春。
加奈子が安定期に入った頃、2人は鎌倉へ転居した。
新居は外壁から室内に至るまで曲面壁を多く施してあった。
一階はダイニングキッチン、リビング、和室が一続きの空間にあった。
各部屋の内装や床材は、木、タイル、畳と材質を変えてある。
リビングには、高級注文住宅らしい裸火の暖炉が設えてあった。
リビングとダイニングは吹き抜けの構造だ。
丘陵の高台に建てた新居は部分的に数メートルの高低差があった。
水平に配置されたルーバーがデザインされ、天井まで続くガラス窓の大開口が施されている。
キッチンにはガラス張りのウォークインワインセラー。
温かみある厚い木材で作られたカウンターやダイニングテーブル。
リビングの前にはハイビスカスをあしらったプライベートプール。
邸宅の白亜の壁と青空が水面に映えてコントラストが美しい。
広くはないが和室の奥に拵えた日本庭園。
かけ流し風の石張りの浴槽を入れたバスルーム。
2階には書斎や寝室の他、音楽や映画を鑑賞できる完全防音のシアタールームを設えた。
囲炉裏などが設置された屋上テラスも斬新なデザインだ。
徹と加奈子は新居の出来栄えに満足した。
しかし2人が最も気に入った場所は地下にあった。
愛と悦楽の営み専用のスペース。
通称「ラブルーム」。
高級ラブホテルにある数種類の異なる部屋を全てこの地下に寄せ集めたような夢の性愛世界だった。
ピンクを基調としたライトや装飾品や可愛い縫いぐるみ。
電動回転式のレース付き天蓋ベッドが置かれた「エクスタシールーム」。
赤を基調としてSM器具を豊富に揃えた「アブノーマルルーム」。
青や紫を基調として様々な性戯用淫具やコスチューム、ハンモックベッドを備えた「ファンタジールーム」。
他に、洗面所やトイレ、ブロアバス、サウナなども備えてあった。
あらゆる箇所にセンサーによる自動撮影カメラが設置されていた。
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