「はい、おまたせ~」焼き肉店の女将がテーブルにジンギスカンを運んできた。辰徳と貴美、久美子と美智子は久美子の勤務が終わるのを待って人気の焼き肉店に来た。この店は少年野球のチームがよく使っていて、現在主力選手になろうとしている辰徳は店側も応援してくれている。この地区のジンギスカンは生のラム肉を使用していて、臭みと脂身が少ないのが特徴で、女性客にも人気だ。
「うわ~すごい」辰徳のごはんは超大盛、肉も2人前だ。4年生の後半から辰徳はこの店に来るといつも2人前の肉を食べるようになり、ごはんも大盛を食べるようになっていた。あまりのごはんの盛の多さに貴美が声を上げたのだ
「かわいい子だね、たっくんの彼女?だとしたら小学校の女子全員が悲しんじゃうよ」女将は貴美と辰徳を交互に見て言った
「あたし、将来たっくんと結婚するの」無邪気な笑顔で貴美は女将を見上げた
「あら、いいね~、でもママたちが許してくれるかな」女将は久美子をちらりと見て厨房に戻って行った
「貴美、いつ結婚するって約束したの?」美智子が聞いた。辰徳はすでに肉を焼き始めていた
「今日だよ、たっくん、貴美の分も焼いて」
「了解」辰徳が慣れた手つきで貴美の肉を焼き始めた。二人はもう恋人気取りだ
「いいじゃない、仲が良くて」久美子が笑顔で野菜を焼き始める
「久美子さんも無理しないで」挑発的な笑顔を久美子に向ける美智子
「脂、ひいてないんじゃない」脂をひかず野菜を焼き始めた久美子をいさめる
「あっ」慌てて油をひく久美子に辰徳と貴美は顔を見合わせて笑った
※元投稿はこちら >>