徹は講演旅行で多忙を極めた。
岡山の大企業の重役クラスの修養会では今後のグローバル社会は効率化のみを主流としては生き抜けないという趣旨で話した。
その一旦として貝原益軒の性交に対する考えを紹介した。
以下、その要旨……。
現代社会でスピードは仕事の効率などに関わる美徳だ。
が、人との関わりの中ではスローの技術を要する場合もある。
例えばパートナーとの性的なスキンシップはその例だ。
欧米では一回の食事やセックスに充分な時間を費やす。
日本人が一回の食事やセックスに費す時間は世界的に見ても短い。
貝原益軒は年齢別に適正な性交頻度を示している。
20歳代では4日に1度、
30歳代では8日に1度、
40歳代では16日に1度、
50歳代では20日に1度、
そして60歳代では行わないか、もし体力が盛んならば1月に1度。
健康オタク貝原益軒の「養生訓」における「交接」すなわちセックスの適切な回数を述べた個所だ。
「接して洩らさず」。
「養生訓」で益軒はあくまでも「健康で長生きする」ため真剣に人間の性に向き合って男女の交接について言及した。
東洋医学に学んだ益軒によれば「腎は五臓のもと」であり、精力を体内に温存し、腎機能を保つ事が長寿の秘訣だと説く。
その上で、腎機能を健全に保つための男女の理想的な交接回数を年齢別に書いたのだ
この回数は中国の古書「千金万」を参考にしたらしい。
益軒は「そうはいっても40歳以上の人はまだ血気盛んで情欲も衰えていない。
だから上記の交接回数を守る事も難しい。
しかし多く交接し精気を排出する事は大いに元気を消耗する」と書く。
そこで出てくるのがこの極意、「接して洩らさず」だ。
若い内はイクことに夢中になる。
が、経験を積み、年齢を重ねるうち、過程を愉しむことを目的とするようになる。
これが人とのコミュニケーションでも求められる。
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