「・・愚痴だったら聴きます・・よ?」
私は敢えて軽い調子で言葉を綴る。
恐る恐る、だ。
言葉を選びながら、だ。
私は・・怯えていた。
彼のナイーブな神経を刺激しないように。
「愚痴なんて言いたくないし、聴きたいやつなんていない。」
キッパリと答える彼。
そら、そーだ。
だけど・・さ。
それでも尚、強がる・・か?
そんなに強がらないと・・いけないの?
「まだ若いんだし、他のヒト・・とか。」
「・・出来るわけねーだろ。」
吐き捨てるような口調。
初めて彼の口調に怒気が含まれる。
いや、怒気だけではない、、怯え、そして諦めだ。
怒気と怯えと諦めを等分に。
死別した妻が忘れられないのではない。
心の欠損、虚ろな部分が埋まらない状態の彼。
それ故に彼は壊れていく。
そんな自分と人生を共に歩んでくれるヒトはいない。
「いや、そんなこと求めちゃいけないんだ。」
そーかな?
そーなの?
・・・・・そーかも。
でも、本当に?
何故か私はイラっとする。
ヒトは・・そんなにも完璧でなくてはいけないのだろうか。
そんなにも強くなければいけないのだろうか。
癒えない心の傷があるのなら癒えない儘に。
埋められない心理的な欠損があるのなら埋められない儘に。
癒えない傷も、埋められない欠損も抱えた儘、生きていくことは許されないのだろうか。
そして仮に許されないのであれば、それは誰が許さないのだろうか。
少なくとも『許す』、『許さない』を決めるのは当事者、、この場合は彼、、ではない。
もし、それを決めるのが自分だと彼が考えているのなら・・それは傲慢だ。
思い上がりも甚だしい。
まったく、もう・・
・・これだからエリート様はよぉ・・。
私のイライラは募る。
その時点でイライラの原因を明確には分かっていなかったけれど。
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