「・・ガリ酎、頂戴・・。」
私はイキツケの立ち飲み屋でクダを巻く。
まだ早い時間帯の為か他に客はいない。
いくら呑んでも酔わない。
酔えるわけがない。
チビチビと。
ダラダラと。
三杯、四杯と酒は進む。
呑めば呑む程、心が荒む。
「・・タバコ・・いいよね・・?」
店のオヤジに断った私は電子タバコを取り出した。と、そこに訪れた新たな客、彼だ。
・・何だよ・・オメーはよぉ・・。
尾いてくんなよ・・。
「・・ハイボールお願いします・・。」
並んで、、しかも黙って酒を呑む二人。
アタシら店の雰囲気、悪くしてね・・?
その証拠に店内に客は増えない。
来たと思えば出て行く。
「・・交通事故でさ・・。」
奥さんの死因だ。
死に目にも会えなかったらしい。
ポツリポツリと独り言のように語る彼。
・・聞いてねぇっつーの。
聞きたくも・・ねーよ・・。
私は黙って酒を呑み、タバコを吸う。
充電が切れた。
しゃーねーな・・。
煙が出るやつ・・で・・いっか。
私は彼の言葉を遮って入り口にある自動販売機に向かう。
「・・ライター・・あります?」
店内で買い求めたタバコに店員さんから借りたライターで火を点ける。
煙を吸い込むのは久しぶりだ。
一気に肺まで吸い込んでみた。
クラクラする。
「うぉっ。」
クラクラどころじゃない。
視界が揺れる。
ヤベ・・。
一気に酒が廻ったらしい。
ひっくり返りそうになった私を間一髪で抱き留めてくれた彼。
既視感。
十二年前と同じ。
・・ヤ、ヤ、ヤられちゃう・・の?
あ、いや・・あん時は・・・
アタシから・・だった。
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