った。
「この道、もうコンビニが無いから自販機でもいい?」
すると前を見て「これは何処に行くんですか?」と不思議そうにしていた。
しばらくして小さいお店の前にある自販機を見つけ車を停めた。
気付くと雨は止んでいた。
自販機で飲み物を買い、車に戻る。
すると突然、髪を耳に掛けると、コンソールに置いてあるピアスを手に取り自分の耳に近づけ…
「似合います?」と笑顔で私を見る。
「凄く綺麗だよ…」と言うと
そっとピアスを戻し…
「本当はパスワード知ってました…」と呟いた。
つづく
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