安堵した次の瞬間、再び彼は底無しの孤独感に苛まれる。
いや、苛まれるどころではなかろう。
まるで冷え切った泥まみれの手で、いきなり内臓を鷲掴みにされたかのような感覚。
悪夢にうなされ、ようやく覚醒し、悪夢から脱出して辿り着いた安堵にすら裏切られた彼のテンションは再び急降下。
『こんな感じ。』
就寝中のテンションを示す低い位置に描かれた水平な直線、その一点から始まり、悪夢の始まりを示すマイナス係数のタンジェントカーブを空中に描く。
そして彼の指先は一転して覚醒を表しながら急上昇、高い位置にある水平な直線に至るが、その瞬間、真下に向かい下落。
漸近線に沿って描かれたかのような垂直の直線。
そしてその直線は、彼の指先が届く限界まで下方に向かう。
『このギャップがキツイんだよ・・』
さもあろう。
悪夢の始まり、そして終わり。
時を同じくして覚醒が始まる。
ようやく至る安堵の瞬間。
直後、彼は突き落とされるようにして絶望に至る。
四箇所の感情的な頂点をアップダウン。
そんな彼の精神にかかる負荷は想像に難くない。
いや、想像しきれない、が正解か。
何故なら私は彼ではないのだから。
分かったと思うことも、そして分かったつもりになることすら許されない。
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