無人カウンターとはいえ、チェックインの手続きは彼が済ませてくれた。
いくら肉食系と言えども・・
・・さすがにアタシ・・出来ない・・。
・・・そこは男の出番でしょ・・。
そんな私の想いを知ってか知らずか、最後の空室をゲットした彼。
まずは食料の調達。
自動販売機の冷凍食品を部屋に備え付けられた電子レンジで温める。
タコ焼き、唐揚げ、フライドポテト、その他チープなジャンクフードと缶ビールで飢えを満たした私は、ようやく機嫌を直す。
「お先にどうぞ。」
互いに二本目の缶ビール、、500mlだ、、を飲み干した頃、彼がボソッと呟いた。
「あ?え、はい。じゃ失礼して・・。」
一瞬、戸惑ったがシャワーを浴びる順番だということに気付いた私は、立ち上がりかけてヨロめいてしまう。
「おっと。」
こ、これしきのビールで・・
・・不甲斐ない。
その瞬間、私は彼に腕を掴まれていた。
同時に掴まれた部分から疾る奇妙な感覚。
「大丈夫?」
「あ、はい。大丈夫・・です。」
何だったんだ、今の・・
・・めちゃくちゃ気持ち良かった・・。
ぼんやりと考えながら脱衣所で服を脱ぎ、シャワーを浴び始める私は、新たな問題に気付く。
着替えが無い。
ジャケットとスカート、ブラウスは仕方ない。
汗ばむ季節でも陽気でもないし。
だが、せめて下着だけでも何とかならないものか。
今更、コンビニに行くのも億劫だ。
・・脱いじゃったしな。
ふと見れば換気扇のスイッチの横には『乾燥』の文字。
どうやらモードが切り替えられるらしい。
しかも、それ用と思しきバーが設えられている。
お、つまり・・?
・・・イイコト、考えた。
私はカップ付きキャミとショーツ、ついでにストッキングを持ち込んで手洗いを始めた。
洗剤は無いのでボディシャンプーで、だ。
洗い終えた下着は固く絞って備え付けのパイプ棚に吊るす。
換気扇のモードは『乾燥』、スイッチオン!
完璧だ。
鼻歌混じりでシャワーを済ませた私は、備え付けのアメニティで髪をまとめ、これまたアメニティの浴衣に袖を通して浴室から彼に声を掛ける。
「お先しやしたぁ。」
「はーい。行って来まーす。」
入れ替わりに浴室に姿を消した彼。
この時点で私には、『彼がシャワーを浴びる』という事象と『洗った下着を浴室に干したまま』という事象が重なった結果を予想出来ていなかった。
むしろ気にしていたのは私自身の格好。
ノーブラ、ノーパンだが致し方あるまい。
この後、ヤるかもしんないわけだし。
まずはビール、ビールっと・・・。
小さな冷蔵庫の中から取り出した三本目のロング缶のプルタブを開ける音、浴室のドアが開いた音は同時。
プシッ、かつガチャリ、だ。
「うぉっ。」
次の瞬間、彼の驚きの声が響く。
何だ?何か出た?
ゴキブリ、或いはそれに類するものか?
はっ・・。
しまった・・・。
下着、干しっぱなし・・。
私は缶ビールを手にしたまま、それでも浴衣の裾を気にしながら浴室に疾っていた。
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