私の処女を奪ったのは、彼氏ではなかった。
「捧げる」という言葉にも意味にも嫌悪感しか感じなかった。
自分にそれほどの価値があるなどとは どうやっても信じることができなかった。
だから私は駅前にあった電話ボックスで、壁に貼り付けられていた紙に書かれた番号に電話をかけた。
1回目のコールが鳴り終わるよりも早く、男が電話にでた。
低いような、高いような、何とも言えない声に感じた印象は「気持ち悪い」だった。
その気持ち悪い声は私の名前を聞き、15分後に駅に来れるかと聞いてきた。
今、駅にいると伝えると すぐに行くと言って電話を切った。
そしてその言葉通りに、5分もしないうちに 汗まみれの中年男が電話ボックスに近づいてきた。
「・・・マキちゃんかな?」
男は その気持ち悪い声を私にかけてきた。
私が頷くと気持ち悪い笑顔になり、当然のように歩き始めた。
商店街に入り、何本目かの角を曲がり路地裏に入った。
男は慣れた足取りで、けれど無言のまま歩き続け、10分ほどでラブホテルの中に入った。
男が壁に並んだボタンを押すと、301号室と書かれたパネルが点灯した。
エレベーターの中は変な匂いがしていた。
3階の廊下に出ると、その匂いがさらに強くなったように感じた。
そして私は 気持ち悪い声の気持ち悪い笑顔をする男と、ホテルの部屋に入っていった。
そういえば、この人の名前はなんだったか・・・
そんな事を考えなら 近づいてくる唇に向かって目を閉じた。
初めて会ってから15分・・・・電話をかけた時から数えても30分も経っていないだろうな・・・
そんな事を考えながら、私は男の舌が口の中でウネウネと動き回るのを感じていた。
※元投稿はこちら >>