私はセックスが嫌い・・ではないが苦手だった。
初体験は中三の終わり。
気になっていた男子とだ。
高校入学を機に引っ越すことが決まっていた彼。
だが処女と童貞、しかも中学生のセックスが旨くいくわけはない。
「痛い、痛い、痛ぁい・・!」
汗だくになって何とか完遂したが、愛の行為というよりは肉体労働、、、或いは修行に近い。
避妊具は途中で外れちゃって付け直すハメになったし、後始末は大変だし。
幸いにして妊娠こそしなかったものの、二度とするもんかと誓っていた。
二人目は大学生の時。
同じゼミの同期生。
二年くらい付き合っていたが、就職を機に疎遠になって自然消滅。
彼とのセックスは気持ち良かったが、オナニーでも構わなかったし、そっちの方がイキやすい。
・・したい時に出来るしね・・。
セックスレスなオナニストになっていた私は、二十四歳の時、同じ会社の他部署に所属する三十六歳の彼と付き合い始めた。
十二歳違い、ということは干支が同じ。
偶然にも誕生日まで被っていた。
と、いうことは?
大概の占いでは同じ結果がでる・・はず。
性格とか運勢とか。
だが私達の性格は真逆だった。
温和で協調性があり社内の評判も上々の彼。
対して感情的、かつ独善的で社内のブラックリストでは常に上位に食い込む私。
巧くやってるつもりだったが、こういうことは隠しきれるもんじゃない。
私達の関係は社内の七不思議に数えられていた。
草食動物と肉食動物のカップル。
果てはアタシが彼に襲い掛かったとか・・。
・・放っとけ。
確かに誘ったのは・・
・・アタシだったけど、さ。
だが私は彼に耽溺する。
正確に言えば彼とのセックスに、だ。
肌が合うというのだろうか。
初めて抱かれたのはラブホテルだった。
仕事の関係で出先にいた私は架線事故の関係により、とある駅で足止め。
家に帰ることは絶望的だった。
・・ツいてねーな・・。
生理、始まりそうだし・・。
何処か、夜明かし出来そうなとこ・・。
不意に背後から私の名が呼ばれた。
振り返ってみれば、そこには彼が立っていた。
私同様、足止めを喰らったのだ。
「どうする?」
「どうしましょうかねぇ・・。」
た、助かった・・。
・・ちょ、ちょっと不安だったの。
・・ちょっとだけ・・だけどね・・。
行く当てもないまま私達は連れ立って見知らぬ街を彷徨い始めた。
まるで、その後の十二年に渡る彷徨を暗示するかのように。
※元投稿はこちら >>